日本財団「18歳意識調査」第30回テーマ:読む・書くについて
10月下旬から始まる読書週間を前に、日本財団は「読む・書く」をテーマに30回目の18歳意識調査を9月29日から10月5日にかけて実施。読書が好きな人は6割近くに上り、嫌いと答えた人は約1割に留まりました。月に読む本数は「1、2冊」が44.8%でトップ、「全く読まない」との回答も32.7%に上っています。好きなジャンルは「小説」62.6%、「漫画」49.9%、「ライトノベル」26.0%の順。コロナ禍で4人に1人が読書量が増えたとしています。新聞を読む人は32.7%で、2018年9月に実施した「第2回:新聞」の調査結果(47.5%)より14.8ポイント落ち込んでいます。読む時間は「5分以上10分未満」が44.3%で最も多く、次いで「5分未満」32.7%でした。
文章を書くことについては「好き」が29.4%、「嫌い」が27.7%と拮抗しています。文章を書くのが好きな人は、読書が好きな人や月に3冊以上読む人でさらに10ポイント以上高い傾向が出ています。近年、指摘される読解力の低下に関しては65.4%が「好ましくない」と答え、自身の読解力に関しては38.2%が「低いと思う」、33.7%が「低いと思わない」と答えています。

右:Q.月に本を何冊程度、読みますか。(n=1000)
調査結果ポイント
- 読書「好き」59.7% 「嫌い」12.8%
月に本を読む冊数「1、2冊」が44.8%で最多
全く読まない 32.7%
好きな本のジャンル
1位「小説」2位「漫画」3位「ライトノベル」
コロナ禍の影響「読書量が増えた」24.9% - 新聞「読まない」67.3% 「読む」32.7%
読む時間は「5分以上10分未満」44.3% - 文章を書くことが好き 全体29.4%
読書が好きな人39.4% 月3冊以上読む人46.2% - 投稿・書くことで特に好きなもの
「短文をSNSに投稿」24.0%
「写真を使ってSNSに投稿する」14.8% - 自身の読解力「低いと思う」38.2%「思わない」33.7%
本を3冊以上読む人は「思わない」48%
調査目的
今回の調査では、主体的な行動の原動力の一つに成り得る「読解力」および「文章力」に着目しました。過去の18歳意識調査を振り返りますと、設問に対する関心の低さや複雑な問題になると「わからない」という意見が増える傾向にあります。自身で考えることや意見を述べる姿勢が希薄に感じられ、同様の狙いで実施した9カ国調査でも「自分で国や社会を変えられる」と考える日本の若者は18.3%でダントツの最下位でした。また、「将来の夢を持っている」「国に解決したい社会課題がある」という質問に対する回答も他国と比べて30%近く低い数字でした。実際に投票率が約四半世紀ぶりに50%を割り込んだ昨年の参院選でも10代の投票率は32.28%にとどまり、数字を見る限りでは社会参加の意識は低いと受け取れる結果となりました。
OECDが2018年に実施した国際学習到達度調査(PISA)でも、日本の読解力は世界15位に低下しています。結果では、18歳意識調査で感じている疑問と同様に「読解力の自由記述形式の問題において、自分の考えを他者に伝わるように根拠を示して説明することに、引き続き、課題がある」と指摘されています。調査手法の変更もあり一概に読解力が低下しているとは言えませんが、これを契機に若い世代の「読むこと」「書くこと」に重点を置いた調査を実施しました。
有識者コメント
かえつ有明中・高等学校副教頭 佐野和之氏
調査では本を読む冊数が多いほど文章を書くことが好きな割合が高かった。多くの本に触れることで多様な表現に接し、自身が伝えたい想いや感情を表す方法をいくつもストックしているからかもしれない。興味や関心が生じた際、主体的行動を起こすには何かしらの取っ掛かりが必要である。読書という行為は本の中の具体同士を抽象レベルで結びつける力も養うため、主体的行動のためのフレームづくりになっていると考えられる。さらに、情報を取得する際の読書がテレビやSNSとは異なり能動的な姿勢を要することから、本を読むという行為自体が主体性の強化になっており、教育の現場では本を活用した学びが益々必要とされるのではないだろうか。
OECD教育・スキル局 シニア政策アナリスト 田熊美保氏 アナリスト 鈴木文孝氏
今回の調査では、読書が好きな人ほど文章を書くことが好きな割合が高いことが指摘され、「読むこと(インプット)」と「書くこと(アウトプット)」の関係に着目した点が興味深い。私たちOECDが推進しているOECDラーニング・コンパス(学びの羅針盤)では、未来に必要なコンピテンシー(資質・能力)を定義しており、読解力・文章力は学びの中核的な基盤(core foundation)の一つと位置付けている。その際、目的意識・当事者意識が、「読み・書き」の主体として重要だと考えている。この点に関連して、今回の調査では、オンラインも含めて新聞を読んでいない18歳が67.3%を占めているが、これからの社会ではフェイクニュースなどを見分けることのできるメディアリテラシーやデータリテラシーが益々重要になってきており、そのためには、新聞を含めて様々なタイプの文章やデータを事実と意見を区別しながら批判的に読み解く力を育むことが大切である。



調査の概要
調査対象 | 全国の17歳~19歳男女 |
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調査除外 | 下記の関係者は調査から除外 印刷業・出版業/マスコミ・メディア関連/情報提供サービス・調査業/広告業 |
実施期間 | 2020年9月29日(火)~10月5日(月) |
調査手法 | インターネット調査 |
第30回18歳意識調査「テーマ:読む・書く」について報告書
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第30回18歳意識調査「テーマ:読む・書く」要約版(PDF / 2MB)
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第30回18歳意識調査「テーマ:読む・書く」調査報告書(PDF / 2MB)
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第30回18歳意識調査「テーマ:読む・書く」自由回答集1 読書は好きか(PDF / 700KB)
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第30回18歳意識調査「テーマ:読む・書く」自由回答集2 本を読む媒体(PDF / 555KB)
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第30回18歳意識調査「テーマ:読む・書く」自由回答集3 特に好きなこと(PDF / 604KB)
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第30回18歳意識調査「テーマ:読む・書く」自由回答集4 自身の読解力は低いと思うか(PDF / 398KB)
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第30回18歳意識調査「テーマ:読む・書く」自由回答集5 あなたを含め日本の若者の読解力を向上させるためには、どうすれば良いでしょうか(PDF / 695KB)
関連リンク
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