難病児のお母さんがやすらげる居場所一般社団法人キッズラバルカ

産前産後の心身のケアをする場が必要

愛知県みよし市に平屋一戸建ての子育てケアステーション「Mom House」があります。実家に戻ってきたような温かな雰囲気のこの場所では、お母さんが赤ちゃんと一緒に気軽に訪れてお茶を飲み、悩みを相談したりお喋りをしたり、愚痴をこぼしたり…と、気ままに過ごすことができます。

ここを運営する一般社団法人キッズラバルカは2016年の設立から小児専門の訪問看護事業と相談支援事業を行い、先駆的な医療福祉分野のパイオニアとして注目を集めてきました。

Mom Houseは、キッズラバルカが新たに設立した、相談支援、子育て世代交流、産後ケア事業などを行う多機能型の新拠点。医療的ケアの必要な子どもや重度の障害がある子どもを持つ家族が自由に来所することができます。

ここでは医療的ケア児や重度の障害のある子どもを育てる家族や、多胎や養育の支援が必要な家族など、子育てに困難を抱える家庭が社会から孤立しないためのさまざまな支援を行っています。

2022年6月の開所式には130人以上が参加して、期待の高さを感じさせました。キッズラバルカの訪問看護を利用している人だけでなく、かつて利用していた親子も訪れたこの開所式を通じて、訪問看護を卒業した後もそれぞれに悩みがあり、そうした話をするきっかけにもなったと言います。

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子育てケアステーション「Mom House」

誰もとりこぼされない子育てを

Mom House管理者の近藤綾子さんは助産師として産婦人科病棟勤務を経て訪問看護に携わる中で、難病の子どもをもつお母さんたちが苦労する姿をみてきました。

「病気や障害がある子の母親に、病名がはっきりするまでの間、なんとなく元気がない、ミルクをあまり飲まないなどの悩みをどこにも相談できなかった、助産師さんにもっと話を聞いてもらいたかったと言われたことがありました。お母さんの不安を受け入れる場所がどこにもなく、子どものためだけに存在し生きているかのようだったという声も。私自身も高度な医療で命を助けられた子どもたちが退院した後は、その後の生活を支えるサービスがもっと充実していると思っていたのですが、医療的ケアがあるとお母さんたちのケアは後回し。特に産後1年はどこにも預けることができずに孤立しているお母さんたちの実情に驚きました」。

産後の身体で病院の付き添いをして、硬い簡易ベッドで休み、在宅ケアの技術を習得。子どもが退院した後は終わりのない介護の日々。障害福祉課では障害がはっきりしないと対応してもらえず、また保健センターでは障害があると、障害福祉課に行ってくださいと、たらい回しになります。既存の制度では子どもの状態で振り分けられて、制度からこぼれてしまう人が多いのです。

「今の支援体制では、親は一人の女性として大切にケアされ、自分の人生を生きることが難しいと感じました。そんな状況を何とかできないか、お母さんたちがいつでも来られて、子どもと一緒にやすらげる場所を作りたいと、日本財団の助成金を申請しました。この新しい取り組みが全国に広がっていけば」と近藤さん。

Mom Houseには居室が2つ、リビング、風呂、キッチンがあります。誰もが気軽に来て話や相談ができ、必要に応じて行政や福祉サービスにもつなげます。産後ケアの支援では医療的ケアや難病の子どもだけでなく、健常の子どもでも、生後1歳までの子どもを持つご家庭の親子が入所して育児の練習や休息をとることができます。

今後は医療的ケアのある子を育てた先輩ママや、双子や三つ子を育てた経験者や産後うつを乗り越えた人など体験者の参加を募り、ピアサポートの体制も整えたいと考えています。また、親子の宿泊にも対応していく予定です。

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開所式に訪れた親子。左手にセンサーを付けてパソコンを操作し、デジタルアートのリハビリを初体験

ゆっくりみんなで育てていく

デジタルアートを使って子どものリハビリをする「デジリハ」の体験会を行ったところ大好評。壁に映し出されたクジラに子どもたちはみんな手を一所懸命に伸ばして夢中になって遊んでいました。こうして自然に体の可能性が引き出されていきます。

「障害のあるなしに関わらず、参加した子どもたちみんなが一緒に遊んでいました。子どもにとっては障害があるかないかは関係ないですよね。Mom Houseをみんなが共に過ごせるインクルーシブな場所にできたらと考えています。今回別の事業所からも参加者がいて、横のつながりも生まれました。こんな交流を続けて、地域の拠点にできたら」。

「子どもの状態がどうであれ、普通にお母さんとして、一人の女性として楽しめる時間を大切にしていきたい、ゆっくり時間をかけて共に子どもを育てていきたい」と近藤さんは言います。

Mom Houseでは、イベントを企画するというよりは、自然発生的にお母さんたちがランチ会を開いたり、お泊り会を企画できるような環境にできたらと考えています。

医療的ケアのある子どもの家族はママ友同士のランチも簡単にはできません。飲食店にミキサーを持参して胃ろう食に加工できたとしても、残ったものを破棄したり、使ったものを洗うことは許可してもらえないことが多い状況です。Mom Houseではおいしいお弁当をとって、みんなで同じものを食べることのできるランチ会も実現できます。

「医療機関から在宅での介護が続く家族は、必死で社会の中で暮らしています。少しでも息抜きができる自由な時間が心のゆとりを生みます。障害児とお母さんたちの居場所作りを通じて、家族が安心して暮らしていける社会を作っていきたいです」と近藤さんは活動への思いを語ってくれました。

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デジタルアートのリハビリ、デジリハをみんなで体験。遊びながら身体の可能性を引き出します

「難病の子どもと家族を支えるプログラム」

日本財団 難病の子どもと家族を支えるプログラムでは、日本全国に難病の子どもと家族の笑顔を増やしていきます。

一般社団法人キッズラバルカ

「日本財団 難病の子どもと家族を支えるプログラム」に興味をお持ちの方は、ぜひ難病児支援ページをご覧ください。

文責 ライター 玉井 肇子
日本財団 公益事業部 国内事業開発チーム

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