ウクライナ避難民の生活費等支援を2,000人へ拡大 避難民の65%が日本長期滞在を希望

日本財団は、4月に開始したウクライナ避難民に対する生活費等の支援策の対象人数を当初の2倍の2,000人に拡大することに決めました。22年3月28日に発表した支援と合わせ、支援総額は85.8億円となる予定です。
既に1,600人を超える避難民が来日し、7月27日時点で1,321人分の申請を受理しています。ウクライナにおける戦況が長期化する中、今後も当財団への申請が増えることが予想されることから、支援人数の拡大を決定しました。
また、日本財団へ渡航費や生活費の申請を行った避難民を対象にアンケート調査を行った結果、65.1%の避難民が引き続き日本滞在を希望しています。必要なニーズとしては「日本語教育」が65.8%で最も多くなりました。また、26.9%が「眠れないことがある」「孤独を感じる」と回答するなど精神面でのサポートの必要性を示唆しています。日本財団では、既にNPO等への助成プログラムを通じて、ウクライナ避難民へ日本語学習機会を提供する事業や、オンラインでの心理カウンセリングを提供する事業などを支援していますが、今後これらの支援を拡大していく予定です。

写真
左から日本財団常務理事笹川順平、身元保証人オレナさん、オレナさんの母親イリーナさん、ナタリアさん一家、日本財団会長笹川陽平

コメント(抜粋)

日本財団常務理事 笹川順平

調査結果から、色々な不安、日本で暮らしていこうとするときの課題が見えてきております。
課題においてだけ述べさせていただきますが、やはり言語の壁というものが日本おいて生活する上で非常に難しい。これは単純に日本語を習ってくださいという支援が、本当に正しいのかどうかというのは、我々もよく考えなくてはいけないと思っています。もっと通訳の方々を活用して職についていただいて、言語ができなくてもできる職というのはあると思います。働きたい、働ける方々がたくさんいらしてくれていますので、社会の一員としてお招きできればという風に思っております。

写真:笹川順平

ウクライナ避難民 ムリヤフカ・ナタリア(Muliavka Nataliia)さん

3月26日に日本に到着し、最初はとても戸惑いました。環境が変わり、言葉ができない、知人もいない、という困難に直面しました。スーツケース一つで来ましたが、生活をしていくとものが増えてきます。今は叔母のところに住んでいますが、私たち家族だけで住みたいと考えています。公営住宅に住みたいのですが、今住んでいる横浜には公営住宅がありません。もし別の場所に引っ越すとなると、娘たちは転校しないといけない。ただでさえウクライナから移動してきているので、子どもたちにまた転校させるのは避けたいと考えていたところ、日本財団の支援をいただくことになり、近くのアパートに引っ越すことを考えている。自分たちの好きな場所の住宅を選べることはありがたく、大変感謝しています。

写真:ムリヤフカ・ナタリア(Muliavka Nataliia)さん

身元保証人として、母親を呼び寄せたスヴィドラン・オレナ (Svidran Olena)さん

言語の壁が大変です。母親は最初の1カ月は家に閉じこもっていました。最近は少しずつ、コンビニやスーパーへの買い物をお願いして出てもらっています。母には、社会の中での居場所が重要だと思います。短期と長期滞在は全然違います。自分の生活のリズムがないと、精神的にストレスが溜まります。来日した、翌週からは日本語のオンライン授業を受けてもらっています。最初は嫌だったようですが、日本の先生も優しく、3カ月の間でひらがなを読んだり、簡単な日本語を話したりしてくれるお母さんの姿を見て嬉しいです。日本語の壁を乗り越えることは、活路になると思っています。

写真:スヴィドラン・オレナ(Svidran Olena)さん

日本財団会長 笹川陽平

既に申請者は1000人を超えています。毎日のように来日を希望する人から日本財団へ相談がきているという実情に鑑みて、新たに1000人への支援を決定しました。
お金を支援するだけでなくプラットフォームを作り日常的に交流と相談ができる人道支援活動を行っていきたいと思います。本来であれば政府による国家的事業が必要と考えますが、日本財団は国際人道支援を中心に仕事をしていることもあり、本件についても引き続き努力をしていきたいと思っています。

写真:笹川陽平

追加支援の概要(予定)

3/28発表 今回発表 合計(予定)
渡航費の支援 3億円
30万円×1,000人
渡航費(実費)は現時点で平均15万円/1人のため、今回の予算追加なし 3億円
生活費の支援 30億円
100万円/年×1,000人×3年
  • 生活費の支援は、1家族あたり300万円上限
30億円
100万円/年×1,000人×3年
  • 生活費の支援は、1家族あたり300万円上限
60億円
住環境整備の支援 2.5億円
50万円×500戸
5億円
50万円×1,000戸
7.5億円
NPOへの支援 15.3億円
(3年分の予算)
15.3億円
50.8億円 35億円 85.8億円

避難民へのアンケート調査結果概要

Q 帰国の意思、希望を教えてください

質問「帰国の意思、希望を教えてください(単位:%)」の棒グラフ。ウクライナの状況が落ち着くまでは、しばらく滞在したいと答えた人は65.1%。日本の環境によって判断したいと答えた人は25.0%。未定、わからないと答えた人は7.8%。なるべく早く帰国したいと答えた人は2.2%。

Q あなたにとって重要なニーズ/サービスを5つまで選択してください。

質問「あなたにとって重要なニーズ/サービスを5つまで選んでください(単位:%)」の棒グラフ。日本語教育と答えた人は65.8%。就職機会、職業訓練と答えた人は55.8%。医療と答えた人は51.5%。いつでも相談できる窓口と答えた人は38.8%。日本人の仲間づくりと答えた人は37.3%。遊び、観光と答えた人は35.8%。ウクライナ人同士の仲間づくりと答えた人は30.0%。子どもの学習支援/日本語教育と答えた人は16.5%。高等教育の機会と答えた人は15.0%。精神的サポートと答えた人は14.2%。オンライン通訳と答えた人は8.8%。

Q 次のうち、現在日本国内で支援が不足していると思うものを5つまで選択してください。

質問「次のうち、現在日本国内で支援が不足していると思うものを5つまで選択してください。(単位:%)」の棒グラフ。就職機会、職業訓練と答えた人は38.5%。日本語教育と答えた人は26.9%。医療と答えた人は22.7%。いつでも相談できる窓口と答えた人は19.6%。遊び、観光と答えた人は18.1%。日本人の仲間づくりと答えた人は18.1%。高等教育の機会と答えた人は11.5%。子どもの学習支援/日本語教育と答えた人は11.5%。ウクライナ人同士の仲間づくりと答えた人は10.4%。精神的サポートと答えた人は10.0%。オンライン通訳と答えた人は8.1%。

Q 不安や困っていることはありますか。当てはまるものにチェックを入れてください。(複数選択可)

質問「不安や困っていることはありますか?当てはまるものにチェックを入れてください(単位:%)」の棒グラフ。眠れないことがあると答えた人は26.9%。孤独を感じると答えた人は25.0%。体調を崩していると答えた人は8.8%。食欲がない/食べ過ぎてしまうことがあると答えた人は7.3%。普段よりイライラしてしまうことがあると答えた人は0.4%。

Q 困った時に相談できたり、支援をしてくれる団体はいますか?当てはまるもの全てを選択してください。

質問「困ったときに相談できたり、支援をしてくれる団体はいますか?当てはまるものすべてを選択してください。(単位:%)」の棒グラフ。身元保証人と答えた人は85.4%。自治体と答えた人は51.2%。身元保証人以外のウクライナ人と答えた人は32.3%。身元保証人以外の日本人と答えた人は22.7%。NPOと答えた人は16.5%。学校、大学と答えた人は10.4%。企業と答えた人は5.0%。いないと答えた人は2.7%。

調査概要

調査対象 当財団に申請した来日ウクライナ避難民
調査時期 2022年6月13日~7月27日(継続実施中)
回答数 260(7月27日18時時点)
  • SAPジャパン株式会社およびクアルトリクス合同会社により無償提供されたウクライナ避難民支援プラットフォームを活用

関連リンク

お問い合わせ

リリースに関するお問い合わせ

日本財団 経営企画広報部 広報チーム

  • メールアドレス:pr@ps.nippon-foundation.or.jp

事業に関するお問い合わせ

日本財団 ウクライナ避難民支援室

  • メールアドレス:support_ukraine@ps.nippon-foundation.or.jp