“オール佐賀”の官民連携でウクライナ避難民に居場所を

写真:写真左に岩永清邦さん。画面左上に「人との繋がりで難題を解決に向けて進む」、画面左下に「認定NPO法人 地球市民の会 事務局長 岩永清邦」の文字。写真右に山路健造さん。画面右上に「あらゆる避難民に関心を持ち続けてください」、画面右下に「認定NPO法人 地球市民の会 国内事業担当 山路健造」の文字。

2022年2月からはじまったロシア軍の侵攻により、ウクライナには国外への避難を希望する人々がいます。日本財団でも、ウクライナ避難民を日本に受け入れるために尽力する非営利団体への助成プログラムのほか、新たにウクライナ避難民支援基金を設立するなどして、支援活動を行っています。

認定NPO法人 地球市民の会と公益財団法人 佐賀県国際交流協会は、日本財団の助成プログラムに採択されて、佐賀県でウクライナ避難民の受け入れや生活支援を行っています。これから全2回にわたり、佐賀県におけるウクライナ避難民受け入れと日本での生活の現状をご紹介します。初回は地球市民の会の岩永清邦さん・山路健造さんから、ウクライナ避難民の受け入れまでのお話を中心に伺いました。

ウクライナ避難民のため「私たちにできることがあるんじゃないか」

「避難を希望されている方と面談をしていると、その最中に空襲警報が鳴って通信が途切れてしまうこともあります。ミサイルが飛んでくるところを目撃したとか、戦闘機が家の上を飛んでいる、とかいうお話も聞きますね」(山路さん)

佐賀県への避難を希望するウクライナの方との面談でその窮状を聞くことも多いという、地球市民の会の山路さん。佐賀県佐賀市に拠点を置く地球市民の会では、ウクライナ避難民の受け入れに際して、応募者とのオンライン面談のほか、来日のためのビザ取得、他にも、来日のための航空券手配や避難民との交流イベントなど、入国前からさまざまなサポートを行っています。

地球市民の会は1983年に設立された、地域づくりをテーマに国内外で活動する団体です。国外ではミャンマー、タイ、スリランカでの教育・農業支援、国内では中山間地での地域おこしや子ども居場所づくり、災害支援など、さまざまな活動をしています。

そんな地球市民の会がウクライナ避難民支援の意向を表明したのは、ウクライナへの侵攻がはじまってから間もない頃でした。

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国内事業担当 山路健造さん

「2月24日にウクライナへの侵攻がはじまり、3月2日に岸田首相が避難民の受け入れを表明しました。世界中の人を幸せにするのが地球市民の会の使命だと思っているので、私たちにも何かできることがあるんじゃないか、と。地球市民の会としても3月3日に声明を発表しました。
そうしているうちに3月9日に佐賀県と佐賀市も避難民の受け入れを表明したんです。そこで、県や市と一緒になって進める方向が固まりました」(山路さん)

官民連携の佐賀モデルとは?

佐賀県でのウクライナ避難民の受け入れ支援プログラムは、特定の団体が単独で行っているものではありません。佐賀県、市町、CSO(Civil Society Organizations:市民社会組織)が連携して、「SAGA Ukeire Network 〜ウクライナひまわりプロジェクト〜」としてワンストップで行っています。「この官民連携モデルは佐賀県ならでは」と、地球市民の会の岩永さんは語ります。

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事務局長 岩永清邦さん

「今回のウクライナ避難民支援もそうですが、県と市と多数のCSOが一体感を持って活動できるのは佐賀県特有のものです。実はこれには背景があって、6~7年前に佐賀県がふるさと納税を使ってCSO団体を誘致したんです。県民1,000人当たりのCSOの数が日本一になったこともあったそうです。
そういった経緯もあって、そもそも地球市民の会も他の団体と協調しようと連絡を取り合っていましたし、県や市に共同でのプラットフォームを提案するときも、非常にスムーズでした」(岩永さん)

総動員がなくなったら、日本で一緒に暮らしたい

「SAGA Ukeire Network 〜ウクライナひまわりプロジェクト〜」では、4月15日以降、8組15名(2022年8月1日時点)のウクライナ避難民の受け入れを行いました。

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佐賀空港到着時の様子

地球市民の会は、「SAGA Ukeire Network」の運営に携わりながら、ウクライナ語での募集要項の作成やオンラインでの面談も担当しています。

「これまで3回ほど、期間を定めてGoogleフォームなどを活用して募集したところ、40組弱が応募してくださいました。佐賀県では、家族での避難を検討している方を優先にして、日本にまったく身寄りがない方も含めて受け入れるように動いています。
面談をしていると、毎日空襲警報が鳴って眠れないから、静かな佐賀県を希望されているという方もいらっしゃいました。あとはやっぱり、ウクライナでは仕事を続けられなかったり、子どもが学校に通えなかったりで、落ち着いた生活をしたいという方もすごく多いです。日本で落ち着いた生活を送りたい、と」(山路さん)

面談が終わって、佐賀県への避難が決まった後は、飛行機のチケットの手配やビザの申請。入国してからも生活の支援など、避難民の皆さんへのサポートは続きます。山路さんは佐賀県へ避難してきたウクライナ難民の方と会話をする機会も多いそうです。

「私は入国前からずっと避難民の方とやりとりをしているので、日本に来てからもプライベートで一緒に飲みに行くことなんかもあります。本当に性格の明るい方が多いんですけど、現地の話になると、暗い表情をされることがありますね。ウクライナ男性は18~60歳まで徴兵されているので、皆さんウクライナに家族を残してきているんです。本当は一緒に来たかった、総動員がなくなったら一緒に佐賀で暮らしたい、なんて話をされる方もいます」(山路さん)

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ウクライナ避難民とSAGA Ukeire Networkのメンバー

いまだに届くウクライナで困っている人たちの声

佐賀県のウクライナ避難民の受け入れ支援プログラムは最大30組を予定しています。日本財団からの助成金の他にも、クラウドファンディングや他の支援金・義援金などを活用しながら、受け入れのための事業の運営や避難民の生活支援を行っています。

「(地球市民の会で)地球市民ファンドを立ち上げて、今も寄付を集めていますが、ウクライナへの侵攻がはじまった当初よりも世間の関心が薄れているのを感じています。でもいまだに私たちのもとには困っている方々の声が届いていますし、私たちも1人でも多く受け入れたいです。是非、皆さんにはウクライナ避難民支援への関心を持ち続けていただければと思います」(山路さん)

「困っている人がいたときに手を差し伸べる。これが佐賀県民であり、日本人の大切な美徳だと思います。今、私たちは佐賀県でウクライナ避難民支援を行っていますが、我々に限らず、世の中にはウクライナ避難民を支援するためのさまざまな機関があります。もしも、ウクライナの人のためにという意識がある方がいれば、ぜひそういった機関にご支援いただければと思います」(岩永さん)

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日本財団の助成金を活用して作成した受け入れ用の横断幕を手に

日本で生きていくという選択肢を、ウクライナの人々へ。

日本財団では、ウクライナ避難民支援を行う各団体への助成プログラムのほか、これまで独自でウクライナ避難民支援も行い、合計1,034名(2022年7月27日時点)に渡航費・生活費・住環境整備費支援を行ってきました。

また、日本に避難してきたウクライナの人々へさらなる支援を行うため、ウクライナ避難民支援基金を開設しています。いただいたご寄付はウクライナ避難民の皆さんが安心して生活を送り、地域に溶け込むことができるように、日本語学習の支援、生活相談窓口、物資の配布、地域イベントでの交流などに使われる予定です。