コロナ禍の入院に付き添うお母さんにエールを届ける特定非営利活動法人キープ・ママ・スマイリング

苦境に立たされた付き添いのお母さんたち

子どもが入院した際に泊まり込んで付き添いをする病児のお母さんたち。子どもが回復するための重要な役割を担っているにもかかわらず食事や睡眠へのサポートは十分ではないため、体調を崩す、心身に不調をきたすなど厳しい状況に置かれています。

そうしたお母さんたちが笑顔で子どもたちに寄り添えるようにと、キープ・ママ・スマイリングは2015年から栄養に配慮した食事やお弁当を病院に届ける活動を続けてきました。

また、野菜をたくさん使ったおいしい缶詰を開発して佐賀大学医学部附属病院に配布し、地域で支える仕組みづくりの種も蒔いてきました。このような活動の最中に襲ったコロナ禍は、子どもに付き添うお母さんたちの日常にさらなる負荷を与えています。

コロナ禍の病院では、外出や交代などの行動が厳しく制限されたため、コンビニにも買い物に行けない、家族と交代して家に帰ることができないなど、お母さん一人に看病の負担が集中してさらに疲弊する人が増えています。

キープ・ママ・スマイリングはこうした長期入院中の子どもに付き添う家族に、食料品、生活・衛生用品などの物資を詰め合わせた「付き添い生活応援パック」の無償配布を2020年10月から開始。これまでに3,800以上の家族にエールを届けてきました。

この事業は、日本財団が日本歯科医師会の協力のもと行っているTOOTH FAIRYプロジェクトによる支援、個人や企業からの寄付、企業の協賛品の提供など多くのサポーターの支援に支えられています。

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「付き添い生活応援パック」これまで3,800以上の家族にエールを届けました

孤独な心に届いたエール

応援パックを受け取った家族からは、「病院で孤独を感じる中、応援してくれるたくさんの人がいることを知って嬉しかった」「一人じゃないんだと心が救われた」「入院生活の支えになった」といった感謝の声が数多く寄せられています。

「小児病棟がある病院は国内で500施設余りあると言われ、全ての病院にこの支援が周知されているわけではありません。院内で頑張っているお母さんたち、その一人でも多くに利用してもらえるよう広報活動にも一層力を入れていきたい」と理事長の光原ゆきさんは話します。

当初から取り組んでいる病院に温かいお弁当を届ける活動は、地域の飲食店とタッグを組んで継続しています。2022年の大晦日には3年ぶりに調理ボランティアが集まり、心を込めて作ったおせち料理と年越しそばを子どもの入院に付き添う家族に届けました。

「おいしい食べ物はそれだけで幸せな気持ちになります。おいしいは正義です」と光原さんは笑います。

「私たちの食事を受け取ったご家族に『付き添いは大変だったけれど、おせち料理を貰えて、銀座の名店のお弁当を貰えて、ラッキーなこともあったな』と元気を出してもらいたいのです」。

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「一期一会の繋がりを大切にしたい」箱いっぱいに応援の気持ちを詰めて

目の前の困っている人を放っておけない

光原さんは先天性疾患を持つ次女を出産後、長期間の付き添い入院をしてその子を看取った経験から、病院での過酷な状況のお母さんたちを笑顔にしたい、小児病棟の付き添い環境を改善したいと、この団体を立ち上げました。

「活動の原動力は、我が子が短い人生を生きた意味を見出したい、生きた意味を作りたいという個人的な思いと同時に、やはり目の前の困っている人を放っておけないという気持ちがあります。苦境にいる状況を知っているのに見て見ぬふりはできないじゃないですか。喜んでもらえたら嬉しい。私だけでなく、うちのスタッフもみんなそんな思いでやっています。‟おせっかいおばさん”の集団なんです(笑)」。

さらに、2022年6月からは子どもが長期入院したために働けず、生活に困窮するひとり親に物資を届けるサポートを病院の相談員と連携してスタート。

付き添い入院生活を応援するクチコミサイト「つきそい応援団」の制作費をクラウドファンディングで募り、2022年9月にオープンしました。このサイトは閲覧するだけでなく、付き添い入院に便利なグッズ、病院周辺のお店やコンビニの情報など、付き添いを経験したからこそ知っているお得な情報、役立つ知恵や工夫を投稿することができます。

「自分のつらい経験が誰かの役に立つことは、この経験にも意味があった、報われたと感じられることもあるのではないかと思うのです」と光原さん。

画像:クチコミサイト「つきそい応援団」キャプチャ画像
付き添い経験者が集まるお役立ちクチコミサイト「つきそい応援団」

実態調査で、制度を見直すきっかけを

2019年末にキープ・ママ・スマイリングが聖路加国際大学大学院看護学研究科(小児看護学)と共同で行った調査では、泊まり込んで付き添っていた人は短期入院が85.0%、長期入院が86.1%と入院期間にかかわらず、泊まり込んで付き添っていた人が圧倒的に多いことが分かっています。また、付き添いの交代者がいなかった家族は全体の28.8%でした。

さらに生活環境や健康状態も良好ではなく、「食事バランスがよくない」「睡眠不足がある」と回答した人は全体の9割以上に上り、「体調不良」の経験をした人も全体の半分以上みられました。

「現行の医療制度のもとでは原則『付き添い不可』とされていますが、私たちの調査によって医療制度と小児医療における付き添いの実情が合致しないことが明らかになりました。このねじれがあるために、医療者も付き添い者に食事やベッドを提供できない、ケアを充実させるための人員を補充できないといった課題を抱えています。これまで付き添い者の実態はほとんど調査されてきませんでしたが、詳しい調査を重ねることでさらに実態を明らかにし、付き添い入院の制度そのものを見直すための政策活動にも力を入れていきたいと考えています」と光原さん。

お母さんが笑顔で元気でいると子どもは嬉しくて幸せ。
それは病気の子どもの早い回復と心身の発育・成長にとって何よりも大切です。

キープ・ママ・スマイリングは、今日も箱いっぱいに温かいエールを詰め込んで、小児病棟で我が子に付き添うご家族に届けます。

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理事長の光原ゆきさん(前列右)と熱い思いを持って活動に取り組むスタッフたち

「難病の子どもと家族を支えるプログラム」

日本財団 難病の子どもと家族を支えるプログラムでは、日本全国に難病の子どもと家族の笑顔を増やしていきます。

特定非営利活動法人キープ・ママ・スマイリング

「日本財団 難病の子どもと家族を支えるプログラム」に興味をお持ちの方は、ぜひ難病児支援ページをご覧ください。

文責 ライター 玉井 肇子
日本財団 公益事業部 国内事業開発チーム