2020年度第1回交流会
初めてのオンライン意見交換

写真:オンライン交流会の様子。画面に、「出会い」と「日本財団」が教えてくれたこと。「すごい!」と感動できる心、「うれしい!」と感激できる心、「ありがとう!」と感謝できる心、の文字。

夢の奨学金の2020年度第1回交流会が6月6日、インターネットの会議システムを使って行われました。オンラインでの開催は初めての試みでしたが、全国から奨学生ら約30人が参加し、3時間にわたって意見交換しました。また、今回は奨学金プログラムから巣立った卒業生も初めて加わり、自身の経験を発表したり、後輩からの質問に積極的に答えたりしました。

交流会は例年、東京などの集まりやすい都市で、奨学生の有志が企画実施してきました。しかし、この春は新型コロナウィルス感染への心配がいまだ払しょくされていないことから、実際に集まる形での交流会を断念。事務局職員がオンラインで交流会を“ホスト”し、奨学生はそれぞれ自宅からスマートフォンなどを使って参加する形に切り替えて実現しました。

夢の奨学金の行事は昨年度も、新型コロナウィルス感染拡大の影響で、奨学生がその一年を振り返って発表する「活動報告会」などが中止となりました。そのため、奨学生にとって仲間と集まる機会は昨年12月の交流会以来、半年ぶりです。奨学生や卒業生は、モニター越しにそれぞれの顔を見つけると、名前を呼び合い、笑顔で手を振っていました。

オンライン交流会は午後1時から始まりました。冒頭、日本財団の前田晃・専務理事があいさつし、コロナ禍で社会が大きな影響を受け、実際に集まる交流会も実施できない状況が続いていることに触れ、「(奨学生同士、また財団が)つながっているんだということを、こういう方法で実感いただいて、相談できる人が存在しているんだという気持ちを持っていただけたらと思います」と話しました。

年度初めの交流会で恒例となっている、奨学生の伴走者・ソーシャルワーカーの方の紹介もありました。初年度から担当している荒井和樹さん、その後に加わったアフターケア相談所「ゆずりは」さんのほかに、今年度は、大阪児童福祉事業協会アフターケア事業部さんが新たに伴走してくださることを事務局職員がアナウンスしました。

続いて、一人ひとりによる近況報告です。学校が休校になってオンライン授業を受けていたり、実習ができずに不安が募っていたり、アルバイト先の業績が悪くシフトを入れられずに困っていたりと、新型コロナウィルスの影響が広く聞かれました。一方で、青森県の奨学生からは「普通に学校に行っている」などの報告があり、地域によって異なる状況も垣間見られました。

中盤は、複数の卒業生による発表がありました。始めに話をした卒業生は、高卒で2年間社会人を経験した後に進学し、1年間、夢の奨学金を得ました。夢はカフェとアパレルの併設店を持つことで、そのために学校で経営などを学びながら、関連の3つのアルバイトを続けたこと、卒業後の5月からカナダに留学を予定していたものの、コロナ禍で出発できずにいることなどを語りました。

「カナダ留学の目的は?」との質問に、「語学ですが、そのまま現地のカフェで働けたらと思っています。将来の夢は、海外でカフェをやること。コロナで大変そうですが、収束すれば行きたい」と力強く返答しました。また、奨学生へのメッセージとして、「(自分は奨学生の)メンバーから刺激をもらい、勉強にもなった。将来的に仕事の人脈にもなるいい場所だと思う。卒業しても交流をもっと深めていったらいいのでは」と話していました。

次に発表した卒業生は、2歳から社会的養護の下で育ち、高校卒業と同時に保育の専門学校に進学、この春、児童養護施設の職員になったばかりです。あるテレビ番組にヒントを得て、自分の“しくじり”をまとめたスライドを示しながら話しました。

施設の職員さんの励ましを受け、小学校のころにサッカーに打ち込み、有名チームからスカウトされたものの、「自分に自信が持てずに」夢をあきらめたこと。進学についても、収入の面でリスクの高いサッカーを続けるか、自分が好きな子どもと関わる手堅い保育の仕事に就くかの迷いが残ったままだったこと。夢の奨学金の応募には1度失敗したが、その原因はまさにその進学の迷いであったと気付いたこと、など一見重いテーマを、軽やかに語りました。

また、「奨学生になって自分のための時間ができ、いろいろ挑戦できるようになった」として、専門学校になかったフットサルサークルを一から作り、40~50人が参加する集まりにまで育てたことなどを紹介。「出会いや人に対する感謝があります。僕は施設出身ですが、モデル的な職員さんに出会えた。彼を超えたい。僕の新たな夢は、子どもの夢を応援するという夢です」と胸を張って話しました。

続いて発表した卒業生もこの春から、児童養護施設の職員になりました。今回参加した卒業生のうち唯一の1期生です。「奨学金に助けてもらいました。勉強だけでなく遊びもやって。奨学生のみんなは素敵、大好きです」。現在の仕事については、「慣れない中、思うようにできないこともあり葛藤もある」と悩みを語る場面もありましたが、「子どもたちとの関わりは本当に楽しい」と話しました。

写真
笑顔で近況を報告する卒業生

そこで、ある奨学生から質問がありました。「施設出身者には社会からの偏見がある。みんな施設に入りたくない。自分は基本的に施設出身であることを誰にも話さずに来た。施設を出てしまえば、誰にもわからないし、言わなければバレない。それなのに、元に戻ってそこに就職したのはなぜ」との問いです。

これに対し、彼女は「私は入りたくて入った。中三から入ったんですが、その前から入るべき状態だったんです」と前置きしたうえで、質問については「無償の愛に触れて、自分の心の傷がいえたからではないかな」などと答えました。

最後に発表した卒業生はこの春、国家試験に合格し看護師になりました。地方の学校から都内の大学病院に就職。始めの1カ月間に配属されたのは「コロナ病棟」で、厳しい先輩の指導を受けながら毎日奮闘しています。今回の交流会の参加も夜勤明けでした。

「私はこの奨学金に人生を救ってもらえました。ずっとグレていて、人の道に外れたんですが、もう一回ちゃんと生きたいなと思って奨学金に申し込みました」と話し始めました。「お金をもらったから、何も心配しないでいいからこそ、普通に友だちとかと関われて、普通に幸せを実感できました」

奨学生同士の励まし合いにも触れ、「私は『学校を辞めたい』が口癖で。でも奨学金で出会った仲間が話を聞いてくれて頑張れました」と言い、また「知らない誰かが私たちを応援してくださっているから」と奨学金の背後にいる寄付者の厚意を胸に刻んでいたと明かしました。

後輩へのメッセージとして「奨学金の仲間は、(過去を)隠すことをしなくてもいい関係。事務局の職員の方にもお世話になった。皆さんも、頼れる存在を見つけられたらいいと思います」と締めくくりました。

交流会の後半は、グループに分かれてディスカッションを行いました。初参加の5期生からは、「奨学生間の仲の良さにびっくり」「うらやましい」「早く私たちもそんな関係に加わりたい」などの声が聞かれました。また、複数の奨学生から「実際に会う交流会が早くやりたい」という要望なども寄せられました。

横のつながりを改めて強く感じたオンライン交流会。それと同時に、仲間、奨学生の伴走者であるソーシャルワーカーの方々、寄付者の方々への感謝の言葉も多く聞かれたことも印象的でした。奨学生や卒業生には、多くの人々とつながっていて一人ではないと感じてもらえていたらいいなと思います。

日本財団 公益事業部 国内事業開発チーム 桂 詩央里

寄付の状況 2020年10月末現在
2億4,344万5,857円
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