公的支援の“隙間”を埋めるのは団体の機動力と活動を支える個人・法人からの寄付。能登半島地震から3年目、輪島で続く支援の現場

写真:「輪島支援協働センター」代表の槌谷雅也さん。画面中央に「地元密着の被災者支援を「柔軟な寄付」が後押しする 輪島支援協働センター」の文字

2024年1月の発生から3年目を迎えている能登半島地震。仮設住宅から復興公営住宅への移行など、目に見える公的支援が進む一方で、その支援制度の枠組みからこぼれ落ちている被災者の切実なニーズがいまだに現地には存在しています。

例えば、一部損壊家屋の補修や引っ越し支援、自ら声を上げられない高齢者の生活課題。公的支援だけでは、どうしても対応し切れない構造的な隙間があります。

そうした公的支援の限界に対し、隙間を埋めるような支援を行っているのが、任意団体「輪島支援協働センター」です。そして、この民間ならではの草の根的かつ的確な活動を支えているのが、皆さまから寄せられた寄付です。寄付は「現場のニーズに合わせて使ってほしい」という寄付者の皆さまの応援で成り立っているものであるからこそ、現場で日々変化するさまざまな課題に対応することができます。

寄付は被災者支援のニーズにどう直結しているのでしょうか――。自身も被災者でありながら発災直後から地元・輪島のために奔走し続ける、輪島支援協働センター代表の槌谷雅也さんにお話を伺いました。

被災3年目の実態。公的支援から漏れている被災者ニーズとは

── 能登半島地震から3年目を迎えた現在、被災者支援はどのような状況なのでしょうか。

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槌谷雅也さん:ボランティアを派遣する「輪島支援協働センター」の代表。実際にボランティアを行う「輪島復興支援団体リガーレ」の代表も務める

槌谷さん:現在、公的支援は、仮設住宅から復興公営住宅へと被災者を移行させていくフェーズに入りました。

住宅支援が進む一方で、これまで気軽に被災者の困りごとを頼めていた社会福祉協議会(社協)などの「災害ボランティアセンター」が閉鎖され、通常の業務に戻りつつあります。相談窓口がなくなったことで、「困ったときにどこに言えばいいか分からない」といった声を聞きます。

実は私も元々社協にいたこともあり、行政の支援にはどうしても「平等性」や「補助金の期限」という前提や制約が存在することを理解しています。しかし現実には、いまだに二次避難を続けている方や、電気・水が通っていない地域で車中泊をせざるを得ない方がいる。そうした被災者が取り残されつつあるのが実態です。

── 公的支援の枠組みから“漏れてしまう”ニーズとは、具体的にどのようなものでしょうか。

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個人宅の引っ越し支援の様子(2026年4月、輪島支援協働センターのInstagramより)

槌谷さん:最近増えているのが、仮設住宅から新居や公営住宅への「引っ越し支援」です。

実は、仮設住宅を退去する際には市から引っ越し費用の補助金として10万円が出ます。しかし、能登にはそもそも引っ越し業者がおらず、金沢などの市外の業者に頼むと20万円以上かかってしまいます。

これでは補助金をオーバーしてしまう上に、高齢の独居世帯などでは自力での作業も難しい。引っ越しできずに困っている方が月に10件ほど相談に来られます。行政は補助金こそ提供しているものの、被災者にとっての現実の環境や、相場と合致していないこともある。そのため結果的に支援から漏れてしまう構造になっています。

また、「一部損壊」の家屋の雨漏り対応なども深刻です。ブルーシートが破れていても修理業者が多忙なため、作業が3年待ちと言われ、諦めたまま住み続けている方がいます。

ほかにも、災害をきっかけに表面化したゴミ屋敷問題や、精神的な疾患を抱えて自ら助けを求められない福祉案件など、行政の網の目から抜け落ちる課題は多様化しています。

POINT:被災地には補助金と現実の環境が合致せず、公的支援の枠から漏れてしまう構造がある

雑談で被災者の本音とニーズを把握する「まずは受け止める窓口」

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訪問支援の記録。地図とともに被災者の困りごとが蓄積される

── そうした行政の網から漏れているニーズを、どのように把握しているのでしょうか。

槌谷さん:被災地では、ニーズを把握するために公民問わず、さまざまな組織から大量のアンケートが配られます。

しかし、市民の皆さんは「アンケート疲れ」を起こしてしまっている。それだと本当のニーズを拾えない可能性があるので、私たちは、こちらから出向く「アウトリーチ(訪問支援)」を重視しています。アンケート用紙を持ってかしこまるのではなく、あくまで雑談をしに行きます。

「あんた、あそこの長男やね」といった田舎ならではの世間話から入り、心を許してもらえれば、「実はまだ屋根裏を片付けられていなくて……」といった、本人も困りごとだと認識していなかったニーズが本音と一緒にこぼれ落ちてきます。

誰にも言えない悩みを、雑談の中から拾い上げ、解決策を提案する。このシステマチック過ぎないアプローチが、公的支援の網から漏れた課題の発見につながっています。

POINT:被災者の悩みを「雑談」から拾う 民間ならではのアプローチで課題発見

── 拾い上げた多くの課題にどう対応しているのでしょう?

槌谷さん:まず電話口では「すぐには断らない」と決めています。例えば、「草刈りをしてほしい」という依頼があったとします。それを電話口で「ボランティアのする仕事ではありません」と突き放すのは簡単ですが、私たちは必ず一度持ち帰り、現地調査を行います。

その上で、「草刈りだけをずっと手伝うのは難しいけれど、草が生えないように防草シートを一緒に貼ることならできますよ」と提案します。ワンクッション挟むことで、被災者の方は突き放された感覚にはなりません。

また、雨漏りなどの緊急性が高い案件は、私が代表を務める技術系のボランティア団体「リガーレ」などにつなぎ、すぐにブルーシートを張るなどの応急処置を行います。ただ、ここでも「屋根を完全に修理するわけではなく、あくまで業者が来るまでの処置にとどめる」という線引きをしています。

御用聞きのように見えるかもしれませんが、「まず、依頼者の困りごとを聞き、受け止める窓口」として機能し、適切な支援へとつないでいくことが、今の輪島には必要です。

もちろん、できないことは社協など適切な機関に繋ぎ、現場のニーズを共有して連携しています。

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困りごとはkintoneに集約され、他団体に共有。その中で、優先順位が付けられていく

── 輪島に拠点を置く、地元密着の団体だからこそできる支援もあるのでしょうか。

槌谷さん:地元密着で一番大きいと思うのは「方言」と「距離感」です。能登の高齢者は、地域の結びつきが強い分、外部の方に少し壁を感じてしまう傾向があります。しかし、地元の人間が行けば、顔や車のナンバーで「重蔵神社(※輪島支援協働センターの活動拠点)のところで活動している兄ちゃんやな」とすぐに認識され、一気に距離が縮まります。

能登は川を一つ挟んだだけで歴史や風土、考え方が全く違う、いわば「合衆国」のような地域性を持っています。だからこそ、「この地区には、あの地区の団体に行ってもらおう」といった、地元民にしか分からない細やかな配慮や調整ができます。

また、支援者の熱意が常に現場のニーズと合致するとは限りません。地震のあとの水害(2024年9月に発生した能登半島豪雨)直後には、全国から使い切れないほどのタオルが届いてしまい、置き場に困ってしまいました。

外部と能登の間に立って調整することが、支援のミスマッチを防ぎ、本当に必要な人へ支援を届けることにつながると思っています。

活動を阻む「ヒト・モノ・カネ」の不足と公的資金の限界

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レンタルしたコンテナを事務所として使用

── 支援活動を継続する上で、どのような障壁がありますか。「ヒト・モノ・カネ」のそれぞれのリアルな苦労を教えてください。

槌谷さん:「ヒト」に関しては、ボランティアとして現場に出てくれる方は多いのですが、現場を指揮するスタッフや事務作業を担う人材が不足しており、特定のスタッフに負担が大きく偏ってしまっています。

現在は専門的な人材を雇って対応しようとしていますが、無償で関わってくれるボランティアの方とのバランスもあり、非常に悩ましい部分です。

「モノ」に関して不足しているのは、移動のための「車」です。輪島は広く、ボランティアの方々がバラバラの現場に向かう場合、バスではなく個別の車が必要になります。例えば50人のボランティアが来るとなれば、膨大な台数の車を用意しなければなりません。

自分たちの車や拠点がないため、すべてレンタルに頼らざるを得ず、結果として最も大きな壁である「カネ」、つまり資金繰りの問題に直結してきます。

── 「カネ」の面での苦労とは、具体的にどのようなものでしょうか。

槌谷さん:まず大きいのが、高額なレンタカー代などの「足代」や活動拠点であるコンテナの維持費です。これだけでかなりのコストがかかってしまいます。

それに加えて支援の首を絞めているのが、「公的な補助金の使途の硬直性」です。

公的な補助金や一部の助成金は、申請時に使途がかなり厳密に制限されています。例えば、「重機を1カ月借りる」という名目で申請して予算が通っても、いざ現場が動くときに「やっぱり重機ではなくクレーンや高所作業車が必要だった」と状況が変わることがあります。

しかし、公的な補助金では用途の変更ができません。結果的に使わない重機に月20万円を払い続けるといった無駄が発生してしまうことがありました。

POINT:公的な補助金は用途変更ができず、状況の変化に対応できないケースがある

── 資金の硬直性によって、実際に支援が遅れてしまったケースはありますか?

槌谷さん:まさに今、困っていることがあります。現在、輪島では学校などの大規模な公費解体が急激に進んでおり、そこを倉庫代わりに使っていた業者さんや漆器屋さんの「荷物の置き場所」がなくなってしまっています。「一時的な仮置き場として、段ボール数箱だけでも置いてほしい」という切実な声が相次ぎました。

そこで、見切り発車でボランティアの方々と一緒に、一時保管用の仮設小屋を作り始めました。しかし、コンパネなどの資材費だけでも数百万円単位のお金が必要になり、現在、資金不足と物資不足で骨組みの状態で作業が中止されています。

こうした突発的な困りごとに即座に対応するためには、今回の支援のような柔軟性を持った寄付がいかに重要かを痛感しているところです。

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仮設小屋は骨組みのまま建築がストップしていた(2026年5月時点)

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災害復興支援特別基金への寄付が支援を支えている

── こうした支援は、現場でどのように生かされていますか。

槌谷さん:日本財団さんからの支援の最大の強みは、まさに臨機応変に対応してもらえることなんです。災害支援は、1年という期間の中でもフェーズが目まぐるしく変わりますが、その変化に合わせて資金の使い道を柔軟に相談できることは、私たちの活動の「心臓部分」を守ってもらっているのと同じです。

また、復興期に入ると、助成金の多くは「街づくり」や「生業(なりわい)の再建」といったテーマに流れやすく、私たちのような、ボランティアと被災者の間に立つ「中間支援組織」の運営自体を支援してくれるところはほとんどありません。

正直、日本財団の支援がなければ、協働センターは現在機能しておらず、自腹で細々とやるしかなかったと思います。

── ここまでのお話を伺うと、現場の機動力の高い活動には、皆さまからの寄付が重要な役割を果たしているように感じます。寄付を原資とする日本財団からの支援には、どのような価値があるのでしょうか。

槌谷さん:寄付してくださった方からすれば、どこに使われているかは見えにくい部分があるかもしれません。

しかし、こうして団体に対して支援をいただける仕組みは、「自分のお金が直接、輪島の被災者を救う力になっている」という、明確な解決策になっています。

私はよく講演などで、「支援者を支援することが大事だ」と言っています。どういうことかというと、資金が尽きれば、どれほど熱意があっても支援者は現場を離れざるを得ない。地元に残り、やるべきことが見えている私たちが動き続けるためには、皆さまからの寄付による後押しが絶対に欠かせないのです。

POINT:資金が尽きれば、現場を離れざるを得ない 支援継続には寄付による後押しが欠かせない

現場で動き続ける「支援者を支援する」ために。災害復興特別基金へのご寄付はこちら

10年超といわれる支援を継続するため、組織を維持する必要がある

── 今後の展望を教えてください。

槌谷さん:被災者の方からは、「ボランティアはいつまでやってくれるの?」と、活動継続への不安の声をよく聞きます。過去の災害を見ても、ボランティアのニーズは10年以上続くことがあります。私たちは「続けられる限りはやります」と伝えていますが、被災者に安心感を与えるためにも、この組織を維持し続ける必要があると思っています。

また、炊き出し訓練や重機講習などを独自に企画し、被災経験を次の災害への「備え」とする防災の取り組みも進めていきます。

私自身も被災し、自宅は傾き、水害で床上浸水も経験しました。「いいことをやっているね」と言われることもありますが、私としては、ただ目の前にある問題を解決する方法を探し続け、その延長線上で動き続けているだけなんです。現場を全部見てしまっているからこそ、私が動きを止めるわけにはいかないんです。

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災害時の炊き出しに役立つ知識やスキルを学ぶ「炊き出し教室」を実施(2025年12月、輪島支援協働センターのInstagramより)

── 最後に復興に貢献したいと考えている方へのメッセージをお願いします。

槌谷さん:被災地支援というと重く捉えられがちですが、私たちはここで普通に生活しています。ですから、気楽な気持ちで私たちの生活を応援していただければうれしいです。

飛行機に乗れば東京から1時間で来られます。ぜひ一度輪島に遊びに来て、おいしい魚を食べ、まだ瓦礫が残る街のリアルを感じて、「また来ようかな」と思っていただけたら、それが一番の支援になると思っています。


日本財団では、皆さまからお預かりしたご寄付を最大限に活用し、これからも被災地の復興支援に取り組んでまいります。引き続き、災害復興特別基金への皆さまからの温かいご支援を心よりお願い申し上げます。