“使い道に迷うポイント”が社会を変える。マネーフォワードと日本財団が挑む、新しい寄付のかたちとは?

「ビジネスカードで貯まったポイント、どうすればいい?」
そんな利用者の悩みを解決すべく生まれたのが、マネーフォワード ビジネスカードの「スポンサーポイントプロジェクト」です。カード利用により還元されたポイントを追加費用なしでスポーツチームや社会貢献団体に寄付できるこの仕組みは、2024年秋から日本財団との連携もスタートし、注目を集めています。プロジェクトの立ち上げ背景や概要、今後の展望を同社ビジネスカンパニーFintech事業推進本部 マーケティング部副部長の柳沢峻也さんに伺いました。

「ポイントの使い道がわからない」~ユーザーの悩みに着目

写真
株式会社マネーフォワードビジネスカンパニーFintech事業推進本部
マーケティング部 副部長 柳沢峻也さん

株式会社マネーフォワード(本社・東京都港区)は、「お金を前へ。人生をもっと前へ。」をミッションに掲げ、個人や法人向けに家計管理や会計業務の効率化を支援するクラウドサービスを提供する、日本発のフィンテック企業です。

同社が提供している「マネーフォワード ビジネスカード」は、初期費用・年会費無料で作成可能な法人・個人事業主向けのビジネスカード。原則として何枚でもカードの発行ができ、利用明細のリアルタイム反映が可能、従業員の経費支払いにも利用できるなど便利な機能が評判を呼び、累計発行枚数は順調に伸び続けています。

通常の利用で1%、マネーフォワード関連サービスの支払いでは最大3%のポイント還元が受けられるのも本カードのメリットの一つですが、同社で本カードのサービスを担当するマーケティング部副部長の柳沢峻也さんによると、ポイントの活用法については、ユーザーから悩みの声が聞かれていたそうです。

「個人向けカードの場合は、還元されたポイントはユーザー様ご本人が自由に使うことができます。しかし、ビジネスカードの場合は還元されたポイントについては『誰のものなのか、何に使うべきかの判断が難しく、貯まったポイントを放置したままになっている』とのお声をよく頂戴していました」と柳沢さん。「せっかくのポイントを無駄にしないためにも、何か有効活用できる方法をご提案できないだろうか」と考えていたそうです。

追加費用不要。カードポイントがそのまま寄付に!

そんなとき、柳沢さんが偶然出会ったのが、私立名古屋高校のサッカー部の関係者でした。「名古屋高校サッカー部は2023年冬の全国高等学校サッカー選手権大会に創部65年目にして初出場、ベスト8入りを果たし、Jリーガーも輩出するなど注目されています。しかし、スポーツは強豪になればなるほど大会出場費や遠征費などがかさみ、その資金確保が大きな課題となっているとのこと。私もサッカーの競技経験があるので事情はよく分かりました。そこで、なんとか若く才能のある選手たちを支援できないか…と考えたときに、頭に浮かんだのがビジネスカードのポイントの利活用でした」と柳沢さん。

写真
「追加費用なしで手間暇をかけず、気軽に寄付できる仕組みを作りたかった」(柳沢さん)

「つまり、使い道が決めきれずに何となく貯めるがままになっている還元ポイントを、支援を必要としている人のもとに寄付できないだろうかと思いついたのです」。

柳沢さんはすぐにこのアイデアを形にすべく社内で議論と調整を重ね、ユーザーが還元ポイントをスポーツチームや社会貢献団体に寄付できる仕組み「マネーフォワード ビジネスカード」スポンサーポイントを立ち上げ、2024年夏からサービスの提供を開始しました。
この仕組みを使えば、ユーザーは追加の費用を負担することなく寄付ができ、社会課題の解決に貢献したり好きなスポーツチームの支援をしたりすることができます。

支援先には寄付以外のメリットも

一方、支援を必要とするスポーツチームや社会貢献団体にとっては以下のようなメリットが期待できます。

【支援先チームや団体にとってのメリット】

  • 新たな資金源の確保
    還元ポイントの寄付先となることで、これまでにない資金源を確保できます。
  • 認知度向上
    カード会社のプロモーションやユーザーの利用を通じて団体の存在が広まり、ファン層・支援者が増えるきっかけになります。
  • コストをかけずに支援を受けられる
    寄付を集めるための大規模なキャンペーンや募金活動を行わなくても、自然な形で支援を得ることができます。
  • 幅広い層からの寄付を受けやすくなる
    「お金を出す」のではなく「ポイントを使う」ため、支援の敷居が下がり、若年層などからも応援されやすくなります。

さらに、柳沢さんは「ビジネスカードの発行・運営元であるマネーフォワード自身にも、カードの知名度が上がってリーチできる顧客層が広がる、顧客ロイヤルティ(顧客との信頼関係)が向上するなど、大きなメリットが期待できます。この意味で、スポンサーポイントプロジェクトはユーザー、支援先チームや団体、私たちカード会社それぞれにメリットのある、『三方よし』の仕組みだと言えます」と期待を寄せています。

日本財団が提供する6基金への寄付も可能に!

当初、本プロジェクトでは名古屋高校サッカー部やJリーグのクラブチームを支援先としていましたが、少しずつ支援先を拡大。2024年10月からはカード決済の還元ポイントを日本財団が提供する6つの基金に寄付できるようになりました。

【還元ポイントを用いた寄付が可能な基金】

  • 夢の貯金箱
  • 日本財団子どもサポート基金
  • バリアフリー基金
  • 災害復興支援特別基金
  • 海と日本プロジェクト推進基金
  • HEROs FUND

日本財団との連携を検討した理由について柳沢さんは「ユーザーの皆さまにとっては、支援先のラインアップが豊富なほうが寄付しやすいですよね。そこで、寄付先を増やすべくいろいろと調べている過程で日本財団の取り組みに着目しました。歴史も知名度もある日本財団の支援先であれば、ユーザーの皆さまからの支援をしっかり有意義に使ってくれるはずだという安心感もありましたね」と振り返ります。

写真
寄付先のラインアップを増やすなど、現在もプロジェクトの拡充に取り組む

「マネーフォワードとして日本財団とタッグを組むのは初めてのことだったのですが、たまたま知人が日本財団で働いているので相談してみたところ、すごく手厚いサポートとアドバイスを受けることができ、予想以上に短時間で支援の仕組みを整備することができました」。

前職も含めてこれまで寄付や社会貢献活動に、仕事で関わった経験がなかったという柳沢さん。日本財団との連携を通じて「世の中には、素晴らしい活動をしているにも関わらず、こんなに支援を必要とする団体があるんだということを再認識しました」と話します。

支援者と被支援者が繋がるコミュニティの構築を目指す

そして、柳沢さんにはもう一つ気付いたことがあるといいます。それは、社会貢献の方法を模索している企業が予想以上に多いこと。「先日も日本財団さんと一緒に企業向けに本プロジェクトについて紹介するセミナーを開催したのですが、国内の有名な大企業のCSR担当者がセミナー受講後に『こんなふうに無理なくできる社会貢献の方法を探していました!』と喜びのコメントを寄せてくださったのです。企業の規模に関係なく社会貢献に関する新しい情報へのニーズが非常に大きいことを実感しました」と話す柳沢さん。

「今後は本プロジェクトをより多くの企業や団体、個人事業主の皆さんに紹介して支援の輪を広げ、支援者同士、もしくは支援者と支援先の団体とが交流するコミュニティを作り、日本の寄付文化の発展に微力ながら貢献していきたいと考えています」と話してくれました。

クラウドソリューションで、支援先団体のDXにも貢献したい

また、本プロジェクトを通じて、これまでマネーフォワードが十分にリーチできていなかったNPO団体など社会貢献団体との接点ができたことも、柳沢さんには大きな気づきに繋がったといいます。

「多くの団体のみなさんが、限られたリソース(人材や資金)をやりくりしながら団体運営をしていらっしゃいます。私たちマネーフォワードのミッションは『お金を前へ。人生をもっと前へ。』です。個人や法人を問わず、すべての人のお金に関する課題を解決し、より豊かな人生を実現することを目指しています。NPO団体等の皆さんにも私たちのビジネスカードやクラウドサービス導入を通じてDX・キャッシュレスを推進していただくことができれば、必ずや業務の効率化やお金に関する課題の解決に貢献できるものと確信しています」と柳沢さん。

写真
「NPOなど社会貢献団体のDXにも貢献したい」(柳沢さん)

マネーフォワード ビジネスカードのスポンサーポイントプロジェクトは、まだ始まったばかり。柳沢さんらが構想する関係者のコミュニティが実現すれば、その出会いから新たなアイデアやアクションが生まれ、革新的な社会貢献の仕組みが生まれるかもしれません。
柳沢さんは「今後も試行錯誤が続くと思いますが、より良い形でユーザーの皆さまの想いを支援先に届けられるよう、日本財団はじめ外部の皆さんとも協力しながら引き続きプロジェクトのブラッシュアップに努めていきたいと思います」と話しています。