2050年、食卓から6割の魚が消える国も日本はどうなる?世界トップレベルの海洋科学者がレポートを発表
日本財団ビル

魚資源と海の未来を予測するネレウスプログラムの研究成果発表が6月30日、日本財団で行われ、2050年には赤道周辺など一部地域で商業魚種の漁獲高が40〜60%まで低下する危険性がある、などの報告が行われました。研究成果は今年12月にパリで開催される国連気候変動枠組条約(UNFCCC)の第21回締約国会議(COP21)準備会合に報告される予定で、COP21に反映されることを目指しています。
ネレウスプログラムは日本財団がブリティッシュ・コロンビア大学(カナダ)やプリンストン大学(米)など世界の7大学・研究機関と共同で実施している総合的な海洋プログラム。記者会見では同プログラムに参加する世界の第一人者の研究者が以下のような報告を行いました。
ブリティッシュ・コロンビア大学のチュン准教授は、海水温の上昇や海水の酸性化などにより、「海の生物と魚資源の様子はかつてない変化を遂げるだろう」とし、「地域によって影響は異なるが、熱帯域など一部地域では2050年には商業魚種の漁獲高が40〜60%まで低下する危険性がある」と述べました。チュン准教授は、研究で新たに分かった気候変動の日本の魚資源に与える影響にも言及。「マグロについては2050年までに日本の年間漁獲高が40,000トン(約10%)減少するという予測が出た。その他の魚種でも減少が著しい種がみられた。一方、スケトウダラなど特定の魚種で供給量が増えていくという予測となった」と述べ、日本の食卓の様子が近い将来様変わりするとみられることを示しました。
こうした内容を踏まえ日本財団の笹川陽平会長は、「私たちは重大な局面に立たされている。海洋環境を取り巻く課題と向き合い、有効な対策をとらなければ、人類は経済活動を維持していくどころか、生存すら危ぶまれる」とコメントし、「気候変動の影響など、未来に海に関わる問題は、既存の科学や政策研究と言った枠の中では捉えきれない。海洋という広い視点に根ざした人づくりと創造的な研究こそが、未来の海にとってかけがえのない財産になるはずだ」と指摘しました。
日時 | 2015年6月30日(火)14:00〜15:00 |
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会場 | 日本財団ビル |
内容 |
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- 講演者紹介(PDF / 180KB)
- 日本財団―ネレウスプログラム レポート「海の未来を予測する」(PDF / 14.1MB)
- シミュレーション動画(YouTube)
ネレウスプログラム
日本財団が2011年から世界7つの大学・研究機関と実施している。未来の海に特化した世界で唯一の総合的研究プログラムで、約30人の奨学生と14人の研究者が気候から法律まで広く研究を行い、研究成果は米・サイエンス誌など世界的な学術誌にも掲載されている。
ネレウスプログラム参加大学・研究機関と専門分野
- ブリティッシュ・コロンビア大(カナダ): 海洋生物資源管理・社会経済
- プリンストン大(米): 気候変動・海洋環境
- デューク大(米): 海洋生物・海洋空間利用
- ケンブリッジ大(英)および世界保全モニタリングセンター(英): 海洋生物多様性・沿岸域環境
- ストックホルム大(スウェーデン): 国際政策・海洋ガバナンス
- ユトレヒト大(オランダ): 国際法・国連海洋条約