温室効果ガス排出ゼロの船舶「ゼロエミッション船」実現に向けたシンポジウムを開催オンラインで全国から700名以上が参加、脱炭素社会へ向けた機運高まる
場所:オンライン
日本財団は、2021年5月18日(火)に、運航時に温室効果ガスを排出しない次世代燃料船(=ゼロエミッション船)の推進に関するシンポジウムを開催しました。
当日は、水素等の次世代燃料推進の可能性や、その課題、取るべき戦略について様々観点から議論し、今後の方向性について共有がされました。
オンラインで開催された本シンポジウムは700名以上が参加し、船舶分野の脱炭素化推進への強い期待を感じるイベントとなりました。
シンポジウムの概要
まず始めに、日本財団会長の笹川より、開催に際し、挨拶がありました。
「内航船舶のゼロエミッション化は、地球規模のイノベーションであり、未来志向を持ち、既存の価値観を変革するような人材が多く参画することで、イノベーションを推進していってもらいたい」と述べられました。
次に、本シンポジウムの後援をいただいた国土交通省 国土交通審議官 藤井様が来賓挨拶として、日本や世界がカーボンニュートラルを通じた地球温暖化防止という喫緊の課題に直面している中、海上輸送における水素利用という、時宜を得たテーマでシンポジウムを開催したことに対する謝意を述べられました。
「本シンポジウムでの講演や幅広い意見交換を通じ、海上輸送における水素利用についての可能性や課題、取るべき戦略についての知見が得られ、水素利用拡大に向けた気運が醸成されることを期待しています。」
第1部では、「船舶における水素利用を考える」のテーマのもと、水素社会や未来の船、水素燃料エンジン開発について講演が行われました。
まず、水素バリューチェーン推進協議会 岩谷産業株式会社 専務執行役員 福島様より「水素バリューチェーン推進協議会(JH2A)の立ち上げと今後の展開」というテーマでご講演を頂きました。
その中で、水素市場、グリーン成長戦略のお話があり、水素社会の構築を加速させるため横断的な団体が必要という、水素バリューチェーン協議会(JH2A)が設立経緯をご説明されました。
また、今後の具体的活動テーマとして、「社会実装プロジェクトの提案・調整」、「ファンドの創設」、「需要の創出、規制緩和等の政策提言」、「国際的な活動」、「国内外の情報収集・分析・発信」を掲げられました。
続いて、株式会社e5ラボ Chief Digital Officer 神内様より「内航海運における脱炭素社会を目指した水素技術活用―ミライのフネを考える―」というテーマでご講演頂きました。
その中で、内航海運の現状に触れられ、課題の一つである、環境問題対策として電気推進船の導入に取り組まれていること、また、水素燃料電池等を活用したゼロエミッション船のご紹介を頂きました。
第1部の最後に、株式会社ジャパンエンジンコーポレーション 代表取締役社長 川島様より「水素燃焼エンジンの開発を目指して」というテーマでご講演頂きました。
水素エンジン開発の意義と将来ビジョンを述べられ、水素燃料エンジン開発のトップランナーである川崎重工業株式会社、ヤンマーパワーテクノロジー株式会社、株式会社ジャパンエンジンコーポレーションの3社で、世界に先駆けて舶用水素燃料エンジン開発を通じ、日本の脱炭素化と、海事産業・造船工業・舶用工業の発展に寄与すべく、共同出資による新会社「HyEng株式会社」を設立することが発表されました。
第2部では、「ゼロエミッション船新時代がやってくる」というテーマで日本財団常務理事海野の発表から開始しました。
まず始めに、内航海運における2050年の次世代燃料船の普及シナリオ を提示しました。2050年に向けて、まず既存の技術やインフラを活用できるLNG燃料やバッテリーの利用拡大が予想されます。中期的には、利用時にCO2を排出しないアンモニアや水素の利用が期待されているが、将来的には利用時に水しか排出しない究極的なグリーン燃料である水素利用の拡大が予想されます。このシナリオでは、2050年に水素燃料船が約55%となることを予測しています。
さらに、次世代燃料船が普及した際の経済効果は日本全体で約2兆3,000億円となる試算しました。これは、水素に限らず次世代燃料船が2050年に広く普及した際の経済効果となります。
続いて、パネルディスカッションとして、日本海事協会 坂下会長をモデレータに、上記の講演者に加え、海上技術完全研究所 環境・動力系 系長 高橋様にもご登壇頂き、水素船普及に向けてすべきことについてディスカッションを行いました。
政府への要望や、現在の開発状況、実用化に向けた制度・インセンティブ、人材育成の在り方等について議論することで、今後、進むべき方向性が共有されました。
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日本財団 海洋開発人材育成推進チーム
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