インドネシア障害者の高等教育と雇用を調査実効性のある制度と社会意識の改革を提言

日本財団は、インドネシアの調査研究機関 PT Trisaka Wahana Tenggara に調査を委託し、同国における障害者の高等教育と雇用の現状を明らかにしました。

本調査は、障害のある人々が大学教育や就労の機会をどのように保障されているのかを検証し、今後の環境整備や支援の方向性を示すことを目的としています。

調査概要

2024年9月から2025年1月にかけて、デスクリサーチとインタビュー調査を実施しました。大学関係者、企業の人事担当者、障害当事者団体、政策専門家など、多様な立場の声を集めることで、制度面と現場の実態を多角的に分析しました。

主な調査結果

調査では、以下のような課題が明らかになりました。

  • 2022年時点で高等教育に進学した障害者は全体の2.8%にとどまり、2023年にフォーマルセクターで雇用されている割合も1%程度と低水準にあると報告されている。
  • インドネシアでは、障害者権利法(2016年法第8号)をはじめ、合理的配慮を定めた政令第13号(2020年)、障害学生支援室による就労支援を定めた政令第60号(2020年)、さらには教育文化研究技術省令第48号(2023年)など、障害者の教育・雇用の権利を保障する制度が整備されている。
  • しかし、これらの制度は十分に実施されておらず、監視体制も不十分なため、大学や企業における合理的配慮やアクセシビリティの確保は限定的である。
  • 社会には「慈善的な支援」の発想が根強く残り、障害を権利の問題として捉える視点が不足している。
  • 障害者を受け入れる姿勢を持つ大学や企業は増加していますが、偏見や差別によって進学分野や職務が制限されるケースも報告されている。

今後の課題と提言

報告書では、教育から雇用への移行を支えるために以下を提言しています。

  • 国立障害者委員会(Komisi Nasional Disabilitas)の権限・監視機能の強化
  • 大学における障害学生支援室(Unit Layanan Disabilitas)の設置と合理的配慮の徹底
  • 企業における雇用義務・合理的配慮の履行を促すインセンティブとモニタリング制度の整備
  • 社会全体の意識改革に向けた研修や啓発活動の推進

調査結果公開イベント

2025年1月、ジャカルタで調査報告の公開イベントを開催しました。教育機関、企業、障害当事者団体、行政関係者など計82名が参加し、課題と提言をめぐって活発な議論が行われました。イベントの様子は The Jakarta Post(2025年1月25日付 “No one left behind: Embracing disability inclusion in higher education, formal employment”)、Radio Republik Indonesia、Universitas Nahdlatul Ulama Yogyakarta などでも広く取り上げられました。

調査結果の公開

本調査の詳細については以下のリンクよりご覧ください。

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お問い合わせ

日本財団 特定事業部 障害インクルージョンチーム

  • 担当:和田、中川
  • メールアドレス:100_shougai_inclusion@ps.nippon-foundation.or.jp