日英グローバル・セミナー2017 「ナショナリズムの台頭とグローバル化衰退の時代における日英の協力関係」
ロンドンに再び戻って、皆さまと一緒に日英グローバル・セミナーに参加できますこと、大変嬉しく思います。
2週間ほど前になりますが、メイ首相が来日し、安倍首相と会談されました。その中で、日英の強力なパートナーシップおよびそのグローバルな規模での戦略的重要性があらためて確認されました。私は、このパートナーシップは政府間レベルにとどまらないものだと考えています。
皆さまお気付きのことと思いますが、この日英グローバル・セミナーは、地球規模の課題について議論するため、民間セクターの新しいパートナーシップの形として始まりました。これは、日英の多様な分野における長い交流の歴史に基づいています。2013年に始まったこのセミナーは、今年で5年目、最終年を迎えます。
今日、日英グローバル・セミナーは、政策の専門家、研究者、そして、リーダーが集まり、互いに知識や経験を共有するための重要な場へと発展していきました。
過去5年間で、私たちは世界の状況が様変わりする様子を目の当たりにしてきました。これらの変化の中には、より不安定に変動するものがあり、世界の状況を一層複雑なものにしています。世界の多くの地域では、不安定化する安全保障の状況、民主主義システムにおける深刻な課題、グローバリゼーション対保護主義の対立の激化、ブレグジット(Brexit)に代表される大きな政治構造の再編に伴う経済状況の変化が起こっています。
この一連のセミナーでは、膠着状態にあり、予測が不可能である世界の状況に焦点を当ててまいりました。私たちの議論では、これらの課題をあらゆる角度から考察してきました。また、私たちは、これらの不安定な変化に効果的に対応するための解決策と新しい協力の道筋を見出そうと試みました。
毎年開催してきたこのセミナーでは、世界的な関心が集まるタイムリーな事柄を考察するだけでなく、このような変革の時代が抱える課題を見極める貴重な機会を提供してくれました。
議論の概要は、毎年報告書にまとめられ、広く一般に公開されています。さらに、来年には、これらの課題を厳密に分析した論文集が出版される予定です。私は、これらの報告書や出版物が、課題への理解を深め、新しく、効果的な解決策を見出すことに貢献すると確信しています。
このセミナーには、5年間で約100人の研究者や専門家の方々にご参加いただきました。すでに各界でご活躍されている方たちばかりです。私は、そのような方々が本セミナーを刺激的な交流の場であるとご理解くださっていると確信しております。また、本セミナーでの議論が、私たちの知識を深め、将来のさらなる対話の基礎となることを願っております。
この場をお借りして、すべての専門家や研究者の皆さまに対し、皆さまの研究、貴重な考察、そして、本日、私たちにその知見を共有してくださることに心より感謝申し上げます。
ロビン・ニブレット所長をはじめとするチャタムハウスの皆さまには、このグローバル・セミナーを成功に導いてくださったことに感謝申し上げます。また、グレイトブリテン・ササカワ財団の皆さまには、日英グローバル・セミナーの開催に尽力していただきましたことに御礼申し上げます。