トンガ沖の海底火山、噴火後初の調査(第一弾)を実施火山周辺海域の変化や生態系の現状を発表

日時:2022年5月23日(月)10:00~11:00
場所: ニュージーランド国立博物館、ウェリントン、ニュージーランド
(対面とオンラインのハイブリッド形式)

日本財団と国立水圏大気研究所(NIWA)は、2022年1月に大規模噴火を起こしたトンガ沖の海底火山、フンガ・トンガ-フンガ・ハアパイ周辺海域の第一弾の調査結果について、5月23日(月)に記者発表会を開催しました。
4月9日から5月6日にNIWAの調査船による有人調査を実施し、その調査から明らかになった噴火の特徴、海底火山と周辺海域の地形の変化、火山灰の堆積量や範囲、周辺海域の生態系の現状について発表を行いました。
今後、調査の第二弾として6月中旬から7月中旬にかけて無人水上艇(USV)による火口周辺の無人調査を行い、今回得られたデータと合わせて分析を行います。噴火の影響を理解することで、海を重要な資源とするトンガの復興に貢献するだけでなく、日本を含む多くの国々の災害の備えにつなげることを目指します。

以下、発表内容の要点となります。

有人調査の実施内容

  • 期間:2022年4月9日~5月6日
  • 対象:フンガ・トンガ-フンガ・ハアパイ周辺海域(火口周辺の立入禁止区域以外)
  • 内容:
    • マルチビームソナーによる火山の側面および周辺海底のマッピング
    • 地質等調査(堆積物、海水、岩のサンプリングと解析)
    • 高性能水中カメラによる火山と周辺海域、生物の動画・画像撮影

有人調査の主な調査結果

噴火の特徴

  • 火山上部の斜面に確認された侵食痕の形状から、火砕流(灰や軽石、ガスが混じった非常に高温・高速度の流れ)が発生したことが裏付けられた。火山から20km以上離れた場所にも大きな堆積波があることから、火砕流は山頂から遠く離れた場所まで到達したことがわかった。

海底火山と周辺海域の地形の変化

  • 噴火の規模から火山の形が大きく変化していることが想定されていたが、噴火により一部が吹き飛ばされた火口付近以外、ほぼそのままの形で残っていた。一方で、周辺エリアは大きく変化していた。
  • 本調査では火山周辺の計22,000km2の海底地形データを収集した。噴火前(2016年)に収集した同エリアのデータと比較したところ(図1)、調査したエリアのうち約8,000km2の地形に変化が生じたことが判明した。
    約7km3の新たな堆積物が調査エリアの海底で確認された一方で(図1の赤い部分)、約2-3km3が海底から失われており(図1の青い部分)、残りの4km3については山頂の火口付近から失われたと想定されている(火口の地形については今後実施される無人調査にて把握される見込み)。
図
図1:噴火前と後の地形を比較し、堆積の差を色で表した3Dモデル

生態系への影響

  • 火山の側面や火砕流の流路と一致する火山から南西および北西に伸びる深い斜面では、生物が確認されなかった(写真1、図2の「×」で示されている箇所)。
  • しかし、噴火の影響を直接受けた場所から15kmほど離れた海山の頂上では、多様で豊富な魚類群が見られたとともに、海山の斜面にサンゴなどの無脊椎動物が確認された(写真2)。魚については移動したものが戻ってきた可能性が考えられる一方で、無脊椎動物は成長が遅いことから、噴火から調査の間に確認された状態まで育つことは不可能なため、噴火を生き延びたと結論付けられた。なお、調査範囲内の最南端の海山では熱水噴出孔周辺に生息するイガイ(ムール貝の仲間)の群れが一部火山灰に覆われながらも健康な状態で2007年に調査した場所と全く同じ場所に生息していた(写真3)。これらの調査結果は底生動物の環境への適応性を示しており、今後の生態系の回復予測に役立つ。
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図2:フンガ・トンガ-フンガ・ハアパイ周辺海域の生物生息マップ
写真
写真1:火山の側面(写真右)や火砕流の流路(写真左)では生物が確認されなかった
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写真2:火山から少し離れた海山等で確認されたサンゴや魚群
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写真3:一部火山灰に覆われながらも健康な状態で発見されたイガイの群れ

噴火後の火山活動

  • 水深200m地点からおよそ15m下に伸びる火山灰の層が確認された。灰の密度が火口の北付近で最も高く(図3)、火山から離れるにつれ低下したことに加え、密度が高いエリアで熱異常が感知されたことから、ごく小規模ながら火山性物質が火山から噴出され続けていることが判明した。しかし、今後しばらくの間は大きな噴火が起こるリスクは低いと予測されている。
図
図3:火山灰の層が確認されたエリア

今後の予定

  1. 無人水上艇(USV)による火口周辺の無人調査
    • 期間:2022年6月~7月(30日間)
    • 場所:海底火山火口上および周辺海域(火口周辺の立入禁止区域内)
    • 内容:当該エリアのマッピング
  2. 調査船およびUSVにより得られたデータの分析・調査結果発表

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日本財団 海洋事業部 海洋環境チーム

  • 担当:長谷部
  • メールアドレス:m_hasebe@ps.nippon-foundation.or.jp