日本とウクライナの架け橋に~日本の大学で学ぶウクライナの学生

写真:勉強しているウクライナ避難民留学生たちの様子

日本財団は、2022年12月7日時点で1,608人のウクライナ避難民の生活費等の支援を決定し、日本における生活をサポートしています。

日本財団がサポートする避難民のうち、福岡県の日本経済大学では、69人のウクライナ避難民を学生として受け入れています。

同校は2年前からウクライナのキーウ国立言語大学と交換留学制度を実施。ロシア侵攻を受け、同大学からの学生を受け入れることを決意したそうです。ウクライナ避難民の学生に対して授業料の全額免除に加え、寮の部屋も無償で提供。ウクライナ人の教員も新たに雇用するなど、学生たちと密なコミュニケーションと手厚いサポートを実施しています。

ウクライナ学生の暮らしぶりを知るため、日本財団ウクライナ避難民支援室のメンバーが大学に伺いました。

日本とウクライナの架け橋として

同校には避難前から日本語を学んでいた学生が多く、来日後も積極的に日本語の習得に取り組んでいます。今回お会いした学生とは、通訳を介さず、日本語のみで滞りなくお話しできました。学生たちは「避難ではあるけれど、言葉や文化を学んで、日本とウクライナの架け橋になりたい」とも話してくれました。お会いした4人をご紹介します。

ボジョク・カテリナさん

「ロジスティクス(物流)に関心があり、東京の大企業でインターンに参加させてもらいました。その経験のおかげもあり、東京の大きな企業への採用が決まったので、来年4月からは東京に引っ越します。大学の友達と離れるのは寂しいですが、新たな生活が楽しみです」

写真:ボジョク・カテリナさん

ダガエヴァ・マルガリータさん

「子どものころから日本のアニメやドラマを観ていたことから日本に興味を持ち、日本語を学んでいました。今は日本語の試験に向けて、自由時間のほとんどは日本語の勉強に充てています。1日4時間くらいかな。東京での企業のインターンにも参加させてもらい、日本ならではの飲み会の洗礼も受けました(笑)」

写真:ダガエヴァ・マルガリータさん

ドミトリュク・ヴァグダナさん

「現在、日本の大学の授業のほかに、ウクライナの学校(工科大学)のオンラインクラスを受講しています。工科大学のほうは宿題も多く、日々レポートの提出に追われています。プログラミングが好きで、趣味で漢字ゲームの製作などしています。今は、サポートのおかげもあって安心して生活しています」

写真:ドミトリュク・ヴァグダナさん

コルネヴァ・マリヤさん

「日本の文化にとても関心があり、日本舞踊を習い始めました。11月に市内の能楽堂で発表会があるので楽しみです。次は書道に挑戦したいです。ベジタリアンで、食堂などでは食べられるものが少ないので、毎日自炊しています。授業はウクライナ学生や他国の留学生と一緒に受ける授業が多いので、これからはもっと日本人学生と交流したいと思っています」

写真:コルネヴァ・マリヤさん

避難民を学生として受け入れる学校の役割

学生を受け入れる学校が担う役割も多様化、複雑化しています。同校の学生の多くは、卒業後は日本で働きたいという希望を持っているそう。高い日本語力を有するものの、それでも苦労しているのが、就職。既に卒業を迎えている学生もいますが、学生のスキルや語学レベルに見合う仕事が簡単には見つけられないといいます。

同校では、ウクライナ学生に対して日本文化や習慣に親しむための文化体験も多数実施するほか、大企業でのインターンの機会を得たり、面接を取り付けたりと、就労支援にも力を入れています。その甲斐あって、希望する企業・業界の採用を得られ始めているとのこと。

戦争が長期化し、学生以外にも、予定になかった日本での長期滞在が現実化し、働くことを検討し始めている避難民も増える中、就労という新たな課題も浮き彫りになってきています。

写真
着付け体験の様子
写真
地元テレビ局・RKB毎日放送でのインターンの様子

日本に渡航してきたウクライナ避難民はすでに2,000人を超え、その一人ひとりが日本社会と向き合いながら自分や家族の将来を考えています。

日本財団は、皆さまからいただいたご寄付を大切に活用しながら、ウクライナ避難民の方々に寄り添った支援を実施してまいります。

ウクライナ避難民支援室 佐治 香奈
取材協力・写真提供:日本経済大学

日本で生きていくという選択肢を、ウクライナの人々へ。

日本財団では、ウクライナ避難民支援を行う各団体への助成プログラムのほか、これまで独自でウクライナ避難民支援も行い、合計1,428名(2022年10月26日時点)に渡航費・生活費・住環境整備費支援を行ってきました。

また、日本に避難してきたウクライナの人々へさらなる支援を行うため、ウクライナ避難民支援基金を開設しています。いただいたご寄付はウクライナ避難民の皆さんが安心して生活を送り、地域に溶け込むことができるように、日本語学習の支援、生活相談窓口、物資の配布(交通系ICカード等)、地域イベントでの交流などに使われる予定です。