元サッカー日本代表・巻誠一郎さんとの「フラッグハント大交流会」熊本で開催

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フラッグハント大交流会の集合写真

フラッグハントというスポーツをご存じでしょうか?

約10年前に東京で生まれたスポーツで、新たなシューティングスポーツとして全国に広がり始めています。そんなフラッグハントが、2023年2月、九州圏内に初上陸。子ども第三の居場所を運営する「フリースクール地球子屋(てらこや)(以下、地球子屋)」が主催。ゲストに元サッカー日本代表巻誠一郎さんをお迎えし、県内中心に子ども20名、保護者10名の計30名が交流を深めました。

20年以上に渡るフリースクール運営実績

地球子屋は、熊本市を拠点に、20年以上に渡り不登校やひきこもりなどの子どもや若者、そしてそのご家族の支援をしてきた団体です。

不登校の子どもがいる保護者が集まり、学校に行けない子どものための学習会を開くようになったことが団体の始まりです。不登校の子どもを「学校に戻すこと」をゴールに置くのではなく、まずは「自分の子どもにきちんと向き合うこと」を掲げて活動してきました。

スポーツや家庭菜園、プログラミングなどのプログラムを提供し、子どもが「やってみたい」と思える体験機会を生み出すことを重視しています。

2022年からは、コミュニティモデル型の子ども第三の居場所の運営者に。不登校に限らずさまざまな子どもが安心して過ごすことのできる場をつくってきました。

九州初上陸のフラッグハント大会

今回の「フラッグハント大交流会」は、コロナ禍もあり、外遊びをせず体を動かすことが少なくなった子どもの様子を危惧した、地球子屋の代表・加藤千尋さんが企画。日本フラッグハント協会の協力を受けて、地球子屋に通う子どもに限らず熊本県内を中心に募集し、計30名ほどが参加しました。

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フラッグハント大交流会の募集チラシ

また、当日はサプライズゲストとして元サッカー日本代表の巻誠一郎さんをお招きしました。巻さんは現役サッカー選手だった当時から、出身地である熊本で少年サッカースクールの開校や、熊本地震復興支援、障害者支援施設の開設などの社会貢献活動に取り組んできました。2019年には熊本地震復興支援の功績を称えられ、日本財団が推進する「HEROs AWARD」も受賞しています。

子どもも大人も一緒に楽しめるスポーツ

さて、ここで簡単にフラッグハントのルールを説明しましょう。

フラッグハントは、スリル・インテリジェンス・チームワークの3つの特徴を持った
新たなシューティングスポーツ。障害物を点対称に配置したフィールドで、相手チームのプレイヤーに光線銃で光を当て排除しながら、相手陣地のフラッグ奪取を目指します。
一見サバイバルゲームと似ているように思われますが、BB弾が飛んでくることもないので、痛い思いをすることもありません。子どももお年寄りも、年齢や体格差も関係なく参加しやすいのが特徴です。

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光線銃を手にする子どもたち。銃を相手に向ける意味を理解できる子どもを対象にしたいと考え、参加年齢を7歳以上とした

瞬時な判断が求められる緊張感のなかで、チームで戦略を描き、勝利を目指すところは、まるでシューティングゲームの世界に入り込んだようです。

フラッグハント大交流会では、子どもと保護者そして巻さんもごちゃ混ぜのチームに分かれ、競い合いました。試合前にはチームで作戦を立て、試合中も声を掛け合いながらフラッグの奪取を目指すなかで親睦が深まり、多くが初対面とは思えないほどの盛り上がりを見せ、あっという間に終了の時間を迎えました。

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作戦会議では、巻さんが元サッカー選手としての経験を活かして、攻守のアドバイスをしながらチームを引っ張るシーンも見られた

「フラッグハントは『人生』と同じ」

子どもたちとプレーをした巻さんは、フラッグハントの魅力についてこのように語ります。

「初めて体験するスポーツでしたが、全ての選手に役割のある奥深いスポーツだと感じました。子どもたちと一緒に作戦を考えながらアグレッシブに相手陣地にフラッグを取りにいく姿勢は、『人生』と同じで、色々な課題や困難の解決に立ち向かうには、色々な人のサポートが必要であり、コミュニケーション・チームメイトからの情報伝達が勝利の鍵となる本スポーツを経験したことで、これから沢山のことに挑戦してほしいと思います」(巻さん)

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巻さん。スピードを活かして、何度もフラッグを奪取していた

盛況のうちに幕を閉じた、九州発のフラッグハント大交流会。加藤さんは今後も継続的に大会を開催したいと意欲的で、2023年中にも3回ほど実施予定です。

「子どもが外遊びをすることは減ったと感じていますし、遊び方を知らないんですよね。でもみんなで集まってスポーツをすれば、体を動かすし、自然とコミュニケーションも生まれます」(加藤さん)

また、不登校の子どもに限定せず、さまざまな人が参加できる場をつくることも、子ども第三の居場所として大切にしていきたいと考えています。

「参加していた20名の子どものうち地球子屋に通っているのは数名のみでした。さまざまなプロジェクトやイベントを実施し、地球子屋の多様な面を見せていくことで、私たちが出会える子どもの裾野も広がっていき、困難を抱える子どもにも出会っていけるでしょう。『不登校だから』『フリースクールだから』とレッテルを貼るのではなく、どの子も個性があって、良いところがあるよねと認めていける居場所にしていきたいですね。その象徴的な場に、フラッグハント大交流会はなりました」(加藤さん)

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加藤さんも試合に参加し、子どもと一緒に楽しむ場面も見られた

現在、熊本市内で一番栄える商店街に拠点を構える地球子屋。立地の良さを活かしながら、近隣の店舗や施設とコラボレーションし、陶芸や書道、ダンス、英会話など今後も子どもが「やってみたい」と思える機会をつくっていきます。

取材:北川由依