併設する児童家庭支援センターと連携し、子どもを見守る「日田ひなた拠点」

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世界水泳選手権2023福岡大会を見学。大会のオフィシャルパートナー・ニコンのキッズプログラムで遊ぶ子どもたち。

1947年、大分県中津市で児童養護施設を運営するところから始まった社会福祉法人清浄園。その後、児童家庭支援センターや地域子育て支援拠点施設などを開設し、地域密着の子育て支援を進めてきました。2022年からは、日田市に児童家庭支援センター「陽(ひなた)」を開設。2023年春からは、大分県日田市と中津市でそれぞれ子ども第三の居場所を運営しています。

今回訪れたのは、日田市の常設ケアモデルの「日田ひなた拠点」。市役所や社会福祉協議会、図書館、学校、そしてショートステイを受け入れる児童家庭支援センター「陽」などが集まる市の中心部に位置しています。

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縁側のある平屋建ての家。左奥に見えるのが、児童家庭支援センター「陽(ひなた)」。

居場所の友達と過ごす時間を楽しむ

日田ひなた拠点の開所は週5日。現在29名の小中学生が登録しており、放課後から20時まで、夕食や入浴といった生活支援や学習支援を行います。

1日の過ごし方

14:30 スタッフが各学校へお迎え
15:00 おやつ
宿題
自由遊び
お風呂
18:00 夕食
歯磨き
19:30 スタッフにより送り、または保護者のお迎え

週3日は学習ボランティアが来て子どもたちに勉強を教える他、季節の行事食を作る際は一緒にクッキングをすることもあります。また、2拠点運営していることを活かして、中津と日田の合同で、1泊2日の旅行をしたことも。大分や別府を巡り、水族館やぶどう狩りを楽しみました。

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玖珠町にある豊後森機関庫公園へ。生活体験が不足しているため、お出かけが珍しい子どもが多数。たくさんの笑顔に出会えた。

児童家庭支援センターから見えた居場所ニーズ

現在、日田ひなた拠点は隣接する児童家庭支援センター「陽」のスタッフも行き来しながら、運営しています。居場所に先んじて開設していた「陽」センター長の山本さやかさんは、「児童家庭支援センターで実施している「支援対象児童等見守り強化事業」で子どもや家庭のニーズが見えたことが居場所開設に繋がった」と話します。

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見守り事業では、家庭訪問は週1回の頻度だったが、居場所は週数回以上利用する子どもが多いため、「また明日ねと言える」ことが安心にも繋がっている、と山本さんは話す。

「各家庭にアウトリーチする中で、夜遅くまでお留守番している子ども、ヤングケアラーで家事負担が多い子どもがいることが見えてきました。それならば、放課後過ごす居場所があり、食事を取れる場所があれば助かるのではないかと考えました」(山本さん)

実際、日田ひなた拠点の開設後、潜在的ニーズが顕在化し、利用希望者は右肩上がり。さまざまな課題を抱えた家庭の子どもの利用が多く、希望に対して受け入れ体制が追いついていません。

清浄園の統括部長の古屋康博さんは、開所当時の様子をこのように振り返ります。

「さまざまな課題を抱えた子どもが多く、満足に食べられていなかったり、お風呂の入り方を知らなかったりするケースもありました。夕食の他に、帰宅時におにぎりを持たせることもありましたが、継続的に居場所を利用していただくことで、支援の緊急度も低くなってきました」(古屋さん)

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居場所があることで、家庭養育を継続することができているケースも多いと、古屋さん。

大人になっても、困った時に相談できる居場所へ

スタッフのみなさんは、「陽」として見守り事業を始めた時から、各家庭と信頼関係を築いてきました。その関係性が拠点への信頼にもつながり、徐々に「困った時に相談できる場所」と認識されるようになっています。

「親身になって手助けしてくれる人がいれば、子どもも大人も安心・安全に暮らせるようになります。本当にしんどい時は、児童家庭支援センターのショートステイ事業を利用していただけることも、家庭養育を支援する大きな手段になっています」(山本さん)

保護者だけではなく、子どもから相談されることも増えています。「今日、学校でこんなトラブルがあって……」「今、家でこんなことがあるんだ」といった困りごとから、「大学ってどんなところ?」「◯◯(スタッフの名前)さんは、なんでこの仕事をしているの?」など、将来のことやスタッフに興味を持った質問も生まれています。

居場所を利用した先の子どもをどのように考えているのでしょうか。

「居場所があれば、困難な背景を抱える家庭の世代間連鎖は防げると考えます。さまざまな大人が関わる居場所で多様なロールモデルを知ることができれば、大人や家庭のイメージも変わるはず。夢や希望を与えられるような居場所になればいいですし、子どもたちが大人になり困難にぶち当たった時、ここを思い出して、また頑張ろうと思えるような存在になりたいですね」(古屋さん)

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拠点で開催した夏祭り。ショートステイを利用していた子どもが高校生になり、ボランティアとして関わってくれているケースもある。

そのためにも、今後より深くつながることが大切になると考えています。

「就職、結婚、出産などさまざまなライフステージで困った時、相談に来てくれる居場所になるには、今、濃密な時間を持つことが欠かせません。ただし、居場所は集団支援のため、一人ひとりとじっくり話せる時間は限られています。今後は、定期的な面談の機会も設けていきたいです」(古屋さん)

2024年からは居場所を利用して、子ども食堂の運営も始めました。居場所利用の手前にいる子どもや保護者とつながり、いざという時、手を差し伸べやすくなります。そこに「陽」もあることで、行政連携もしやすく面で支援しやすい環境を整えようとしています。

今後も日田市の子育て支援拠点として担う役割は、大きいものになりそうです。

取材:北川由依