寄付金によるウクライナ避難民向け日本語学校奨学金を提供することが決定しました

写真:勉強しているウクライナ避難民留学生たちの様子

2023年4月より、皆さまからお預かりした寄付金を活用させていただき、就労・進学を目指す避難民を対象とした日本語教育を受けるための奨学金事業を実施します。

奨学金の支給期間、支給額、申請方法

日本での就労・就学の意欲を持った避難民の方が日本語学校に継続的に通い、年間570時間以上の日本語教育を受けるための学費を、最長2年間支援(学費上限:100万円/年)します。また、学費の他、通学費、PC購入費、教材費の一部補助として交通系ICカード(一律2万円)及び図書カード(一律3万円)も給付します。

支援の背景

ニュースでも日々報じられている通り、ウクライナへのロシア侵攻は未だ終局が見えず、日本にも現在2,000名を超えるウクライナ避難民の方が避難をしており、日本への滞在が長期化しています。

他方、当財団が支援する避難民に対するアンケート結果の分析では、約4割の避難民がすでに就業しているものの、多くの方がパートタイムの就労で、能力・経験を活かし経済的に自立できるフルタイムの仕事にはつけていません。

「ウクライナ避難民の就労者・フルタイム就労者等の割合」の円グラフ。画像左側に「働いているか」の質問に回答した人の割合を示した円グラフ。「働いていない」と答えた人は60.9%。「働いている」と答えた人は39.1%。働いていないと答えた人に対して働いていない場合の状況を質問したところ、「仕事を探しており、日本語教育、職業訓練を受けている」と答えた人は44.8%。「仕事を探していない」と答えた人は41.6%。「仕事を探しているが、日本語教育、職業訓練を受けていない」と答えた人は13.6%。働いていると答えた人に対して働き方を質問したところ、「パートタイム」と答えた人は79.5%。「フルタイム」と答えた人は20.5%。
ウクライナ避難民の就労者・フルタイム就労者等の割合

日本に避難しているウクライナ避難民の6割近くは大卒以上で、母国ではITエンジニアや弁護士として働いているなど経験や能力を持っているにも関わらず、その経験や能力が活かせていないのが現状です。ウクライナ避難民からも、支援を受けつづけるのではなく、日本社会に自分たちの経験を活かして貢献したいという声がよく聞かれています。

経験や能力を活かした仕事につけていない理由の一つの大きな理由が語学です。避難直後よりは日本語を少し理解する方は増えているものの、ほとんどの方が働くことに必要なレベルの日本語は話すことができません。働くためには、日本語能力試験(JLPT)でN1~N2レベルの日本語レベルが必要と言われ、年間570時間以上の集中的な日本語の学習が必要です。

「ウクライナ避難民の日本語習熟度の割合」の円グラフ。画像左側に「現在日本語が話せるか」の質問に回答した人の割合を示した円グラフ。「ほとんど話ができず、日本語が聞き取れない」と答えた人は46.9%。「少し話ができ、簡単な日本語のみ聞き取れる」と答えた人は35.7%。「話ができ、日常生活の日本語は聞き取れる」と答えた人は11.2%。「とても話ができ、難しい内容も聞き取れる」と答えた人は6.1%。画像右側に参考として2022年7月29日に発表された第1回アンケートの「日本語が話せるか」の質問に回答した人の割合を示した円グラフ。「ほとんど話ができず、日本語が聞き取れない」と答えた人は68%。「少し話ができ、簡単な日本語のみ聞き取れる」と答えた人は19%。「話ができ、日常生活の日本語は聞き取れる」と答えた人は8%。「とても話ができ、難しい内容も聞き取れる」と答えた人は5%。
ウクライナ避難民の日本語習熟度の割合

今回の奨学金は、ウクライナ避難民の受入れを希望する日本語学校の中で、受入態勢が整っていると当財団が判断した日本語学校86校と提携し、それらの日本語学校に通うための学費を支援するものです。
避難民として支援されつづける存在ではなく、日本社会の一員として活躍し貢献する存在へ。皆さまのあたたかいご寄付によって、ウクライナの方へ「日本で生きていくという選択肢」を提供することにつながっています。

日本財団は、皆さまからお預かりしたご寄付を大切に活用しながら、ウクライナ避難民の方々に寄り添った支援を実施してまいります。

日本で生きていくという選択肢を、ウクライナの人々へ。

日本財団では、ウクライナ避難民支援を行う各団体への助成プログラムのほか、これまで独自でウクライナ避難民支援も行い、合計1,428名(2022年10月26日時点)に渡航費・生活費・住環境整備費支援を行ってきました。

また、日本に避難してきたウクライナの人々へさらなる支援を行うため、ウクライナ避難民支援基金を開設しています。いただいたご寄付はウクライナ避難民の皆さんが安心して生活を送り、地域に溶け込むことができるように、日本語学習の支援、生活相談窓口、物資の配布(交通系ICカード等)、地域イベントでの交流などに使われる予定です。