「妊娠SOS相談窓口と産前産後の居場所の全国普及に関する提言書」公開日本財団による妊娠SOS相談窓口助成事業の成果検証結果より
背景・目的
日本では心中以外の虐待死の約半数近くが0歳児である状況が長年続いており、いわゆる「赤ちゃん遺棄事件」の報道も後を絶たない。この課題解決には様々なアプローチが必要であるが、予期しない妊娠への支援の強化が重要であることに疑いはないだろう。
日本財団は2015年頃から予期せぬ妊娠をした女性とその子どもへの支援を行っており、全国でより包括的に妊娠SOS相談窓口と産前産後の居場所が必要との認識のもと、2020年には公募を実施し、それ以降、妊娠SOS相談窓口及び居場所の新設/拡充事業を支援してきた。
2023年度は日本財団の助成先(全18団体)の多くが助成最終年度を迎える中、本助成事業の成果を検証するとともに、現状の課題及び今後の改善点に係る調査分析も行い、この度、提言書として公表するに至った。
本書の概要
妊娠SOS相談窓口が必要とされる背景
- 0日死亡・0歳児死亡の背景にある母親の孤立化
- 「妊娠葛藤」を相談できる窓口の量的不足
- 妊娠葛藤以前に当事者が抱える様々な複合的な困難の存在
提言1:妊娠 SOS相談窓口の量・質の拡充に向けて
- 全都道府県に夜間対応可能な相談窓口の設置
- 専門性確保・向上の重要性の認知と十分な委託費の確保・支援
- 広報活動の重要性の認知と十分な委託費の確保・支援
- セキュリティ管理や分割委託の弊害を踏まえた、入札・委託条件の設定
提言2:妊娠 SOS相談窓口を機に「切れ目ない支援」に繋ぐため
- 居住地・住民登録地によらない支援体制の構築
- 個人情報保護の課題解消
- 妊産婦等生活援助事業の効果的運用(産前産後一貫して利用可能な居場所の普及)
- 退所後の地域生活移行に向けた支援拡充
- 妊娠葛藤に至らぬための幅広い施策
まとめ
日本では予期せぬ妊娠をした女性に対し、自己責任として厳しい視線が向けられる現状がある。そのような社会の中で、当事者は妊娠を誰にも言えず孤立し、結果として0日死亡事例等に繋がるという指摘もある。
このような予期せぬ妊娠を背景とする母子の生命と健康の危機を回避するために、日本財団の助成先である民間の妊娠SOS相談窓口が果たしてきた役割(貢献)が今回の成果検証を通じ確認された。また、各団体の調査協力のもと、各団体の実例や現場の課題などから見えてきた望ましい支援体制について提言を9点にまとめた。
本書に掲げた各提言が実現することで、今まで行政機関では捕捉しきれていなかった層を含め、妊娠葛藤を抱える女性に妊娠SOS相談窓口に辿り着いてもらい、そこで繋がった糸を切らさぬよう確実に必要な支援へ結びつける体制が整ってくるだろう。それにより、予期せぬ妊娠をするに至った背景として深刻な困難を抱えて生きてきた女性(とその児童)が妊娠を機に生活を再建・安定させ、自立していくことを「社会」が支えられるようになることが望まれる。
近年厚生労働省やこども家庭庁による妊産婦支援事業も徐々に手厚くなってきており、まさに今、2024年4月から施行される改正児童福祉法において「妊産婦等生活援助事業」が法制化されたことは大きな前進であるが国および各自治体においては同事業の効果的な運用のため本提言を今後の施策に反映することをお願いしたい。
参考資料(本提言書別紙)
関連リンク
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日本財団 公益事業部 子ども支援チーム(子どもたちに家庭をプロジェクト事務局)
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