スポーツの力で社会課題を解決しよう!横浜慶應チャレンジャー国際テニストーナメント2025で「車いすテニスクリニック」を開催

2025年11月、慶應義塾大学の学生が主体となって企画・運営する国際テニストーナメント「横浜慶應チャレンジャー国際テニストーナメント2025」で、「車いすテニスクリニック」が開催されました。健常者と障害者が同じコートでプレーするこの特別な体験を通じて、参加者は車いすテニスの競技的魅力とスポーツの持つ社会的価値を実感。学生たちの挑戦と学び、そしてパラスポーツの可能性が広がった一日をレポートします。
車いすテニスの魅力を広めたい!健常者と障害者が共に楽しむ新しいスポーツ体験を
「横浜慶應チャレンジャー国際テニストーナメント2025」は、慶應義塾大学の学生が主体となって企画・運営する、国際的にも珍しい大学主催のテニストーナメント。ATPチャレンジャーツアーの公式戦として開催されています。世界ランキング上位を目指す若手選手にとって登竜門的な大会となっており、ダニエル太郎選手や綿貫陽介選手など、現在グランドスラムで活躍する選手らも過去に本大会で優勝を果たしています。
2025年11月16日から30日にかけて開催された、第14回横浜慶應チャレンジャー国際テニストーナメント2025では、「車いすテニスクリニック」が実施されました。このイベントの企画・運営を主導した慶應義塾大学体育研究所・坂井利彰研究室の川島颯特任助教によると、企画のきっかけは、2025年10月にあるイベントで学生たちが車いすテニスのプレーを目の当たりにしたときの、“驚き”だったといいます。

「精度の高いボールコントロールや多彩なストローク、さらにラケットを持ちながら車いすを自在に動かす見事なチェアワークなど、目の前で見る車いすテニスは想像以上にダイナミックで、あっという間に魅了されました。こんなに面白い競技を、もっと多くの人に知ってほしい、健常者・障害者の壁を超えて一緒にプレーを楽しみたいと思ったのが、企画の原点です」と川島特任助教。「健常者と障害のある選手が同じコートで自然に交流できるのも、車いすテニスの大きな魅力。両者が一緒にスポーツを楽しむ場を、本大会でもぜひ作り出したいと思いました」。
企画・運営は学生主体で。プロアスリートの協力・参加も実現
イベント開催までの準備期間は、わずか1カ月あまり。限られた時間の中で、川島特任助教をはじめ坂井研究室のメンバー、そして慶應義塾体育会庭球部の学生たちは、これまでの大会運営で培ってきたネットワークと実務ノウハウを総動員し、準備に奔走しました。
学生たちの熱意は周囲の共感を呼び、株式会社ブリヂストンや神奈川県車いすテニス協会の協力に加えて、日本財団からの助成金も獲得。さらに、パラリンピック日本代表・眞田卓選手とは直接交渉を重ね、ゲスト講師としての参加を快諾いただくことができました。
川島特任助教によると、準備に当たって最も苦労したのは、当日のプログラム構成でした。参加者のほぼ全員が車いすに乗ること自体が初めてという条件のもと、限られた時間内でどんなレッスンを行えば、車いすテニスの面白さが伝わるのか。悩む学生たちに眞田選手がアドバイスしたのが「事前学習会」の開催でした。


そこで、学生たちは11月22日(土)の本番に先立ち、11月5日(水)と11月19日(水)の2回にわたって事前学習会を開催。教員と運営側の学生たちが学習会に参加して車いすの操作方法や車いすテニスの基本的なルールを学びました。当日のプログラムを組むうえで最も有益だったのが、2回目の事前学習会でゲスト講師を務めてくれた車いすテニスプレーヤーの船水梓緒里選手のアドバイスです。「当初、私たちは車いすに乗るレッスンをした後で、車いすテニスの基本レッスンに移る予定だったのですが、船水選手から『皆さんは車いすに乗るためにレッスンを受けるのではなく、車いすテニスを楽しむためにレッスンを受けるのだから、最初からラケットを持って、車いすテニスの練習をしましょう』とのアドバイスを受けて、目からうろこが落ちました」と川島特任助教。アドバイス通り、車いすの操縦方法は安全確保のための最小限にとどめたことで、車いすテニスそのもののレッスン時間を十分に確保することができました。

小学生から60歳代まで約30人が参加、車いすテニスの面白さに夢中!


こうして迎えたイベント当日(11月22日)は、見事な秋晴れに恵まれた絶好のテニス日和。横浜慶應チャレンジャー国際テニストーナメント2025の熱戦が繰り広げられている慶應義塾大学日吉キャンパス内「蝮谷(まむしだに)テニスコート」の一角で、記念すべき第1回「車いすテニスクリニック」が開講しました。
参加者は公募に応募した小学生から60歳代までの男女約30人。クリニックでは、協力企業である株式会社ブリヂストンや神奈川県車いすテニス協会が車いすを貸与、慶應義塾体育会庭球部の学生たちが進行をサポートします。

レッスンに先立って、眞田選手が「車いすテニスは、健常者のテニスとほぼ同じルールで楽しめるのが大きな魅力です。唯一違うのはツーバウンドが認められている点だけで、同じコート、同じラケットでプレーできます。そのうえで、車いすを操作しながらラケットを扱うという独特の難しさがあり、それを乗り越えた時に大きな達成感や気づきが生まれます。体格や年齢に関係なく勝つチャンスがある点も、この競技ならではの面白さです。ぜひ、一緒に楽しみましょう」と挨拶。早速、全員が車いすに乗り込んでレッスンを開始しました。


事前学習の甲斐あって、受講者の皆さんは驚くほどスムーズに車いすを操り、眞田選手の指導のもと、鮮やかなラケットさばきでボールを打ったり打ち返したり。終始笑顔で車いすテニスを楽しんでいました。
今回初めて車いすテニスに挑戦したというご夫妻は「一般的なテニスとはまた違う難しさがあって、思わず夢中になってしまうほど面白かったです。車いすさえあれば、障害の有無にかかわらず楽しめる魅力的なスポーツだと思います」、「これまでは見るだけでしたが、実際に自分がプレーすることで車いすテニスがぐっと身近な存在に。パラスポーツを観戦する楽しみが増えました」とコメントしてくれました。


スポーツの「主役」は一人じゃない。関係者全員が必要不可欠な存在
今回のイベントは、企画から運営まで担った学生たちにとっても、大きな学びと気づきをもたらしたようです。

「これまでは、選手として“どう勝つか”ばかりに意識が向いていて、周りのことがあまり見えていませんでした。でも今回、運営側に立ってみて、試合の一つひとつがどれほど多くの人の支えによって成り立っているのかを実感しました。大会を裏側から見たことで、自分がこれまでいかに恵まれていたかに気づかされました。これからは、もっと広い視野で競技に向き合っていきたいと思います」(理工学部 朝倉 翔汰さん)。
「協賛企業との調整や参加者募集、当日のスケジュールづくりなど、さまざまな役割を仲間同士で分担していく中で、これまで気づかなかった仲間の強みや得意分野が次々と見えてきました。それも今回の大きな収穫です。お互いの個性を尊重しながら一つのイベントをつくり上げていく過程で、本当の意味でのインクルーシブな活動の素晴らしさを心から実感しました」(総合政策学部 有本 響さん)

レッスンを終えた眞田選手は今回のイベントについて、「学生の皆さんの主体的な取り組みが本当に素晴らしく、準備段階から当日の運営まで、丁寧で温かい空気がずっと流れていました。主催側が心から楽しんでいる姿勢は参加者にも自然と伝わるもので、その一体感がイベント全体をより良い方向へ導いていたと思います」と高く評価。「車いすテニスをはじめとしたパラスポーツへの理解が広がるきっかけにもなり、D&I(Diversity & Inclusion、誰もが取り残されない社会づくり)の推進という点でも大きな意義がありました。スポーツを通じた挑戦や感動の価値を共有できたことを、とても嬉しく思いますし、こうした取り組みが今後さらに広がっていくことを心から期待しています」と話してくれました。
パラスポーツの普及を社会課題解決の第一歩に

横浜慶應チャレンジャー国際テニストーナメント2025の大会副委員長を務める慶應義塾大学体育研究所の坂井利彰教授は、今回の取り組みについて次のように話しています。「まず何より、学生たちが主体的に動き、時には失敗もしながら、多くの関係者と協力してこのイベントをつくり上げてくれたことを誇りに思います。うまくいかない経験も含めて、一つひとつを乗り越えていく姿勢こそ、彼らの大きな成長につながりました。その挑戦は、日本財団が掲げる『スポーツの力で社会課題を解決する』という理念とも深く合致しています。学生たちがその原動力になり得ることを改めて実感しましたし、この貴重な機会をいただいた寄付者の皆さまに心から感謝しています。今回の経験を力に変え、これからもスポーツを通じて社会に新しい価値とつながりを生み出せるよう、学生とともに挑戦を続けていきたいです」。

日本財団は今後も、障害や人種、性別などの違いにかかわらず、一人ひとりが活躍できる社会の実現を目指し、社会課題の解決に全力で取り組んでまいります。こうした活動は、皆さま一人ひとりの温かいご支援とご寄付によって支えられています。引き続き、ご協力を賜りますようお願いいたします。