海洋管理の政府間パネル設置を提案持続可能な海洋に向け日本財団会長 初の国連海洋会議本会議で
海をテーマにした初の国連海洋会議最終日の6月9日、日本財団の笹川陽平会長は国連の本会議で、海洋問題を国際的に総合管理するための政府間パネルを設置するよう提案しました。持続可能な海洋の実現に向け、さまざまな分野の専門家が組織を超えた議論をする場とするのが狙いで、笹川会長は「世界の海は人間活動の結果により一刻の猶予も許されない状態にある」と各国の理解と協力を求めました。
各国の賛同が得られれば、国連事務総長の下に海洋管理に関する政府間常設委員会を設け、委員会としての意見を、国連事務総長を通じて国連総会に報告する新たな仕組みとなる見通し。笹川会長は併せて、政府間パネルを設立・運営するための資金確保に向けた基金の設置も提案し、「日本財団として政府間パネルの実現に全力で取り組むことをお約束する」と、資金面でも前向きに取り組む考えを表明しました。
国連機関には現在、IMO(国際海事機関)やFAO(国連食料農業機関)、UNEP(国連環境計画)、OLA(法務部)など海洋に関係する機関が計9機関あり、それぞれが条約や協定、議定書などを管理しており、複雑多様な海洋問題に迅速、効率的に対応するのが困難な状況になっています。
例えばIMOでは、これまでに制定してきた50を超す条約に強制力がなく採択されても実行される担保がなく、責任ある漁業の確立に向けFAOが採択した条約や行動規範も乱獲や違法操業の歯止めに機能していない、といった現実があり、複数の機関の連携など横断的取り組みの必要性が高まっています。
このため日本財団は2015年のIMO総会でも、多様な海の問題を総合的に管理する新たな枠組みの必要性を指摘していました。各国の代表で構成される国連総会の本会議で、民間団体が今回のような提案を行うのは異例のケースで、今後の国連の対応が注目されます。
日本財団では1987年以降、海洋学や気候変動、水産資源の確保など幅広い分野で「海の世界の人づくり」を進め、これまでに世界140カ国で1,200人を超すフェローを育成してきているほか、今回の国連海洋会議では国連の海事・海洋法課(UNDOALOS)と海洋管理に向けた新たな人材育成事業を立ち上げることで合意しています。
政府間パネルの提案は、海洋の人材育成に対する日本財団の長年の貢献と国際的な信用を踏まえて行われ、笹川会長は「世界の海の日」に当たる前日8日には、やはり本会議場でのスピーチで、国や機関、自身の専門分野など既存の枠組みを超えて横断的に連携する人材の必要性を訴えました。
地球環境は18世紀後半から19世紀にかけた産業革命時に比べ二酸化炭素(CO2)濃度が40%近く、平均気温が1度近く上昇。北極の海氷面積の減少や海水の温暖化・酸性化、サンゴの白化減少などが進んでいます。
こうした状況を受け2016年には地球の平均気温の上昇を産業革命前に比べ2度未満に抑えるパリ協定が発効しましたが、中国に次いで2番目の温室効果ガス排出国である米国・トランプ政権がさきに協定からの離脱を表明するなど、持続可能な海洋の実現が国際社会の喫緊の課題となっています。
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