【現地レポート】栃木県、豪雨で車水没 カーシェアで足を確保

台風19号による記録的豪雨に伴い、栃木県内では栃木市の永野川や鹿沼市の思川(おもいがわ)など県が管理する13河川の堤防26カ所が決壊しました。14市町に大雨特別警報が出され、総務省消防庁のまとめでは、鹿沼市などで計4人が亡くなりました。

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鹿沼市上粕尾地区で土砂崩れが起きた現場では、道路が寸断されていました(機動パトロール隊提供)

鹿沼市を中心に被災家屋の畳や床をはがしたり、土砂を撤去したりするボランティアに取り組む「機動パトロール隊」の茂木和樹代表(24)は「鹿沼市は6年前も水害に見舞われました。前回は被害の中心が市街地でしたが、今回はその範囲が山間部まで広がりました」と説明します。

写真:鹿沼市内で裏山が崩れ、家屋に土砂が流れ込んでいる様子(機動パトロール隊提供)
鹿沼市内では裏山が崩れ、家屋に土砂が流れ込みました(機動パトロール隊提供)

2月の時点では、家屋に流れ込んだ土砂はほぼ片付いたそうです。ただ、重機を使って側溝や用水路から土砂を取り除く応急的な復旧作業は続いていました。

被災者に無料で貸し出し

台風19号では、多くの車が水没し、生活の足を失った被災者が相次ぎました。車の買い取り会社は10万台が水害に遭ったと見積もっています。特に生活に車が欠かせない地域では大きな問題となりました。

そこで、一般社団法人日本カーシェアリング協会(宮城県石巻市)は代わりの「足」を届ける活動に取り組んでいます。使わなくなった車の寄贈を受けて、それを被災者らに無料で貸し出すシステムです。

12月、栃木市では市の施設の一角に窓口を開設しました。県内全域の被災者に対して、乗用車は1カ月、軽トラックは無料で1日単位の貸し出しができる態勢を整えました。今年1月15日までの集計では、栃木や宮城などで152件の貸し出しがありました。

協会の西條里美さんは「台風の影響で、石巻の協会事務所も被災しましたが、何とか立て直し、貸し出しができるようになりました」と振り返ります。愛車として長年使っていた車を寄贈する人もおり、「その気持ちを大事にしたい」と話します。

写真:豪雨で浸水被害が起きた宮城県石巻市の様子
宮城県石巻市での被災の様子(2019年10月13日、日本カーシェアリング協会提供)

「災害が起きた後、迅速に自治体と連携して拠点を作り、運営するスタッフを確保するには課題もありますが、感謝の手紙が届くと支援が届いていることが実感できます」と西條さん。「通勤や買い物で困っていたところ、借りることができて助かった」「車がないと病院にも行けませんでした、感謝します」などのメッセージが被災者から届くこともあり、やりがいを感じています。今後も協会では活動を続けていきます。

写真:事務所の前で浸水した備品などを並べる協会職員
石巻市内の日本カーシェアリング協会事務所(2019年10月13日、協会提供)

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