難病児支援の仲間と子どもたちが集うお祭り「ワクワクつながる祭典」特定非営利活動法人心魂プロジェクト

「ワクワクつながる祭典」でつながろう!

人工呼吸器や経管栄養などの医療的ケアを必要とする子どもは全国に約2万人、難病と共に生きる子どもは25万人いると言われています。

こうした子どもとその家族を支援する団体は全国に数多く存在しますが、個々の活動が大変忙しく、支援団体同士の出会いやネットワーク作り、つながりの機会の創出が課題となっていました。

そんな中、支援団体同士、団体と当事者、当事者同士が直接顔を見て出会うことのできるイベントをしようと、病児にプロのステージパフォーマンスを届けている「心魂プロジェクト」が中心となり、2024年3月に横浜・大さん橋ホールで「第一回ワクワクつながる祭典」が開催されました。難病の子どもたちのために熱い思いで活動をする11の団体が集結し、大勢の当事者とその家族も参加。様々な交流や新しいつながりが生まれました。

「1つの目標に向けて大きな思いをもって、みんなの心で作る遊園地のようなイベントにしていけたら」とこの祭典の発起人、心魂プロジェクト共同代表の寺田真実さんは話します。

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難病の子どもたちのために、熱い思いで活動をする仲間が大集合

人の心でハッピーな世界を作る

オープニングとエンディングに心魂プロジェクトがパフォーマンスを披露。ソーラン節で会場を盛り上げ、参加団体が次々にお話や出し物、活動報告をしていきました。

心魂プロジェクトのキッズ団やきょうだい児は、思いが溢れるパフォーマンスで会場を魅了し、日頃の練習の成果を発揮しました。

「オープニングで歌を歌った時に、会場の空気がすうっと前に引き寄せられる感じがありました。命がけで生きている子どもたちのグループ、キッズ団のパフォーマンスを見てみんなの意識が1つになったのかもしれません」と寺田さん。

「お母さんたちは、思い通りにならないことばかりだと思います。自分たちを応援してくれる人がこんなにいるんだと知ることで、少しでも元気になって心に新しい風を入れて欲しい。そこがゴールなんです」。

「つながりを必要とする人たちが集える場所を作りたかったのです。会場では、団体の代表やメンバー、当事者たちの間で多くの交流が生まれ、化学反応が起きました。いろいろなことに思いを巡らせたとても幸せな時間でした」。

2025年3月に同じ会場で第二回が開催される予定です。熱い思いを共有できる団体に参加してほしいと寺田さんは考えています。

「人の心で、ハッピーな世界を作ることは可能だと思っています。このイベントを、人の心で作る遊園地みたいな場所にしたいんです。子どもたちが安心して楽しめる場所であり、大人にとっては、この一年頑張ってきたなと思えるようなイベントにしていけたら」。

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心魂プロジェクトのパフォーマンス。誰かの勇気や力になることを信じて、キッズ団ときょうだい児たちは自分たちの思いを表現しました

星空の下、みんなで集う

参加団体の1つ「星つむぎの村」は本物の星空を見るのが難しい子どもたちや家族に、プラネタリウムで星空を届ける活動を続けています。イベント当日は全国から星つむぎの村の活動に賛同する星の村人たちが星つむぎの村の発表を盛り上げようと会場に集まりました。

会場の天井いっぱいに星を散りばめて、星空の下、その日のお祭りに集まった何百人というみんなで宙を見上げます。

「どこに行きたいの?」「天王星!」「よし出発!」

宇宙旅行に出発です。この星空の旅のパフォーマンスには、オンラインで学びや交流を行う「星の寺子屋」の子どもたちも参加。その中には、お空に旅立ってしまったお子さんのお兄ちゃんや障害のある子どももいて、その子たちが宇宙飛行士として登場しました。

星のかけらでできている自分のことを思い、みんなは1つにつながっていることや宇宙とのつながりを感じ、星空の下、みんなで響きあう時間を過ごしました。

会場では、7メートルのドームを設置し、臨場感たっぷりのプラネタリウム体験をしてもらいました。来場者がその後、星つむぎの村に訪れたり、これがきっかけでプラネタリウムの依頼が届くなどの新しい出会いも生まれました。

「これだけの数の団体が集まってイベントを開催するのは初めて。お互いにつながりあった人たちが情報の共有などを一緒にできることもあるし、もっと広く社会に知ってもらうという目的もあります。人との出会いで何かが始まるし世の中が変わる。僕らはそういう時間にいさせてもらいました。本当によい時間でした」と星つむぎの村共同代表の跡部浩一さん。

「子どもたちには1つでも多くの体験をしてほしいと思ってきましたが、子どもたちが自分から何かやる気持ちをもった時に、それを周りの環境で支え、促していくことが大事。観客のひとりではなくて主人公になれる。ここはまさしく、そんな場でした。
地元の山梨でもさまざまな当事者や支援者などをつなげられる場を作りたいなあ、という気持ちをもらいました」と星つむぎの村共同代表の高橋真理子さんは新たな思いを語ってくれました。

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会場の天井が星空に。みんなで宇宙旅行に出発!

たくさんの仲間が応援しているんだよ

今回参加した団体、「日本クリニクラウン協会」は赤い鼻をつけたクラウンが小児病棟を訪問し、子どもたちに笑顔を届ける活動を続けています。

イベント当日はクリニクラウンが参加者を大歓迎でお出迎えし、各団体が発表をする際には応援をしてステージを盛り上げました。クリニクラウンのステージでは、クリニクラウンを応援するキッズクラウンの子どもたちと楽しく活動紹介をして、最後は会場のみんなと赤鼻ダンス!会場にはオンラインでしか会ったことのない子どもも訪れて、お互いにリアルで会えたことに大喜び。発表の合間に一緒に楽器演奏や遊びを楽しみました。参加したクリニクラウンたちも改めて当事者の方々の思いを感じ、様々な団体がいることを知ることができて、パワーをもらったそう。

事務局長の熊谷恵利子さんは「次の世代につないでいくために」という思いで病児支援をする団体に声をかけて「小児病棟わくわく応援団」を2023年3月に立ち上げました。団体同士がつながることで難病の子どもたちのために何ができるのか、オンラインでの勉強会を続けています。

「病児支援をしている団体のみなさんと個別に会う機会やオンラインで話す機会はありましたが、リアルに勢揃いすることができたのは今回が初めてでした。みんなで一緒に子どもたちのために1つのプロジェクトに向き合う時間がとれて嬉しかったです」と熊谷さん。

「『病気や障害を抱える子どもたちや家族、そのきょうだいをめちゃくちゃ応援している人たちがたくさんいるんだよ』というメッセージを伝えられたことがよかったですし、団体同士が『ひとりじゃないよね。お互いを理解し、長所を生かしながらやっていきたいね』ということを直接会って確認し合えたことも大きかった。新たなつながりが生まれ、連携が強固になりました」。

会を終えて、一年後にまた集う約束をして各団体はそれぞれの活動の場に戻っていきました。
熱い思いをもつ仲間のこの日の出会いが化学変化を起こし、次の世代に受け継がれて、いつの日か社会を変える力になると思わせてくれるお祭りでした。

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クリニクラウンのステージ。赤鼻ダンスで会場を盛り上げました

「ワクワクつながる祭典2024」参加団体

「日本財団 難病の子どもと家族を支えるプログラム」に興味をお持ちの方は、ぜひ難病児支援ページをご覧ください。

文責 ライター 玉井 肇子
日本財団 公益事業部 子ども支援チーム