“ソーシャル・インパクト・ボンド”パイロット事業第3弾日本財団×尼崎市 協働で若者就労支援事業を実施

2015年7月16日、日本財団は兵庫県尼崎市と協働で、若者就労分野では日本で初となる「ソーシャル・インパクト・ボンド(SIB)」パイロット事業を実施することを発表しました。尼崎市における生活保護世帯の若者(15〜39歳)を対象に就労支援事業を行い、長期的な自立を促進します。若者支援の実績が豊富な認定NPO法人育て上げネットが事業実施主体となり、特にひきこもり等の行政の介入が難しい若者に対し、ケースワーカーと連携し、アウトリーチ事業(本人のもとへ出向き、支援する)を行うことで若者の社会参画を促します。

全国の生活保護受給世帯数は、約159万世帯(月平均、2013年)、保護費は年間3.6兆円を超え(※1)、過去最高を記録しました。見逃せないのが、若年層の受給者数の増加です。仮に、15〜34歳で就労せず家事も通学もしていない「若年無業者」が25〜65歳まで生活保護を受給し続けた場合と、納税者であり続けた場合の社会保障費にかかるコスト差は約1億5000万円(1人当たり)と推計されています(※2)。加えて、若年齢であるほうが就労・増収率ならびに廃止(自立)率が高い傾向にある(※3)ことから、若者への自立支援は、彼らの指導や支援の目的に加え、将来的に発生する社会的コストの予防措置として有効な手段であるといえます。しかし、若者の数が減っているにもかかわらず、若年無業者の数は60万人と高止まりしており(※4)、喫緊の課題です。

尼崎市は生活保護受給者数が1万8,039人(平成25年度月平均)と、全国の中核市の中で2番目に高く(※1)、現場の業務負担が増大しているほか、公的コストの負担も問題になっています。本事業を通じて、これまで未着手だった就労可能な若者に対する早期の介入を行うことにより、若者の自立と社会参加の実現とともに、将来的な生活保護費の抑制が見込まれます。

本パイロット事業では、市内の生活保護世帯の若者約200人に対し、育て上げネットの職員が市のケースワーカーと協働でアウトリーチを行い、多様なプログラムを提供、1年間の事業期間内に6人の就労を目指します。事業実施により長期的に見込まれる生活保護費の削減、納税額増等の行政コストへの影響を検証し、検証結果をもとに2016年度以降に本格的なSIBプロジェクトへの移行を目指します。日本財団は、中間支援組織として、案件組成に向けた全体企画・管理を行うほか、事業費の提供を行います。なお、本事業は日本財団が実施するSIBのパイロット事業としては横須賀市と推進する特別養子縁組事業、福岡市等で実施する認知症予防事業に続く3件目の事業です。

  • 厚生労働省「平成25年度被保護者調査」
  • 厚生労働省「貧困 格差、低所得者対策・格差、低所得者対策に関する資料」(平成23年5月23日)
  • 厚生労働省社会・援護局保護課「就労支援等の実施状況について」(平成26年3月4日)
  • 内閣府「平成26年版子ども・若者白書(全体版)」
  1. 横須賀市と連携した家庭養護推進事業
  2. 福岡市等と連携した認知症予防事業

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