海洋開発国際セミナー

於: 東京

シャキール・シャムジー・Deepstarディレクター、ナビル・ベルバチアー・NORCEリサーチディレクター、ご登壇予定の皆さん、関係者の皆さん。本日は、ご多忙の中、海洋開発国際セミナーにお越しいただき、誠にありがとうございます。本セミナーは、2017年より、海洋開発分野のキーパーソンを招聘し、最新の技術の動向を知るために開催してきており、本年も最先端技術の発表がなされることを期待しております。

皆さまご承知のとおり、世界人口は既に約80億人に達しており、60年後には100億人を超える人数になると推計されております。人口増加に伴い、我々人類は、我々人類を含むすべての生命を支える「母なる海」に対する負荷も増大させてきました。今や、「母なる海」を取り巻く環境は危機的であり、「母なる海」は静かな悲鳴を上げています。私たち日本財団は、40年近く前に今日のような状況を想定し、この危機に対処すべく、長期的な視点に立ち、海を守る事業に重点的に取り組んできました。その取り組みは、150ヶ国から1600名以上の海の専門人材育成、北極海航路の開拓、マラッカ・シンガポール海峡の安全航行支援、太平洋島嶼国への支援、日本国の海洋基本法制定への尽力、など多岐にわたります。こうした取り組みの一環として、再生可能エネルギーを含めた海洋エネルギー開発や、海底鉱物資源の利用などの海洋開発産業の発展にも日本財団は力を入れており、実践的技術やノウハウを持った技術者の育成に加え、日本の強みを活かした技術イノベーションの創出に取り組んでおります。

人材育成においては、2016年に産官学公で連携した人材育成機関「日本財団オーシャンイノベーションコンソーシアム」の実施するプログラムの参加者は約5400名に上ります。参加した大学生の過半数が海洋開発業界に就職しており、産業の将来を担う若い人材が着実に育っております。また、本日の発表にもございますが、技術開発では、当財団の有するネットワークを活用し、各国の要人や企業トップ等と交渉を積極的に重ね、海洋開発の先進国である英国スコットランド、米国ヒューストン、ノルウェーとの間で、それぞれ連携共同技術開発プログラムを実施しています。2018年の事業開始時は、多くの日本企業は、DeepStarのようなオイルメジャーへのアクセスもなく、共同開発はおろか、そもそも開発ニーズの把握、すなわち、何を開発するべきなのか?ですら特定することが困難な状況でした。そのような中、DeepStarやNORCEを中心とした連携技術開発プログラムでは、既に6年間で約40事業を助成してきました。約半数の事業は現在開発中ですが、中には既に実用化され、現場の課題解決の一躍を担うことを期待されている技術もあると聞いております。改めてここにお越しいただいているDeepStarやNORCEのご尽力に感謝すると同時に、大きな期待を寄せられるこの海洋開発業界を共に牽引していくために、日本財団は引続き人材育成と技術開発を柱として、今後も皆様と共に精一杯汗をかいていきたいと思っております。

先ほど、海洋開発の分野に若い人材が多く入ってきていることについて述べました。今やイノベーションを起こすためには、若い人材の持つ新しい考えをどんどん取り入れ、スピード感を持って取り組むことが非常に大切であると考えています。魅力ある取り組みをしている産業には、人材が集まります。海洋開発産業にイノベーションが起こっているとわかれば、来るなと言っても人は集まります。この素晴らしい可能性を秘めた事業に取り組んでいることに敬意と感謝を表するとともに、若い人の考えを取り入れながら日本から世界に発信するイノベーションが起こることを期待しています。ありがとうございました。