日本財団職員による現地レポート:令和8年熊本地震支援(10月13日)

令和8年熊本地震の発災後、多くの方々が避難所や車中などでの避難生活を余儀なくされました。

慣れない場所、大勢の人の声、明るい照明、さまざまなにおい――。日常とは異なる環境の中で、特に「感覚過敏」などの特性がある方にとっては、周囲には見えにくい大きな負担が生じることがあります。今回は、こうした一人ひとりの特性に目を向け、発達障害のある方が少しでも安心して避難生活を送れるよう支える取り組みをご紹介します。

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発達障害者支援センターへ『発達障害のある人の災害時サポート手帳』のお渡し(写真提供:NPO法人凸凹ライフデザイン)

同じ避難所でも、「感じているつらさ」は一人ひとり違う

発達障害がある方の中には「感覚過敏」と呼ばれる特性を持つ方がいます。音・光・においなどの刺激を人より強く感じ、時には大きな苦痛につながる事があります。避難所や車中など、普段とは異なる環境で長い時間を過ごすことによる心身へのストレスは、こうした特性による困難をさらに大きくすることがあります。一方、「感覚」は他の人と比較することが難しく、発達特性や障害がある方の中には「皆も同じようにきついのだろう」と考え、自身の困りごとを伝えられずに我慢してしまう方もいます。

「自分は何に困っているのか」を伝えるための手帳

こうした課題に対し、発達障害の当事者団体であるNPO法人・凸凹ライフデザインでは、今回の地震を受け、『発達障害のある人の災害時サポート手帳』を作成しました。

この手帳は、被災した方が自身の障害特性や困りごとを客観的に整理するとともに、必要な際に周囲へ配慮を求めるためのサポートツールとして活用することができます。

当事者だけでなく、他の避難者や避難所の運営者などにも、郵送や支援団体を通じて届けることで、発達特性や障害への理解を促す取り組みも進めています。。

また、耳栓やサングラスなど、感覚過敏による負担を和らげるためのグッズに加え、柔らかい素材のタオルや感覚過敏がある方でも食べやすい食品など、一人ひとりの感覚特性に配慮した物資を、当事者の希望を聞きながら現地に届けています。

画像:発達障害のある人の災害時サポート手帳表紙
「発達障害のある人の災害時サポート手帳」表紙

「必要なもの」は、一人ひとり違う

支援を受けた当事者の方からは、こんな声が寄せられました。

「水が不要なドライシャンプーを例にとっても、スプレータイプやシートタイプ、敏感肌に対応したものとそうでないもの、香料の有無など、色々な種類があり、自分に合ったものを選んでいます。私たちは災害時だけではなく、体調の波によっては普段から入浴が難しい日もあります。いただいたものは平時から使うことができ、ありがたいです」

「ドライシャンプー」という一つの物資であっても、すべての人に同じものが適しているとは限りません。

被災地に物資を届けることに加えて、「その人が何に困り、何を必要としているのか」に耳を傾け、一人ひとりに合った支援を届けることの大切さが、この声からも見えてきます。

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熊本の発達障害当事者団体へ『発達障害のある人の災害時サポート手帳』お渡し(写真提供:NPO法人凸凹ライフデザイン)
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支援物資(耳栓)と『手帳』のお渡し(写真提供:NPO法人凸凹ライフデザイン)

今回の支援を、次の災害への「備え」に

当事者からは今後、発達障害がある人もない人も一緒になって、災害時に活用できる感覚特性に配慮したグッズを紹介し合う機会をつくることで、お互いへの理解を深められるのではないか、といったアイデアも寄せられています。

被災によって困難な状況に置かれる中でも、今回の支援を通じて生まれたつながりから、「将来起こりうる災害に向けて、みんなで備えていこう」という前向きな動きも生まれています。

災害時に必要とされる支援は、食料や水、住まいだけではありません。置かれている状況や特性によって、困りごとも、必要な支援も一人ひとり異なります。

日本財団では、皆さまからお預かりしたご寄付を活用し、現場で活動するNPO・ボランティア団体等と連携しながら、こうした外からは見えにくいニーズにも目を向け、被災された方々に必要な支援を届けています。

一人でも多くの方が安心した生活を取り戻せるよう、引き続き皆さまの温かいご支援を心よりお願い申し上げます。