被災地の住民から不満を聞き出してニーズに合った支援を行う

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断水中のこども園で炊き出しをする様子

平成30年北海道胆振東部地震は、北海道各地に大きな被害をもたらしましたが、被災地を支援するために、北海道内及び北海道外から様々な団体が駆けつけ、支援活動を行っています。北海道を拠点に活動を行っている『一般社団法人いっぽん』もそんな支援団体の一つであり、被災地のニーズを的確に把握することで、本当に必要とされている支援を行おうとしています。

被災地で必要とされていることを見極めながら対応していく

「発災してから数日間は、断水した家庭への水の配達、停電した家庭へのモバイルバッテリーの貸し出しなどを行いました。その後はSNSで割り箸や食べ物容器などの支援物資の提供を呼びかけて、集まった物資をむかわ町役場と追分こども園へ配送しました」。いっぽん代表の佐久間さんが災害発生から数日の間に行った活動内容について説明してくれました。

支援物資とスタッフの写真
SNSで支援物資の提供を呼びかけて、集まった物資をむかわ町役場と追分こども園へ配送した

佐久間さんは、東日本大震災のときから被災地支援に携わっており、“1本の箸でも被災地に届けられる団体にしたい”という想いから、『いっぽん』という名前の支援団体を設立しました。今回の地震では、支援が行き渡っていない安平町とむかわ町中心に支援活動を行いました。
SNSで支援物資の提供を呼びかけた際には、割り箸9,810本、スプーン2,020本、容器1,350個が集まり、炊き出し用の容器や割り箸を必要としていた被災地に届けました。
いっぽんでは、支援活動の内容を特定のものに絞ることなく、生活必需品の提供、炊き出しに必要になる物資提供、炊き出しの実施など、被災地の状況を見ながら、必要とされている支援を臨機応変に行ってきました。

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被災地で行ってきた支援について説明する佐久間さん

この他にも、震災から1カ月が経って少し落ち着きを取り戻した10月には札幌でチャリティーライブを開催し、被災地の野菜やお米を食べて復興応援をするための活動も行ったところ、今まではアプローチできていなかった層にもアプローチをすることができ、被災地の状況に関心を持ってもらうことができたそうです。

被災地住民の不安な心に寄り添うことでニーズを探る

いっぽんでは、9月から12月まで追分法養寺、安平役場、安平町ボランティアセンター、むかわ町稲別支所で癒しのマッサージも継続的に行っています。マッサージを行うことで、運動不足になりがちな被災者の健康状態を改善させることができます。また、健康への配慮だけではなく、マッサージを通して、被災者の心の声を聞くこともできるそうです。

写真:追分法養寺で、マッサージを通じて被災者の心のケアを行うボランティアたち
マッサージを通して、被災者が抱える不安やニーズを聞き取ることができる

「10月5日に最大震度5弱、2月21日に最大震度6弱の余震がありましたが、余震の影響で本震後に一度修理した家屋がまた壊れ、心理的に辛い思いをしている方も多かったようです。住民の中には、余震による恐怖からお風呂に入る際に湯船に浸かることができず、シャワーもゆっくり浴びることができないという声も聞きます」

「マッサージを行う中で、不安を抱える住民の方から不満を聞くことも多く、その声を拾っていくことで、ニーズに合致した支援を行うことができます」と、被災者の抱える不安やマッサージの支援を行う意義についても語ってくれました。 被災地で必要とされていることを把握するために、いっぽんではマッサージ以外にも、4月以降に被災者への聞き取りを安平町全域で行い、在宅避難も含めて約8,000人に困りごとがないかを聞き取ることで、被災者が必要としているニーズを把握すると同時に、少しでも被災者の声を聞いてストレスを減らしていきたいとのことでした。

北海道民の自分たちで支援できる体制を作っていく必要がある

現在いっぽんのメンバーは4人。マッサージ師やアーティストなど、それぞれが専門性を持って活動しています。東日本大震災で支援を行った際に知り合ったメンバーも多く、過去の災害から活動が今の活動につながっています。
「北海道以外からも被災地には支援団体が来ていますが、外部からの支援団体による長期的な支援には限界があります。そのため、 これからは北海道内で自分たちが支援できるような体制を作っていく必要があると思っています」と、今後の抱負を語ってくれました。

日本財団では、『いっぽん』をはじめとした被災地で活動する団体を、NPO・ボランティア活動支援を通じて支援しています。被災地で活動する団体を支援することで、被災地の復旧・復興に貢献できればと考えています。

取材・文:井上 徹太郎(株式会社サイエンスクラフト) 写真:和田 剛