【開催報告】「日本財団 災害に備えるワークショップ」千葉県千葉市にて開催

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筆保先生と手話通訳者
  • 日時:2022年10月2日(日)13:00~16:00
  • 場所:千葉市文化センター
  • 住所:千葉県千葉市中央区中央2丁目5-1
  • テーマ:「近年の大型台風の特徴・被害とNPOの対応、これからの備えとは」

内容

  1. 開会あいさつ並びに令和4年台風第15号被害に関する静岡県での調査報告
    (日本財団災害対策事業部 高島友和)
  2. 講演1:「タイフーンショット計画〜台風を脅威から恵みに〜」
    講師:横浜国立大学 先端科学高等研究院 台風科学技術研究センター長 筆保弘徳教授
  3. 講演2:「房総半島台風被害に関する支援活動のこれまでとこれから」
    講師:災害支援ネットワークちば/千葉南部災害支援センター代表 加納基成氏
  4. 講師2名によるクロストーク
    進行:横浜国立大学先端科学高等研究院客員研究員 おくむら政佳氏
  5. ワークショップ「これからの台風被害に関する備えとは?」
    進行:災害支援ネットワークちば 世話人会
  6. 閉会挨拶

2022年10月2日、千葉県千葉市にて災害に備えるワークショップinちばを開催致しました。災害支援ネットワークちば 横浜国立大学にご協力をいただき、当日は千葉県社会福祉協議会後援の元、登壇者や関係社含め46名の方々にご参加いただきました。

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台風の構造について解説をする筆保先生

講演1では、横浜国立大学の筆保弘徳教授よりご講演をいただきました。話の冒頭で、20年に渡る台風研究の第一人者である筆保教授自身、令和元年房総半島台風では、予測を超えた被害を目の当たりにして、自分の研究がまだまだ社会に届いていないと感じ、その意味でも台風研究の思いを新たにしたといいます。
その上で、筆保教授の主導するタイフーンショット計画とは、台風の勢力を人為的に制御しようという取り組みで、さらに台風のエネルギーそのものを利活用するという夢のような計画も視野に含んでいるといいます。筆保教授によると、台風の目に大量の氷を散布して、冷却によって制御をした場合、風速を3メートルだけでも抑えられれば、建物被害は30%も減らせるシミュレーションになるといいます。今現在では、大量の氷散布は非現実的で、質量対効果の面で利用は難しい技術ではありますが、今後もシミュレーションによる効果判定法を用いて、実用的な台風制御法を探っていく計画だということでした。

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講演を行う加納氏

講演2では、令和元年房総半島台風以来、被災地域で継続的に支援活動をしている加納基成氏による講演がありました。加納さんによると、被害から3年余りを通して、様々な問題点が見えてきたといいます。被災時には、日本中から多様な支援主体が千葉に駆けつけてくれましたが、その後、災害支援は長期化すること、災害支援の担い手は地域の人々に移ること、市町村の境をこえた支援のプラットフォームが必要なことの3つを知ることになったといいます。

そこで加納さんは、そのプラットフォームとなるべく千葉南部災害支援センターを発足し、被災者や支援者に向けた講座や屋根のブルーシート展張講習会を継続的に開催し、担い手の育成も行っています。一般的には、行政、NPO、社会福祉協議会(災害ボランティアセンター)等の三者が協働して被災者支援に当たることを三者連携と呼びますが、加納さんは、それらの一者は、「みんなが全員」だといいます。そして、次の災害に向けて、そのみんなが出来ることを次のワークショップで話し合いたいということでした。

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クロストークの様子

講演のまとめとして、横浜国立大学先端科学高等研究院客員研究員のおくむら政佳氏の進行で、登壇者2名によるクロストークが行われました。トークは加納さんによる千葉の台風災害の振り返りから始まり、筆保教授によって、その被害の研究者としての解説がなされました。曰く、台風には、一つひとつに特徴があり、それぞれの対策も違ったはずだといいます。さらに台風災害の備えに対してのDX(デジタルトランスフォーメーション)の活用というテーマにも話題が発展しました。

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グループワークの進行を見守る鍋嶋氏

その後参加者は各グループに分かれて、災害支援ネットワークちばの鍋島洋子氏のリードによって、和気あいあいとした雰囲気の中にも真剣に話し合いが行われました。
テーマは、「令和元年台風被害の状況・経験」、「次の台風被害に向け実感した課題」、「次の台風災害にむけてできることを具体化」の3つです。何しろ参加者は、NPO関係、一般の会社員、消防士、等々、様々な立場から、活発な意見が飛び交っていた模様です。

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グループワークの発表の様子

各グループのまとめでは、「被災者にとって適切な情報をどのようなかたちで渡したらいいのか」、「情報を受け取った時の判断は、まず家族で話し合うことが大切」、「遠隔地域の支援をいかにするかが課題」、「ボランティア同士の横のつながりが重要」、「災害無知を減らすことが課題」、「コロナ禍ではどのような避難所運営をすればいいのか」など、様々な話題について話し合ったという発表がありました。

加納さんからは、「やはり情報がポイントとなる。『つながり』も関係の情報であり、情報を得ようとするより、自ら発信することが大切」という、全体を通した講評がありました。また、筆保教授からは、「この情報過多の時代に、その何を取ればいいのか、そして何をすればいいのかを、自分達専門家がもっと整理して伝えていく責務があることに気づかされた」という発言がありました。そして、「このワークショップで気づいたこと、気づけ合えたことを地域に戻って次の一歩にそれぞれがつなげていって欲しい」と、鍋島さんのまとめで閉会しました。

ワークショップを終えて

「意識のある方の集まりで、エネルギーを感じた」「今まで災害の勉強会には多く出席しているが、異業種の方と話し合うのは初めてで、非常に参考になった」「自分のことだけではなく、他人のためにという人が多く、心強く感じた」などの参加者の感想が聞かれ、講師の災害支援ネットワークちば代表の加納さんからも「千葉の台風災害について、いろんな方面の人々が集って有意義な話し合いができた」と、興奮さめやらぬ様子のワークショップとなりました。

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全体集合写真

日本財団では引き続きワークショップを企画・開催し、平時からの繋がりづくりのきっかけを提供してまいります。

ワークショップダイジェスト動画(YOUTUBE)

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日本財団 災害対策事業チーム

  • メールアドレス:saigai@ps.nippon-foundation.or.jp