洋上風力人材育成プロジェクト

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洋上に建設された多数の風車

洋上風力人材育成プロジェクトとは、日本国内で普及が進む洋上風力発電において、不足が懸念される洋上風力人材(※)の育成システムを構築・推進するプロジェクトです。

  • 洋上風力人材とは、プロジェクトを企画・風車設計などを担う「技術者」、風車の建設や設置後のメンテナンスを担う「技能者」のことをいいます。

島国日本における洋上風力発電の可能性

世界的な脱炭素の流れにおいて、再生可能エネルギーとしての風力発電が注目されています。とりわけ海上で稼働する洋上風力発電は陸上風力発電と比較して騒音や風向を考慮する必要がなく、構造物を大きくできることもあり、大きな発電量が期待できるとされています。

四方を海に囲まれた日本は広大なEEZ(排他的経済水域)を持ち、洋上風力発電の可能性は高いといえます。政府も2020年に2050年カーボンニュートラル宣言を行い、2030年までに10GW(10MWの風車1,000基相当)、2040年までに30~45GWの洋上風力発電の稼働を目標に定め、普及に向けて動きが加速しています。

画像:洋上風力発電の計画・普及状況(2024年8月1日現在)画像上部に「・2030年に10GW、2040年に30~45GWの導入目標」「・環境アセスメントを含めると約20GWの洋上風力発電が導入を計画中※一部運転開始済、一部重複海域あり」の文字 「▲計画区域」は、海道石狩湾域(1,330MW 他)、福島県楢葉町・富岡町沖(300MW2027(予定))、静岡県伊豆(500MW)、静岡県遠州灘(500MW)、浜松市沖(625MW)、和歌山県西部(750MW)、和歌山県沖(1000MW)、山口県安岡沖(60MW)、徳島県美波町沖(30MW)、長崎県・佐賀県平戸(600MW)、鹿児島県(1,500MW)、薩摩洋上風力(600MW)、吹上浜沖(969MW)の13区域。「●一定の準備段階の区域」は、青森県陸奥湾(800MW)、岩手県久慈市沖(最大600MW)、富山県東部沖(8MW 2023/9)、福井県あわら(200MW,250MW)、響灘沖(100-200MW)、佐賀県唐津(600MW)の6区域。「□有望な区域」は、北海道石狩市沖(1,140MW)、北海道岩宇・南後志(705MW)、北海道檜山沖(1,140MW)、北海道島牧沖(555MW)、北海道 松前市沖(315MW)、青森県沖日本海北側(300MW)、千葉県九十九里沖(400MW)、千葉県いすみ市沖(410MW)の8区域。◇促進区域は、青森県沖日本海南側(上限600MW(R3))、山形県遊佐町沖(上限450MW(R3))の2区域。現在審査中です。「◆促進区域(事業者選定済)」は、秋田県八峰町及び能代市沖(375MW(R2)2029/6)、能代市・三種町・男鹿市沖(479MW(R1)2028/12)、秋田県男鹿市、潟上市及び秋田市沖(315MW(R2)2028/6)、秋田県 由利本荘市沖(845MW(R1)2030/12)、新潟県村上市・胎内市沖(684MW(R2)2029/6)、銚子市沖(403MW(R1)2028/9)、西海市江島沖(420MW(R2)2029/8)、五島市沖(17MW(RO)2026/1(予定))の8区域。「▽港湾区域」は、石狩湾新港(112MW2023/12)、むつ小河原港(80MW)、秋田港・能代港(55MW+84MW 2022/12)、鹿島港(120MW2026(予定))、福岡県響灘(220MW)の5区域。「基地港湾」は、青森港、能代湾、秋田湾、酒田港、新潟港、鹿島港、北九州港の7港。「基地港湾 指定意向」は、稚内港、留萌港、石狩湾新港、室蘭港、久慈港、福井港、御前崎港、伊万里港の8港。
  • 図中の発電規模は環境アセスなどによる規模を示す参考値
  • 図中のR1,R2,R3は公募の段階(ラウンド)を示す略称

(一般社団法人日本風力発電協会 COPYRIGHT 2023 JAPAN WIND POWER ASSOCIATION. ALL RIGHTS RESERVED. より改変)

不足する洋上風力を担う人材

高さが最大190m以上(50階建てビルに相当)にのぼり、波による揺れも発生する洋上風力発電においては、メンテナンスの実施に高度な技術が要求されます。洋上風力発電の導入をいち早く取り入れた欧州・米国。従来より石油天然ガス開発において洋上作業人材が求められてきた背景もあり、石油天然ガス開発業界で得た知見や人材が脱炭素の流れを受けて洋上風力発電業界に移行しています。

しかし、海洋開発の現場に乏しい日本では、洋上風力発電を設置する人材が慢性的に不足しています。さらに設置後のメンテナンスを担う人材不足が今後課題となることが予想されます。

日本風力発電協会の調査(2023年)(外部リンク)によると、日本では現在、洋上風力人材が技術者と技能者併せて約4,000人しかいないのに対し、2030年には約15,700人、2050年には約48,500人の人材が必要となる推計が発表されています。

 画像:洋上風力必要人材数についての2030年、2040年、2050年の推計棒グラフ 
洋上風力必要人材数は、技術職と技能職に分かれ、技術職は、マネジメント職、技術者、コーポレートサービス、HSEQ、販売・調達の5職種に分類されている。技能職は、土木・建設職、O&M職、電気系職、機械系職、海技系職、航空系職、潜水系職の7職種に分類されている。 
2030年の技術職の必要人材数は、約6,500人。また、2030年の技能職の必要人材数は、約9,500人。 
2040年の技術職の必要人材数は、約14,000人。また、2040年の技能職の必要人材数は、約24,500人。 
2050年の技術職の必要人材数は、約17,000人。また、2050年の技能職の必要人材数は、約31,500人。
  • 本必要人材数は導入シナリオ実現に必要となる国内外の必要人材数であり、事業活動の場所を国内に限定したものではない点に注意
  • 今後の洋上風力市場や産業の習熟化、制度変更、技術進展等による新たな職種の増加等により、推計結果と実際の必要人材数との乖離が発生する可能性がある点に注意
  • その他必要人材数推計における留意事項を参照のこと
  • 分類別の内訳は、四捨五入の関係で合計が合わない場合があります。

(一般社団法人日本風力発電協会 COPYRIGHT 2023 JAPAN WIND POWER ASSOCIATION. ALL RIGHTS RESERVED. より改変)

人材不足解決に向けて

日本財団では、今後拡大が見込まれる洋上風力発電業界における人材不足を解決するため、技術者と技能者の育成プログラムや育成拠点の整備を支援しています。以下に、支援拠点と支援団体を紹介します。

日本財団海洋開発人材育成・フィールドセンター(愛称:長崎海洋アカデミー)

オランダの洋上風力発電専門コースを持つ教育機関・DOB-Academy(外部リンク)のカリキュラムを応用した、洋上風力発電等の海洋エネルギーに関する人材育成機関を2020年に長崎大学内に開講しました。
2024年現在、900名の海洋エネルギー開発にかかわる企業の社会人が受講し、主に技術者育成の拠点として活用されています。

日本財団洋上風力人材育成センター(愛称:NOA TRAINING)

洋上風力発電の国際的機関であるGWO(国際風力機関)の認証を受けた訓練を提供する拠点です。年間に最大1,000人の訓練能力を有し、高所作業や海上サバイバル訓練などのGWO認証訓練に加えて世界初の実海域での洋上風車への移乗訓練など、洋上風力発電の実践的なメンテナンス作業を見据えた訓練プログラムを準備しています。

日本財団洋上風力人材育成センターのロゴ

日本風力発電協会

洋上風力発電の人材需要や人材育成における課題の整理を行っています。また、人材育成を円滑に進めるための洋上作業員の安全性確保に資する資格要件の検討を行っています。それらを通じ、国内の人材育成を促進することが期待されています。

エンジニアリング協会

洋上風力発電に携わる技術者を対象にした教育プログラム(洋上風力発電におけるHSEや送電システム)の開発を担っています。新しい産業である洋上風力発電に対応するための教育プログラムの整備は不十分であり、開発されたコースが人材育成に貢献されることが期待されます。

青森風力エネルギー促進協議会

今後、洋上風力発電の計画が集中している東北・北日本地域における専門人材を効果的に実施するための調査研究を行うものです。国内、海外の先進事例を整理し、今後の東北地方における洋上風力発電の人材育成のあり方を検討します。

関連リンク

お問い合わせ

日本財団 海洋事業部 海洋船舶チーム

  • メールアドレス:offshorewind@ps.nippon-foundation.or.jp