船員養成の改善方策を提言船員の数・質の確保に向けた7つの改善方策を提言

日本財団は、わが国における船員養成の現状・課題の取り纏め・改善提言に向けた調査を実施しました。本調査は、短期的に実施可能かつ、実効性が見込める改善方策の抽出を主な検討範囲としました。

その結果、7つの改善方策の提言がなされました。

1. 船員養成を取り巻く要素

改善すべき要素の関係概観

  • 海運業界の抱える船員養成に関する課題解決に向け、改善対象となる要素を整理すると以下の通り。
  • 課題解決に欠くことができない必須な要素を、「特に重要な要素」とした。
画像「改善すべき要素の関係概観」概要図。理想の状態「船員の質の確保、船員の数の確保」に近づけるため、「船員養成課程の改革」の改善軸については、4つの要素「土台」、「教育内容」、「教育ツール」、「指導」がある。「土台」については、重要な要素として「予算」があり、そのほかにも制度(ルール・規定)がある。「教育内容」の要素については、重要な要素として「教育(訓練)カリキュラム」がある。「教育ツール」の要素については、重要な要素として「練習船」があり、そのほかにも「シミュレータ」や「寮」などの要素がある。「指導」の要素については、重要な要素として「教員」がある。また「人材呼び込み」の改善軸については、2つの要素「土台」、「社会的認知」がある。「土台」の要素については、重要な要素として「適切な働き方」がある。「社会的認知」の要素については、要素として「業界の魅力」があり、そのほか重要な要素として「職業認知度」がある。
改善すべき要素の関係概観

2. 改善方策(短期的に実施可能かつ実効性が見込める改善方策)

画像:「短期的に実施可能かつ実効性が見込める改善方策」についての提言。項目「(1)-1練習船新造」、「(1)-2 JMETS練習船隊の帆船の減船」。実施内容は、・練習船定員の維持、多科多人数配乗の回避、実習船運航・管理のコスト低減のため、老朽化対策としての汽船を新造するとともに、帆船を最低1隻減船することについて検討することが重要である。・JMETS乗船実習の配乗組換え・定員割り当て変更と組み合わせて実施することにより、JMETS航海実習における多科・多人数配乗の改善への寄与も期待できる。項目「(1)-3練習船実習の配乗組換え」、「(1)-4JMETS乗船実習における各養成機関への定員割り当て変更」。実施内容は、・多科・多人数配乗の回避のため、実習の配乗パターンを組み替えることで、異なるカリキュラム進度・級の学生の混乗や多人数配乗を更に減らす。 ・練習船新造・帆船の減船 (JMETS練習船隊の再編と組み合わせ、練習船隊の編成と現状の乗船実習への参加者数に合わせた配乗組換え・定員の割り当て変更を実施することで、多科・多人数配乗の改善に大きく寄与することが期待される。 項目「(1)-5 船員の働き方改革」。実施内容は、・船員の労働環境について、特に違法行為や不当な待遇の改善は一刻も早く取り組むべきものである。また、海運業界を持続可能なものとするため人材獲得競争力強化の観点からも船員の働き方改革が不可欠である。これまでも議論されてきており、各種取り組みが進められているところ、引き続き船員の働き方改革を推進し、違法行為の是正や海運業界の人材獲得競争力の強化を図る。項目「(1)-6 船上通信環境の整備」。実施内容は、・陸岸から離れた航路を取る場合、通信環境が著しく低下する。船上での生活が長く続く船員にとって、船上生活の充実の観点で、高速で遅延の少ない通信環境の整備が必要である。近年では特に若い船員の確保のために、船上での快適な通信環境は必須条件となっている。低軌道衛星を用いた通信サービスは廉価になりつつあり、一部外航船社は通信環境の整備に着手している。船上通信環境整備に対する金銭的支援を検討するなど、低軌道衛星通信の導入を促進する。項目「(1)-7 海運現場の見学・体験の機会創出/船舶職員との交流機会の創出」。実施内容は、・内航海運業界内においては、学生の業界への理解が不足していることによる就職後の離職率の高さについて問題意識が存在する(海運業界内での転職が多数)。・商船高専や水産高校においては船社へのインターンシップや学校OBからの情報共有が行われている。また、各船員養成機関において行われている取り組みの共有は学校間で行われる例もある。・海運現場の見学・体験機会、船舶職員との交流機会を創出する。これにより、業界・船社と新人船員のミスマッチを減らすことが期待できる。 項目(1)-1から4にかけては、新たに着手すべき事項、項目(1)-5から7にかけては、継続的な取り組みが必要な事項となっている。
短期的に実施可能かつ実効性が見込める改善方策

その他、詳しい調査結果についてはこちらをご覧ください。

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日本財団 海洋事業部

  • 担当:寺井・桔梗
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