笹川アフリカ協会30周年記念式典「農業を通じた社会保障・雇用への貢献:アフリカにおける笹川アフリカ協会の30年」

ケニア・ナイロビ

はじめにアフリカ開発銀行アデシナ総裁、各国政府代表の皆さま、そしてアフリカ連合の農業経済・農業局長やエチオピア農業・天然資源省の副大臣を始めとするシンポジウムにご登壇される専門家の皆さまに心より感謝の意を表します。

30年間にわたり私たちのプロジェクトを支え応援してくださった全ての皆さまに御礼申し上げます。そして、笹川アフリカ協会の創設者の一人として、私たちのアフリカでの30年の活動をお祝いしていただけるこのシンポジウムにご参集いただいたことに感謝いたします。

私たちがササカワ・グローバル2000プログラムを始めたのは、1984年にエチオピアを中心としたアフリカ各国を襲った大飢饉に対して、緊急食糧援助をおこなったことがきっかけでした。空腹で目を開けていることがやっとというような子供たちを目の当たりにし、私は少しでも早く、できる限り多くの食糧を届けることを決意しました。

しかし、食糧援助は一時的な解決策にはなりますが、あくまで緊急的な支援です。アフリカの食糧供給を向上させるためには、零細農家による食糧増産を手助けすることが必要だと強く思いました。私はこの考えに賛同してくれたボーローグ博士とカーター元大統領の協力を得て1986年に笹川アフリカ協会を設立しました。SG2000プロジェクトとして知られているササカワ・グローバル2000は、今までアフリカの14ヶ国において実施され、今年で30年の節目を迎えます。

私たちの第一目標は、アフリカの零細農家の生活の質を向上させることでした。この目標を達成するために私たちが特に力を入れてきたのは、SG2000の中核である農業普及員のトレーニングを通じた人材育成です。SG2000では農業省と共に農業普及員を教育し、彼らを通じて必要な知識や技術を農家に伝播させてきました。普及員は畑へ出て、農民と共に活動するという重要な仕事をしています。信頼関係を築く中で、効果的な農法を教え、農家が日常生活に取り入れてもらえるようにしました。普及員の大変な努力と真摯な姿勢があったからこそ、プログラムが成果を上げることができたのだと思います。

そして、彼らの活動をさらに幅広くするために、私たちはモチベーションの高い普及員の能力強化を行う講座をアフリカ各国の大学に設置しました。23年間で24大学の協力を得て、6,000名に近い優秀な普及員がこの講座を修了しました。このように顕著な成果を上げているキャパシティ・ビルディングの活動は、今後も続けていく予定です。

零細農家の方々の生活の向上を図るためにもう一つ行っていることは、彼らの活動の多角化に対する支援であり、それによって収入の向上を目指します。この取り組みによって、作物を育てるだけでなく、収穫後にそれを加工し、マーケットで販売する際、質の高い製品としての付加価値が生まれます。

私たちは、個々の農家を組織化したFBO(Farmer Based Organization)の機能を強化する活動を積極的に行っています。例えば、種子や肥料を共同で購入を集団で行い、収穫物を共同で販売することで効率化を追求することができます。

また、個人で所有するには高価な農業機械を、仕事を求める若者のグループに提供します。こうした機械の提供によって、若者のグループがトウモロコシの脱粒・製粉や米の脱穀・精米などのサービスを提供することができるようになるため、若者や女性に新たな職場で働くチャンスが生まれています。

近年、アフリカの若者たちは、都市のより高い収入の仕事を求めて農村を離れています。しかし、都市部にはすべての若者に対して十分な雇用の機会がなく、若者の失業率の高さが深刻な問題になっています。農業への新しいアプローチを導入することで、農業がアフリカの未来を担う多くの若者をひきつけ、バリューチェーンが強化されることが望まれます。

笹川アフリカ協会が設立された30年前には、アフリカで農業が今ほど注目されていませんでしたが、現在では多くの国々が発展と経済成長のために農業が重要であることを認識しています。ここにお集まりの各国のリーダーの皆さまには、国家政策における農業の重要性へのコミットメントを積極的に示し、その可能性を広げていただきたいと期待しています。

最後に、これまで、多くのアドバイスをくださり、共に汗を流してくださった農学者の皆さま、農民の近くに寄り添い、彼らの生活向上のため来る日も来る日も仕事に励まれた農業普及員の皆さま、アフリカの明るい未来のために普及員を鼓舞し、共に闘ってきた笹川アフリカ協会のルース・オニヤンゴ会長を始めディレクターたちやスタッフ、そして我々のプロジェクトを信頼し、協力を申し出てくださったドナーの皆さまにも、心から感謝申し上げます。さらにこの後、アフリカ開発銀行と笹川アフリカ協会の間で覚書が調印されます。私たちの活動に経験豊富で情熱を持ったパートナーが加わってくださることについても喜ばしく思っております。

本日のシンポジウムでは、笹川アフリカ協会の30周年記念であると同時に、「変わりゆくアフリカの農業」というテーマで世界中の素晴らしいパネリストをお招きして零細農家の抱える課題について議論します。シンポジウムでの活発な議論や新しいアイデアが、笹川アフリカ協会の新たな30年に向かって一つの道筋を示してくれることを期待しています。