ファミリーホーム制度に関する提言書を公表子どもの「家庭養育」としての位置づけの明確化を主張

日本財団は、「ファミリーホーム※制度」のあり方に関する提言書を公表しました。本提言書には、さまざまな事情で家族と生活ができない子ども(全国に4万5000人)を養育する「社会的養護」であるファミリーホームの役割を再整理するため、1.定員の縮小、2.自治体や支援機関からの支援体制の構築、3.家庭養育としての役割の明確化、などが盛り込まれています。

インフォグラフィック:厚生労働省の資料を参考に日本財団が作成した「家庭と同様の養育環境を説明した図。」特別養子縁組では、養親とは法的に親子関係となり、永続的に安定した養育環境での養育。里親では、家庭における養育を里親に委託する家庭養護。児童は4人まで。小規模住居型児童養育事業(ファミリーホーム)では、養育者の住居で養育を行う家庭養護。児童は5~6人。
  • 「ファミリーホーム」と、2009年に「小規模住居型児童養育事業」として創設されました。一つの家庭につき児童の定員は5名または6名で、里親を大きくした形態です。事業でありながら「家庭養護」の一つと位置づけられており、全国に372か所、1,548人の児童が養育されています(2018年3月末現在、福祉行政報告例)。

ファミリーホーム制度のあいまいな実態

ファミリーホーム制度は、「里親型のグループホームとして自治体で行われていた事業を法定化した」ものとして2009年に創設されました。日本は諸外国と比しても里親委託率が低く(20.5%、2018年末現在)、家族と生活できない子どもは施設での生活が中心であるなか、家庭での養育として貴重な役割を果たしてきました。
一方で、一家庭あたりの児童の定員が5名または6名と諸外国と比べて多いことや、里親の拡大形態でありながら「事業」と位置付けられることにより、本来あるべき支援等が足りていない、などという課題がありました。

ファミリーホームのあり方を検討する研究会を設置

こうした状況の中、日本財団は2019年11月から2020年6月まで、有識者による「里親およびファミリーホーム制度に関する研究会」を設置・開催しました。座長は早稲田大学人間科学部教授の上鹿渡和宏氏、委員には日本ファミリーホーム協議会の北川聡子氏や、養育里親/元厚生労働省家庭福祉課長の藤井康弘氏等計10名が参加しています。
本研究会では、ファミリーホーム運営者や当事者による報告、海外の里親支援機関への調査等によりファミリーホーム制度の課題整理し、それらを踏まえて、この度提言書を作成しました。

提言書の内容(抜粋)

短期的視点(3年以内)で対応すべき事項

1.家庭養育としてのファミリーホームと定員数の改革

まずファミリーホーム制度は、「養育者は、ファミリーホームに生活の本拠を置く者でなければならない」とあるとおり、今後も家庭養育の役割を果たすべきです。そのうえで社会的養護を必要とする子どもの利益を重視し、子どもと丁寧な愛着関係を構築していくために、ファミリーホームへの子どもの委託人数を現在の5~6人から4人を原則として、状況に応じて6人まで認めることを提案します。

2.社会的資源との連携の強化

ファミリーホーム制度は里親家庭が拡大してできたという経緯がありながら、事業として位置づけられているために保育所やレスパイト・ケア等が利用できません。しかし、社会的養育の趣旨に鑑みても、地域の社会的資源との協働により子どもの育ちを促すことが望ましいと考えます。今後はフォスタリング機関を積極的に活用できるようにするなど、ファミリーホームが受託する子どもの養育を充実させ、一層の質の高い養育を提供できる体制を地域で構築することが望まれます。

3.子どものニーズに合った養育を支援するための財政的措置

現在、里親やファミリーホームでは子どものニーズに応じた委託費の加算は認められていません。しかし、子どものニーズに合った養育を提供するためにも、養育の困難性に応じて乳幼児、障害児、被虐待児については委託費を加算する制度等を提案します。

なお、提言書の全文はこちらからご覧いただけます。

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