トンガ沖の海底火山、噴火後初の国際共同研究の開始を発表噴火によるリスクの予測、損失低減を目指す

⽇本財団とニュージーランド国立水圏大気研究所(オークランド、CEO ジョン・モーガン)は、2022年1月に大規模噴火を起こしたトンガ沖の海底火山、フンガ・トンガ-フンガ・ハアパイと周辺エリアの調査に関する記者発表を、4月1日(金)に実施しました。

噴火後、同エリアの海底火山周辺海域の調査は実施されておらず、噴火の影響や現状は詳細に把握されていません。同火山や類似する海底火山が今後噴火した場合のリスクを解明し、防災・減災に活用するために、当該エリアで海中の状態を可視化する国際共同研究を噴火後はじめて実施します。なお、2022年7月には調査結果の発表を予定しています。

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有人調査で使用するNIWAの調査船
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無人調査で使用する無人水上艇(USV)

調査背景

海底火山の噴火

日本から約8,000km離れた南太平洋トンガ沖に位置する海底火山フンガ・トンガ-フンガ・ハアパイは、2022年1月15日に大規模な噴火を起こしました。噴火後、フンガ・トンガ島とフンガ・ハアパイ島を繋ぎ、1つの陸塊を形成していた火山の一部はなくなり、2つの島の面積も大幅に縮小しました。

一般市民と海への影響

トンガ政府の発表によると、噴火に関連する死者数は4名、負傷者数は10名で、被災者の数は全人口の84%(約87,000人)に及びます。厚さ30mmの火山灰によって、農作物、家畜、魚介類の喪失等、世界銀行は噴火による直接的な経済損失を9,000万米ドル以上と推計しています。噴火に伴い発生した津波は、トンガだけでなく諸外国にまで到達し、港や船への影響をもたらしました。また、海底での地滑りが加わり、火口から50km範囲の海底ケーブルが断絶されたことから、噴火発生時から数日間にわたり、トンガと国外の通信がほとんど遮断された状態が続きました。
海への影響としては、少なくとも8,000平方キロメートル以上の範囲で海底地形が変化していることが想定される他、トンガ沖の広大なサンゴ礁が火山灰に埋もれ窒息するなど、生態系への悪影響も懸念されます。しかし、噴火後、海底火山周辺海域の調査は実施されておらず、噴火による同エリアへの影響および現状は詳細に把握されていません。

調査の重要性

今後の海底火山噴火のリスク予測および被害軽減に向けて

日本とトンガは、いずれも太平洋プレートが地球内部に沈み込む「沈み込み帯」に位置しており、トンガ沖で噴火した海底火山は日本の周辺にある多くの海底火山に似ています。調査によって、今回噴火した海底火山や類似する海底火山が今後噴火した場合の経済的・社会的なリスクの予測および軽減を目指します。

調査概要

目標

  • 噴火の影響を受け変化したと推定される、海域約8,000平方キロメートルの海底地形データの取得・公開
  • 同海域内の環境・生態系の変化解明に資する基礎データの取得・公開

調査方法

1. 調査船による海底火山周辺海域の有人調査(28日間)

  1. 期間:2022年4月~5月
  2. 場所:海底火山周辺海域(火口周辺の立入禁止区域外)
  3. 内容:地質等調査、海底地形マッピング、動画・画像撮影

2. 無人水上艇(USV)による火口周辺の無人調査

  1. 期間:2022年4月~7月(期間内の30日間)
  2. 場所:海底火山火口上および周辺海域(火口周辺の立入禁止区域内)
  3. 内容:海底地形マッピング

3. 調査船およびUSVにより得られたデータの分析・調査結果発表

(2022年7月ごろを予定しています)

画像:調査の体制図。調査の実施者は、NIWA、日本財団、日本財団-GEBCO Seabed 2030の三者。協力は、海洋研究開発機構、英国自然環境研究機構、SEA-KIT International(日本財団-GEBCOフェロー)、その他国際的機関。
調査の体制図

関係者コメント(一部抜粋)

日本財団 会長 笹川 陽平

今回の国際共同研究が形になったことを、大変嬉しく思います。日本財団は、複雑で多様な海の課題に対応するため、人材育成やネットワーク構築に長年取り組んできました。今回の調査も多様な関係者と連携し、噴火により変化した海底地形の状態や、収集データによる噴火・津波発生のメカニズムを解明していきます。本調査を通して噴火の前兆現象をとらえることで、トンガだけでなく日本をはじめとした多くの火山を有する環太平洋諸国にとっての防災・減災につながることを願っています。

ニュージーランド国立水圏大気研究所 副所長 ロブ・マードック

ニュージーランドとトンガの間には76の海底火山があり、その8割は活火山といわれています。今回の海底火山噴火の原因を理解することは、将来の類似する噴火によるリスクを理解するためにとても重要です。本調査が、太平洋地域の国々にとっても有益なものとなることを確信しています。

ニュージーランド国立水圏大気研究所について

環境科学の最先端の研究を担うニュージーランドの国立研究機関として1992年に設立された。
2030年までに世界の海底地地形図の完成を目指す「日本財団-GEBCO Seabed 2030」の地域データセンター(南太平洋・西太平洋海域)のホスト機関でもある。

ロゴ:ニュージーランド国立水圏大気研究所

日本財団-GEBCO Seabed 2030について

2030年までに世界の海底地形図を100%完成することを目標に、日本財団が海底地形図の作成を担うGEBCOと共に2017年から実施しているプロジェクト。
世界中の政府機関、研究機関、企業との連携のもと、地図化されている海底地形をこれまでに6%(2017年)から20.6%(2021年)に増加した。

ロゴ:日本財団-GEBCO Seabed 2030

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