被災した「地元」を支援するために道内で活動する団体

写真:中央に「がんばろう厚真」と書かれた、応援メッセージの寄せ書き

平成30年北海道胆振東部地震は被災地に大きな被害をもたらしました。そんな被災地を復旧・復興するために、北海道内ではさまざまな支援団体が活動しています。平時から北海道を拠点に活動する、NPO法人ホップ障害者地域生活支援センターや一般社団法人WellbeDesignも地元を復旧・復興するために支援活動を続けています。

災害時に福祉サービスを事業継続させる重要性

「知的障がいや発達障がいを持つ子どもたちが、地震による避難生活で行き場所をなくしていました。そのために、避難所の教室を1つお借りして、障がいを持つ子ども向けの支援活動を行いました」
NPO法人ホップ障害者地域生活支援センターの代表理事を務める竹田保さんが支援活動の内容について説明してくれました。

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被災地での支援活動について説明をする竹田さん

知的障がいや発達障がいを持つ子どもたちは、避難所で生活をすると、情緒面や行動面で不安定になることがあります。それにより、家族が他の避難者に気兼ねしてしまう、家族が子どもを置いて家の片付けや仕事に行くことができないなどの問題が発生しています。
NPO法人ホップ障害者地域生活支援センターでは、平時から北海道で障がい者の生活支援を行っていますが、厚真町役場保健師から障がいのある子どもたちが避難所で過ごす場所がなくて困っていると相談を受けました。そこで相談を受けた翌日から職員を避難所の厚真中央小学校に派遣し、ミニ児童デイサービスを開設しました。
避難所になっている学校の先生は、避難所運営や学校再開に向けた準備などで手一杯なので、福祉サービスなど対応が難しい部分についてはNPOとの連携も必要ではないかとのことでした。

「福祉サービスはもともと災害に弱いという側面があります。災害になると事業所が閉鎖されて職員も集まらなくなることが多いので、被災と同時に必要な福祉サービスが受けられなくなることが今までの災害でもよくありました。福祉サービスを災害時にどう継続させるのかについて、今後社会でもっと考えていく必要があると思います。今回の災害で困っている被災者を支援することで、その必要性をみんなに知っていただきたいと思っています」
竹田さんが災害時に福祉サービスを事業継続させる重要性について説明してくれました。

ボランティアセンターでは対応できない家財搬出や瓦礫撤去も行う

NPO法人ホップ障害者地域生活支援センターは障がいを持つ子どもへの支援以外にも、被災した家屋からの家財・貴重品の搬出や、重機を使用した瓦礫の撤去などの活動も行なっています。

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家財搬出や瓦礫撤去の活動について説明する猿倉さん

「土砂で埋まった自宅の仏壇から遺灰を取り出したいという依頼や、農機具を取り出して欲しいという依頼が多いです」
NPO法人ホップ障害者地域生活支援センターの猿倉正治さんが活動内容について説明してくれました。
今回の地震により広範囲で土砂災害が発生し、多くの家屋が土砂の下敷きになりました。土砂災害によって押し流された倒木も土砂に混じっているために現場は足場も悪く、社協から派遣されるボランティアの支援活動には限界がありました。そのため、猿倉さんのような専門の知識を持った「技術系プロボノ」がユンボなどの重機を活用して、下敷きになった家屋から家財や貴重品を取り出すニーズが被災地では生まれています。
「少しでも早く家主の方に家財や貴重品をお渡しできればと思っています」
猿倉さんが意気込みを語ってくれました。

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多くの家屋が土砂や倒木の下敷きとなっており技術系プロボノが必要になっている

2年後の生活を見据えた被災者支援を行う

被災した地元の北海道を復旧・復興しようと他にもさまざま団体が活動しています。一般社団法人WellbeDesignもそんな支援団体の一つであり、大きなストレスを抱えている被災者に少しでもリラックスしてもらおうと足湯を提供して回っています。

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足湯の支援活動を行う意義について説明する篠原さん

「避難所で生活をしているとなかなか体を動かすことができないので、足湯で体をほぐしながら会話をして、被災者の方にリラックスしてもらおうと活動しております」
WellbeDesignの理事長を務める篠原辰二さんが支援内容を説明してくれました。
避難所では被災者の健康問題が課題になることがありますが、足湯には血行を促進させ健康維持する効果があります。また、足湯をしながら被災者の方と会話をすることで、心のケアや生活相談にもつながっているとのことでした。

「黙って手を揉んでいると被災者の方から話しかけてくれることもあるのですが、今後の不安を語る方が多いです。特に避難所から別の場所へ出て行く人が増えると、避難所に取り残された被災者の方は一層不安を感じるようです。足湯そのものをやることが重要なのではなくて、足湯をやると呼びかけて、忘れていない、取り残されていないと思ってもらうことが大切です」
篠原さんが足湯の支援活動を行う意義について説明してくれました。

「被災者への関わりは災害のフェーズによって変わってきます。被災者の方は避難所から仮設住宅へ移っていますが、その人たちが仮設住宅から出なければならない2年後も見据えながらどう寄り添うのかを考える必要があります。いま足湯に関わっておくことで個々の被災者とつながりを持つことができ、仮設住宅に入った後でも継続的に関わることができます。足湯で信頼関係を築くことは、2年後の関係を作る上でも効果的です」
篠原さんが更に説明してくれました。

被災者がなんとなく感じている不便は、行政に相談するよりも、NPOに相談する方が話しやすいという側面があるそうです。行政単体でも、NPO単体でも、社会福祉協議会単体でも、災害対応は成り立ちません。それらをうまくつなげることが、WellbeDesignの役割とのことでした。

日本財団は、NPO法人ホップ障害者地域生活支援センターや一般社団法人WellbeDesignなど被災地で活動する団体へ支援させていただいております。支援を通して、被災地の一刻も早い復旧・復興につながればと考えております。

取材・文:井上 徹太郎(株式会社サイエンスクラフト) 写真:和田 剛