【寄付者の声】子どもたちの「​学び​たい!」をしっかりサポート!~漢検過去問題集をご寄贈いただきました

日本財団ではこのほど、公益財団法人日本漢字能力検定協会から、全国の「子ども第三の居場所」を利用する子どもたちに漢字能力検定の過去問題集をご寄贈いただきました。問題集を受け取った各拠点では早速、過去問を使った漢字学習の支援が始まっています。漢字学習は子どもたちの成長に、どのようなメリットをもたらすのでしょうか。同協会の八田香里常任理事に漢字学習の意義と支援にかける想いを聞きました。問題集を受け取った子どもたちの反応についても、併せてご報告します。

学ぶ人の「自己効力感」を養う漢字検定

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公益財団法人日本漢字能力検定協会本部(京都市)

日本漢字能力検定(以下、漢検)は公益財団法人日本漢字能力検定協会が1975年から約50年にわたって実施している伝統ある検定試験です。検定は10級(小学校1年生修了レベル)~1級(大学・一般レベル)まで難易度別に12段階に分かれて行われ、志願者数は年間140~170万人に上ります。合格を目指して学習を重ねることが語彙力の向上に繋がるだけでなく、合格すると高校・大学入試や就職・転職に有利に働くケースもあることから、学生だけでなく社会人にも人気の検定試験として、広く定着しています。

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公益財団法人日本漢字能力検定協会 八田香里常任理事

漢字学習の魅力について同協会の八田香里常任理事(以下「八田さん」)は「漢字は、コツコツ学習する・努力する習慣を身に付けるのに、うってつけの題材です。学習すればするほど、目に見えて読める漢字・書ける漢字が増えていくので達成感が得やすく、『やればできるんだ』という自信を育みやすいのが特徴です」と話します。「毎日の漢字学習に『漢検』という試験を組み合わせることで目標が設定しやすくなり、その目標をクリアすることで自己効力感(=自分が目標達成力を持っていることを認識すること)を養うことができます。これこそが、漢検が多くの皆さんに50年もの長い間、支持されてきた理由の一つだと考えています」。

全国86拠点の子どもたちに漢検過去問題集を寄付

日本財団が全国に展開する「子ども第三の居場所」の一部拠点でも、こうした漢字の学習効果に着目し、漢字を活用した学習支援や漢検への挑戦をサポートする取り組みが行われています。この取り組みを後押していただく形で、全国の居場所86拠点に過去問題集をご寄贈いただきました。受け取った各拠点では、早速子どもたちの習熟度に合わせて問題集を活用し、日々の漢字学習に取り組んでいます。

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ご寄付いただいた漢検過去問題集

【問題集を受け取った拠点からの声】

子どもの居場所かがみの(岡山県)

漢検過去問、届きました。来年度も漢検challengeする子どもたちがいるので喜んでいました。
当拠点では、上級生が下級生に教えるという環境下にありますので、合格率アップ⤴⤴⤴間違いなし!!!
ご寄付いただきましてありがとうございました。

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問題集を受け取って大喜びの子どもたち

b&g尾道(広島県)

4年前から拠点(常設ケア)の取り組みで漢字検定・算数検定のチャレンジをサポートする活動をしています。教育への投資意義を投げかけるために検定料を自己負担としていますが、活動をきっかけに毎年受検するようになった世帯が複数あります。中には飛び級受験(目安の学年よりも上の級)で合格した児童もいます。対象校の中には、受検者が少なく、受検会場を設けない学校がありますが、拠点の子が受けると聞いて学校も驚き、特別に会場を用意してくれる例もありました。受検期間になると、子どもの可能性の大きさをいつも感じます。今回は中学生以上の教科書もいただけるということで、能力のある子どもはどんどん挑戦してもらって、引き続き社会を支え、導ける若者を育成していきたいと思います。

このめ~Giving Tree AOMORI(青森県)

本日、漢検過去問集が届きました。1年生から6年生まで、興味津々です。受検を考えている子もおり、保護者の方にも過去問集をご活用いただくようお話しました。ありがとうございました!

tetote~つなぐん家~(鳥取県)

漢字検定の過去問題集が届きました。今年初チャレンジしたいと思っている子ども達がおりまして、とても喜んでいます。
本当にありがとうございました。

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しっかり勉強して、漢検に初チャレンジするよ!

ゲーム感覚で学び、漢字への苦手意識を払しょくしよう

拠点からの声を受けて八田​さん​は、「子どもたちやスタッフの皆さんに喜んでいただけてホッとしています。特にスタッフの皆さんが、受け取った問題集をそのまま子どもたちに与えて解かせるだけでなく、クイズ方式にするなど、子どもたちが自主的に楽しみながら学べる方法を考えてくださっていることが嬉しいですね」と話します。「スタッフの皆さんの努力、そして子どもたちの自由な発想の力で、問題集が単なる教材の枠を超えて一つのコミュニケーションツールになっていることに、大きな可能性を感じています」。

八田さんによると、このように楽しみながら学ぶことこそが漢字を効率良く学ぶための一番のコツだといいます。「日本ではかつて、漢字の書き取りが『罰』として扱われていた時期がありました。宿題をしてこなかったり、忘れ物をしたりした罰に漢字を何回も書かされたおかげで、漢字が嫌いになった方も多いですよね。今の子どもたちには、もうそんな経験をしてほしくありません。楽しみながら学び、4,000年もの長い間、使い続けられてきた漢字の魅力を知り、日常生活に活かしてほしいと願っています」。

では、子どもたちに漢字への興味を持たせるには、どうすればいいのでしょうか。

八田​さん​が勧めてくれたのは、「漢字の成り立ち」を知ること。例えば自分の名前に使われている漢字の成り立ちを調べることで、その漢字が作られた背景や漢字を作った人たちの暮らしに想いを馳せることができます。そうして子どもたちが漢字に興味を持ったら、ゲーム感覚で学べる仕組みを整えるのも一案です。「例えば、ある部首の漢字の数をどちらが多く挙げられるかを競う『部首対決』をするとか、画数の多さを競う『画数対決』をするとか、体の動きで漢字を表現してそれをクイズにするとか、漢字を使ったいろいろなゲームをみんなで楽しんでみてください。遊んでいるうちに自然に漢字が覚えられますし、漢字への苦手意識も払しょくされると思います。漢字をたくさん覚えたら、力試しに漢検を受けてみたくなる子も出てくることでしょう」。

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協会本部に隣接する「漢字ミュージアム」(京都市)では、漢字にまつわるトリビアや歴史を楽しく学ぶことができる

漢字学習で培われるコミュニケーション力が子どもたちの「生き抜く力」に

しかし、漢字学習のゴールは漢検に受かることではなく、「自分の気持ちを言葉で表現できるようになること、相手の言葉をしっかり理解できるようになること」だと八田​さん​は強調します。

「以前、少年院にも漢検の過去問題集を寄贈したことがあります。少年院で暮らす子どもの中には、キレることでしか自分の気持ちを表現できない子も少なくありません。その少年院の子どもたちも自己表現が苦手で、日誌もひらがな表記でごく短いものしか書くことができませんでした。しかし、漢字学習を続けた結果、日誌に漢字表記が増えただけでなく、子どもたちが口々に『大人が何を言っているのかわかるようになった』『自分の気持ちを言葉にできた』と言うようになったそうです。つまり、子どもたちは漢字を学ぶことによって語彙が増え、その結果相手の言葉の趣旨や相手の気持ちが理解できるようになり、自分の言葉で自分の気持ちを相手に伝えられるようになったんですね。これこそが、まさに漢字学習の最大の収穫ではないかと私は考えています」。

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漢字ミュージアムには、ゲーム感覚で漢字が学べる仕組みがたくさん

確かに、今は対人でのコミュニケーションがますます希薄になりつつある時代。会話でのコミュニケーションはもちろん、画像や動画によるSNSの普及を背景に文章を使ったコミュニケーションには苦手意識を持つ若者が増えています。

そんな若者たちにこそ、ぜひ漢字を使ってほしいと八田​さん​は訴えます。「漢字は、文字そのものに意味がある表意文字なので、極端な話、漢字一文字だけ、例えば『笑』とか『泣』の一文字だけでも、自分の気持ちを表すことができますよね。漢字を学べば学ぶほど、より深く豊かに、自分の気持ちを相手に伝える力​の土台​が身に付きます。この力は子どもたちが将来社会に出て働き、多くの人に揉まれて生きていく中で、非常に力強い支えとなってくれるはずです」。

自宅でのオンライン受検を実現。誰もが自分らしく学べる社会を目指して

一人でも多くの人に、漢字を学ぶ楽しさを知り漢字によるコミュニケーション力を身に付けてほしい。そんな願いから漢検では、従来の①所定の会場での「個人受検」(年3回)、②学校や塾などで行う「団体受検」、③所定の会場でコンピュータを使って行う「漢検CBT受検」(2~7級のみ)に加え、2024年4月からタブレット端末を使って自宅で受検できる「漢検オンライン(個人受検)」方式を追加しました(現在5~10級のみ。2024年秋以降に2~4級を追加予定)。オンライン受検を実現したことによって、外に出るのが億劫な方、障害があって外出が難しい方、病気で自宅療養中の方、離島や海外など遠方にお住まいで会場まで来られない方など、これまで受検が難しかった方にもチャレンジできる可能性が広がりました。

「今回、問題集を寄贈させていただいた『子ども第三の居場所』の子どもたちの中にも、いろいろな事情があって学校に通いづらい子がいると伺っています。そんなお子さんたちにもぜひコツコツと自分らしいスタイルで漢字を学び、無理のない方法で漢検を受検してもらえたら嬉しいですね」と八田​さん​。「子ども第三の居場所の『誰一人取り残さない』というコンセプトは、全ての人に学びの機会を届けたいという漢検の想いとも通ずるものがあります。これからも、子どもたちの未来のために、そしてすべての人が自分らしく学び、生活できる社会の実現のために取り組んでいきたいと考えています」。

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日本漢字能力検定協会の皆さん(左から事業創造企画室課長補佐 田中琢史さん、事業創造企画室専門職 安井理紗さん、常任理事 八田香里さん、事業創造企画室室長 茅根英之さん)