海洋酸性化シンポジウム~Back to Blue~

東京

ゴダードさん、ご紹介ありがとうございます。ピーター・トムソン・国連海洋大使、ポール・デイトン卿・ザ・エコノミストグループ会長、お集りの皆さま。

今人類は生存の危機に瀕しています。ご承知の通り全ての生命を育んできた「母なる海」は、人類により大きな負荷がかけられ深刻な状態に陥っているのです。我々はともすると地上に目を向けがちですが、公害、人口増加、気候変動などは地上にのみ影響を及ぼすものではありません。むしろ、地球の7割を占める海に対する影響は大きく、その被害は目に見えづらいものではありますが、しかし確実に「母なる海」を蝕んでいます。

40年近くにわたり海洋問題に対して多様な取り組みをしてきた日本財団と世界的なネットワークを有するエコノミストは、こうした深刻な海洋の状況に対する共通の危機感から、2年前にBack to Blue Initiativeを共同で立ち上げました。そして、この2年間我々は、プラスチック汚染や化学物質汚染に加え海洋酸性化の問題についても調査・分析するのみならず、もはや見過ごすことのできない重大な課題として早急に対処しなければならないと警鐘を鳴らしてきました。海洋酸性化については、日本財団もこれまで沿岸域でのモニタリング調査等を行ってきましたが、世界各地でその進行は我々の想像よりはるかに早く、貝類の死滅、サンゴの脆弱化、生態系の崩壊は既に始まっています。一刻の猶予もないのではなく、既に手遅れといえる状況まで来ていると言えるほど差し迫った問題であります。

お集りの皆さん、世界の長い歴史の中でこれ程海洋が危機にさらされたことはないのではないでしょうか。また同時に、これほど危機にさらされた海洋を守らなければならないという大きな役割と責任を与えられた世代もないのではないでしょうか。我々に与えられた役割と責任は重大です。しかし、臆することなくこの危機に立ち向かい、「母なる海」を千年先の未来に引き継げるよう、共に考え共に行動していこうではありませんか。ありがとうございました。