ウクライナ避難民支援をきっかけに訪れる、多文化共生社会の夜明け

写真:公益財団法人大阪府国際交流財団 事務局長の中谷文彦さん。画像下側に「ひとつの支援が次につながる (公財)大阪府国際交流財団 事務局長 中谷文彦」の文字。
公益財団法人大阪府国際交流財団 事務局長の中谷文彦さん

ロシア軍による侵攻を受けて、多くのウクライナの人々が命の危険や日々の暮らしへの不安を感じ、国外での生活を希望しています。日本にもこれまでに1,900人を超えるウクライナ避難民が入国し、文化も言語もまったく違う土地での生活をはじめています。

日本財団では、そんなウクライナ避難民の皆さんが地域に溶け込みながら、安心して生活を送れるように、支援に取り組む非営利団体への助成を行なっています。

公益財団法人大阪府国際交流財団(以下、OFIX)もそんなウクライナ避難民支援に取り組む団体の1つです。事務局長の中谷文彦さんにお話を伺いました。

文化も言葉も違う日本で暮らす在留外国人の苦労

法務省によれば、令和3年末時点で日本に暮らす在留外国人の数は276万635人。194のさまざまな国籍・地域の人々が日本で暮らしています。大阪府はそのうち8.9%の人々が暮らすエリア。OFIXは、そんな大阪府の在留外国人が日本で安心・安全に暮らすサポートをしている団体です。

「OFIXでは、多文化共生社会の実現のため、外国人の受け入れ促進、受け入れ環境の整備といったことを目的に事業を行なっています。その中でも中心的な事業が多言語による情報提供です」(中谷さん、以下同)

日本で暮らす在留外国人の皆さんの中には日本語が堪能な人ばかりではありません。日常の買い物などは身振り手振りでなんとか行えたとしても、書面での手続きなど、どうしても日本語が障壁となってしまうシーンが存在します。

住所を登録するには?水道、電気、ガスを開通するには?ゴミ捨ては?日本人であれば、インターネットで少し調べたり、問い合わせればわかるような情報も、在留外国人の方たちにとっては高いハードルになってしまうのです。

OFIXではウクライナ避難民支援に取り組む以前から、在留外国人の方への情報提供と相談窓口事業を行なってきました。

「観光客の方も含めてですが、在留外国人の方が安全安心に暮らせるように大阪府外国人情報コーナーを設置し、外国人の方のための相談窓口として11言語で夜間・日曜日も対応しています。
また、もう1つ重要なのが災害時の多言語での情報提供です。災害に関する情報は、行政から日本語で発信されますが、外国人の方には理解が難しい。外国人が災害弱者にならないように私たちが多言語で災害に関する情報を発信しているのです」

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ボランティアによる支援の様子

ウクライナ語を話せる人材を全国から募集

2022年の3月初旬、大阪府はウクライナ避難民の受け入れを表明。府からの要請を受けたOFIXは急ピッチで避難民受け入れのための準備体制を整えはじめました。実は、元来の相談窓口事業では避難民の方の多くが使用するロシア語や、ウクライナ語には対応していませんでした。ウクライナ避難民支援のためには、まずロシア語やウクライナ語を話せる人材を見つける必要があったのです。

「府知事の方針でボランティアを中心にウクライナ避難民支援を行うことになりました。そこで、ロシア語・ウクライナ語を話せるボランティアを探したのですが、ロシア語は思っていた以上に見つかったものの、ウクライナ語を通訳・翻訳できる方は本当に少なくて苦労しました。
いつもは府内にお住まいの方や通勤・通学をしている方にお願いをすることが多いのですが、今回はそれでは見つからないということで、全国で募集をすることにしました。ご協力いただけることになったボランティアの方には関東圏にお住まいの方もいますし、手を挙げていただいた方の中には北海道にお住まいの方もいました」

結果的に、日本に滞在しているウクライナ人留学生や日本人と結婚して日本に住んでいるウクライナの方。または逆にウクライナ人と結婚してウクライナ語が話せるようになった日本人など。さまざまな背景のウクライナ語通訳・翻訳のボランティアが、大阪府のウクライナ避難民支援に名乗りをあげました。

しかし、ウクライナ語は堪能でも日本語の行政文書は読み解くことができない、というケースもあります。OFIXでは、通訳・翻訳の依頼があるとボランティアスタッフの言語習熟レベルに応じて依頼の割り当てを行います。中谷さんは、ウクライナ避難民の方への支援の現場に立ち会うこともあったそうです。

「ウクライナ避難民の方が府営住宅に入居するお手伝いをすることがありました。府営住宅の説明をして、入居手続きを行い、鍵渡しをしました。確か、府営住宅に入居する最初のご家族だったと思います。感謝の言葉をずっとおっしゃっていたのが印象に残っていますね」

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進学先を相談する避難民の親子

ウクライナ避難民が直面している課題はすべての在留外国人に共通する

中谷さんは、ウクライナ語の通訳・翻訳者を見つけるのに際して、日本財団によるサポートが役立ったと語ります。

「日本財団の助成のおかげで、通訳や翻訳者の方に謝礼をお渡しすることもできました。日本財団が国や府よりもいち早く助成金制度を立ち上げたので、私たちも迅速に今回のウクライナ避難民支援に取り組むことができたと思います」

今、ウクライナ避難民支援は日本への受け入れを支援する段階から少しずつ、日本で暮らしていくための支援をする段階に移行しつつあります。

「ウクライナ避難民の皆さんが立派だと思うのは、早く自立して生活できるようになりたいという気持ちが強いんですよね。ウクライナに住んでいたときは、皆さんそれぞれが各分野のプロフェッショナルとして仕事をしていたわけです。本当はそういったキャリアや専門知識を活かして仕事をしたいはず。でも、今日本ではどうしても言葉の壁があるから、単純な労働をすることになってしまいがちです。私たちとしては日本語学習をできる機会を積極的に情報発信していきたいと考えています。
そしてこの課題はウクライナ避難民だけでなく、これから日本で暮らそうとするすべての外国人の方に共通することでもあります。今回、ウクライナ避難民の皆さんを受け入れるために取り組んでいることの多くが、今後の多文化共生社会の実現のために生きてくるのだと思います」

日本で生きていくという選択肢を、ウクライナの人々へ。

日本財団では、ウクライナ避難民支援を行う各団体への助成プログラムのほか、これまで独自でウクライナ避難民支援も行い、合計1,428名(2022年10月26日時点)に渡航費・生活費・住環境整備費支援を行ってきました。

また、日本に避難してきたウクライナの人々へさらなる支援を行うため、ウクライナ避難民支援基金を開設しています。いただいたご寄付はウクライナ避難民の皆さんが安心して生活を送り、地域に溶け込むことができるように、日本語学習の支援、生活相談窓口、物資の配布(交通系ICカード等)、地域イベントでの交流などに使われる予定です。