グローバル・アピール2015

日本財団は、毎年1月の「世界ハンセン病の日」に合わせ毎年発表してきた「ハンセン病に対するスティグマ(社会的烙印)と差別をなくすためのグローバル・アピール」(以下グローバル・アピール)を、2015年1月27日、はじめて日本で発表します。また、この機会に一人でも多くの方がこの病気への理解を深め、偏見や差別について考える機会をつくるため、「THINK NOW ハンセン病」ビデオメッセージ・キャンペーンを開始し、各種サイドイベントも全国各地で開催します。

ハンセン病を考えることは、人間を考えること。

ハンセン病は1980年代に治療法が確立され、早期に治療すれば障害が残らず完全に治る病気であり、感染力も非常に弱いことが分かっています。一方で、病気によって体に変形をもたらすことで何世紀にもわたり恐れられてきた歴史があり、患者や回復者に対する偏見と差別の問題は根強く残ったままです。こうした社会面の問題を解決するためには、世界中の人々に対して、この病気についての知識を伝え、誤解を解くように呼びかける必要があります。

写真:メッセージを寄せた著名人らの顔写真
「THINK NOW ハンセン病」サイトに多くのメッセージが寄せられています。

「グローバル・アピール2015」東京で発表

日本財団では、2006年1月から毎年「世界ハンセン病の日」に、会長の笹川陽平(WHOハンセン病制圧大使、日本政府ハンセン病人権啓発大使)を中心に、医療、法曹、教育、宗教など各界の代表者とともに「グローバル・アピール」を発表、「ハンセン病が治る病気であること」「治療は無料で受けられること」「差別は不当であること」を粘り強く訴えてきました。

写真:THINK NOW ハンセン病 グローバル・アピール2015の様子

節目の10回目となる2015年1月27日は、国際看護師協会と各国看護協会とともに、初めて日本で発表します。

「THINK NOW ハンセン病」

これを機に、日本全国、そして世界中の皆さまにこの病気への理解を深め、偏見や差別について考えていただきたいと、たくさんの方からの応援メッセージを伝えるwebサイト「THINK NOW ハンセン病」を開設しました。第1回のグローバル・アピールにも参加したダライ・ラマ法王をはじめ、日野原重明・聖路加国際病院名誉院長、森喜朗元首相、マツコ・デラックスさんらからメッセージが寄せられています。

画面イメージ:「THINK NOW ハンセン病」公式サイト

「世界ハンセン病の日」サイドイベント

また、「世界ハンセン病の日」を中心に2015年1月から3月まで、様々な団体と連携してサイドイベントも全国各地で開催します。世界各国のハンセン病回復者や家族の姿を撮った写真展、文学からハンセン病について考える書店での作家トークショー、各国の回復者が住む村でワークキャンプを行ってきた大学生ボランティアたちによるシンポジウム、映画上映会やコンサートなど様々な企画が予定されています。

画面イメージ:「ハンセン病制圧活動サイトleprosy.jp」トップページ

いま、ハンセン病を考える意味

1991年、WHOで「人口1万人当たりの患者数が1人未満」がハンセン病の制圧目標と定義され、世界中で制圧活動が進められた結果、2011年までに未制圧国はブラジル1国となっています。しかし、インドでは制圧目標は達成されても、毎年新たに約12万人の新規患者が生まれるなど、ハンセン病が完全になくなったわけではありません。病気への理解が進んでいない地域も残されており、患者、回復者、その家族が差別にさらされる例は後を絶ちません。

写真:回復者の肩を抱く家族

一方、日本では、明治時代からハンセン病患者に対する隔離政策が取られ、患者は子どもを持つことも許されず、病気が治っても故郷に戻ることもできず、療養所内で年齢を重ねて一生を終えることを強いられました。治療法が確立し患者数が激減した後も続いた隔離政策(らい予防法)は1996年になって廃止され、2001年には国家賠償請求も認められました。しかし、高齢の回復者たちはそのまま療養所での生活を続けざるを得ず、今では入所者たちの平均年齢は80歳を超えています。

世界中の療養所や旧隔離施設なども同様で規模の縮小や閉鎖が続き、ハンセン病と闘った人々の記録や記憶が失われつつある状況の中で、歴史を保存し、次の世代に語り継ごうという機運が高まっています。今こそ、若い皆さまがハンセン病について、正しく理解し、考えることが必要です。

ハンセン病についての理解を深め、考える素材として、ハンセン病に関する書籍や小説、回復者自身による手記や詩などが、これまで数多く出版されてきました。このうち日本財団が選んだ160点を紹介します。