12月3日「国際障害者デー」にあわせ、「新型コロナウイルス禍における障害者、健常者の意識調査」を実施障害者は、健常者に比べ「在宅勤務を辛いと感じる」傾向が明らかに
とくに特定の障害のある人にとって「在宅勤務が精神的な辛さをもたらしている」課題も

日本財団は、新型コロナウイルス感染拡大の影響によって、障害者・健常者それぞれが抱える困難や価値観の変化などについて意識調査を行いました。

調査の結果、世界的な新型コロナウイルスの感染拡大により、障害者・健常者の約6割が「ライフスタイルや価値観が変化した」と回答。「衛生管理の徹底や旅行できないこと」をもっとも辛いと回答した一方で、健常者8.0%に対し、障害者20.6%、とくに視覚障害者の33.9%、聴覚または平衡機能の障害者の28.8%が「在宅の環境で勤務すること」を辛いと感じると回答。また、健常者わずか4.8%に対し、障害者17.0%、とくに音声機能、言語機能またはそしゃく機能の障害者32.1%および視覚障害者の24.0%が「在宅勤務で、仕事が遅延したり支障をきたすこと」を辛いこととして回答しました。
このことから、出社せずに働くテレワークが日本国内でも広がり、在宅勤務は障害者にとって通勤の負担がなく利点が大きいと考えられてきましたが、障害者、とくに特定の障害のある人にとっては、健常者より、コロナ禍での仕事について、精神的な辛さを感じていることが判明しました。
また、外出自粛中に障害者15.3%、とくに視覚障害者では18.8%が「必要な情報を十分に得づらかった/得られなかった」と回答したのに対し、健常者では9.2%と障害者でより多いことが判り、視覚障害者を中心に障害者と健常者の情報格差が示唆されました。さらに、障害者14.9%、特に視覚障害者では18.8%が「前向きな気持ちになれる情報を集めるようになった」と回答したのに対し、健常者では7.6%に留まりました。障害者は外出自粛中の不安感の高まりから、健常者と比べてよりその不安感を払拭できる情報を求めていたと考えられます。

本調査の結果を受けて、「True Colors Festival 超ダイバーシティ芸術祭」のアンバサダーを務める乙武洋匡さんのメッセージを掲載していますのでご覧ください。

  • ダイバーシティ&インクルージョン:ダイバーシティ(多様性)を尊重し、異なる価値観や能力をインクルージョンする(抱合する・活かし合う)ことで、イノベーションや新たな価値創造につなげ、一人ひとりが活躍できる社会をめざす取り組みを指す

結果サマリー

  1. 外出自粛中、最も精神的に「辛い」と感じたことは、障害者、健常者ともに「外出時のマスク着用や、消毒など衛生管理の徹底」「旅行に行けないこと」が共通して上位に。障害者は「在宅での勤務」など仕事に関すること、健常者は自宅の外での楽しみが制限されることに辛さを感じる傾向。
  2. 外出自粛中、最も「不安」に感じたこと、「身体的健康の維持」「社会保障」は障害者がより多く、「感染の収束時期」「日本経済の低迷」は健常者で多い。
  3. 外出自粛中の情報収集、障害者は健常者よりも「必要な情報を十分に得づらかった」と回答。
  4. 外出自粛前後の自宅での楽しみ方の変化について、障害者、健常者ともに自粛前よりも後のほうが「オンラインサービス」利用の割合が増加。
  5. 外出自粛を経験して良かったこと、障害者、健常者ともに「健康の大切さを実感できた」「人と接することの大切さを認識できた」と回答。障害者は「周囲の人に支えられながら生活していることを実感できた」が健常者より多数。
  6. コロナ禍での価値観の変化、障害者は健常者よりも「自分より困難な状況にある人のことを思いやるようになった」と回答。健常者は「人と接することの大切さ、有難さを再認識」が多数。

調査概要

調査主体 日本財団
調査対象
  1. 日本在住の16~59歳の障害のある男女
    • 障害の種類別、年齢(16-40歳、41-59歳の2区分)で概ね均等割付
    • ご自身が回答できない方は、同居ご家族がご本人の立場で代理回答
    • 身体障害者手帳、療育手帳、精神障害者保健福祉手帳いずれかを保有している人が対象
  2. 日本在住の16~59歳の健常者である男女
    • 性別、年齢(16-24歳、25-40歳、41-59歳の3区分)で均等割付
障害の種別 視覚障害、聴覚または平衡機能の障害、音声機能、言語機能またはそしゃく機能の障害、肢体不自由、内部障害、知的障害、精神障害(発達障害含む)
調査人数 障害者 1,441人、健常者 1,854人 計3,295人
調査方法 インターネット調査
調査時期 2020年9月

調査結果の全文は以下のリンクからご覧いただけいます。

【まとめ】コロナ禍で見えてきた課題

新型コロナウイルスが拡大する中で、障害者は健常者とは異なる困難や不安を感じていたことが判りました。「働き方」が多様化することは多くの人にとって選択肢が増え、ワークライフバランスの維持にもつながると考えられますが、障害者にとっては在宅勤務など以前と異なる就労環境や働き方が新たな困難や不安をもたらす可能性が明らかになりました。さらに、コロナ禍のように日々膨大な情報が溢れる状況において、正しい情報を自身で取捨選択していくことは障害者にとっては容易ではないという「情報格差」も課題であることが判りました。
これらの課題解決に向けて社会がともに考えることが「ダイバーシティ&インクルージョン」を実現するための一歩になるでしょう。
日本財団は、本調査から見えてきた課題を解決するための情報発信を続けるとともに、オンラインを活用しながら、今後もTrue Colors Festivalの開催を続け、「ダイバーシティ&インクルージョン」の実現に向けて、新しい価値観が生まれる機会を創出してまいります。

True Colors festival アンバサダー 乙武 洋匡さんからのメッセージ

コロナ禍によってどんな不自由を感じていたのか、どんな困難がもたらされたのか。今回の調査によって、健常者と障害者には大きな違いがあることがわかりました。また、障害者とひとくくりにすることも難しく、障害の特性によっても感じ方が大きく異なることも浮き彫りとなりました。
しかし、それは今回に限ったことではありません。コロナ禍による影響だけでなく、他の災害時にも、もっと言えば平時の日常生活においても、立場や境遇が違えば、何を快適だと感じ、何を不便だと感じるのか、またどんなことに安心を覚え、どんなことに不安を覚えるのかは人それぞれであるということに行き着きます。
私たちは、今回の調査によって明確となった課題を早急に解決していかなければならないと同時に、「感じ方は人それぞれである」というごく当たり前のことを改めて自覚していく必要があるのだと感じました。

乙武 洋匡(おとたけ・ひろただ)プロフィール

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1976年、東京都生まれ。先天性四肢欠損により、幼少期より電動車椅子で生活。早稲田大学在学中に出版した『五体不満足』(講談社)は累計600万部を超すベストセラーに。卒業後はスポーツライター、小学校教諭、東京都教育委員として活躍。海外渡航経験は約80ヵ国。現在は最先端の義足で歩行するプロジェクトに取り組んでいる。主な著書に、『だいじょうぶ3組』『車輪の上』(ともに講談社)、『オトことば。』(文藝春秋)など。

「True Colors Festival 超ダイバーシティ芸術祭」について

日本財団は、2019年9月より、障害・性・世代・言語・人種などのあらゆる多様性があふれ、誰も孤立することなく皆が支え合う社会の実現を目指し、パフォーミングアーツを通じて、個性豊かな人たちと一緒に楽しむ「True Colors Festival 超ダイバーシティ芸術祭 – 世界はいろいろだから面白い –」を開催しています。今回は、コロナ禍において、とくに障害者と健常者が行動の制限や外出自粛の生活をそれぞれどのように過ごしているのか。また、どのような意識や価値観の変化があるのかを調査することで、「ダイバーシティ&インクルージョン」を実現するために、解決すべきことや今後の社会における人々の在り方について考えました。

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