日本財団、豊田市と日本意思決定支援ネットワークが連携し、「意思決定支援事業」に関する協定を締結障害者・認知症高齢者等が、「自らの意思」を反映した生活を送るために

日本財団は、2022年10月25日、豊田市及び(一社)日本意思決定支援ネットワークと、障害者・認知症高齢者等の意思決定支援事業に関する連携協定を締結しました。
本事業は、障害者や認知症高齢者等で判断能力が十分ではない人が、地域生活や社会参加を継続していくために自らの意思を表明し、自分らしく生きていくための意思決定を支援する仕組みを構築・実践することを目指します。

日本財団の支援内容

日本財団は、これまで意思決定支援(※1)に関する海外の先駆的取り組み例の紹介や周知、日本への導入に向けたモデル開発支援等の啓発活動を行ってきました。今回、自治体における意思決定支援の枠組み構築及び実践を目指して、豊田市及び日本意思決定支援ネットワークとの連携協定を締結しました。

  • 1:意思決定支援とは、障害者・認知高齢者等で自ら意思を決定することが困難な人が、日常生活や社会生活に関して自らの意思が反映された生活を送ることが可能となるように、本人の意思確認や選好を尊重する支援の行為及び仕組みを指します。

今後の予定

2022年度は、豊田市における支援の枠組み構築・実践の実証実験を行い、2023年度以降枠組みの効果検証・見直しや、全国での実践例を増やしていきます。日本財団は、今後も豊田市をはじめとした複数の自治体におけるモデル事業を支援し、最終的には意思決定支援に関する政策提言に繋げていく予定です。

意思決定支援を必要とする可能性のある障害者・認知症高齢者の数

人数
認知症高齢者 約500万人※1
知的障害者 108万2千人※2
精神障害者 419万3千人※2
  • 1:厚生労働省老健局、平成27年(2015)
  • 2:内閣府、令和元年(2019)版障害者白書
写真
記者発表の写真(左から、吉倉常務・太田市長・名川代表理事)

登壇者コメント

日本財団 常務理事 吉倉和宏

知的障害や認知症を抱える方々の中には、「自分のことを自分で決める」事が叶わないケースが多く存在します。日本財団は、このような方々が適切な支援を受け、「自分で決定できる社会」を目指します。SDM-Japanが当財団とともに体系化してきた支援技術について、この度豊田市が実践の場を提供下さることとなりました。今後、実践事例を充実しながら、支援の制度化に向けた提言をしていきます。

豊田市 市長 太田 稔彦

障害者や高齢者が地域で安心して暮らすためには、健康な時期だけでなく、支援が必要な時期を合わせた「幸福寿命」の増進が重要です。このことについて、本市では、ご本人自らがどう暮らしたいかを決める「意思決定支援」の推進が必要であると考えており、全国の自治体に先駆けて仕組みづくりを行うため、連携協定を締結しました。今後は、この協定により取り組みの充実を図り、「幸福寿命」を全うできるまちづくりをさらに進めてまいります。

日本意思決定支援ネットワーク 代表理事 名川勝

協定書にあるように、本事業は意思決定支援を基盤とする権利擁護支援の仕組みづくりを行うとされています。自分の意思や選好を表しそれらを追求していける地域社会をつくるには、継続的な関わり合いや本人主権を大切にする支援体制が必要です。日本意思決定支援ネットワークは、日本財団の助成により意思決定支援に関する研修プログラム開発や啓発を進めてきました。本事業ではその成果を活かし、日本ではまだ不十分な権利擁護支援の推進に寄与していきます。

取り組み概要

画像:障害者・認知症高齢者等の意思決定支援事業の概要図。豊田市は「実証の場」として、豊田市地域生活意思決定支援事業の実施(仕組みづくり、各種調整、厚労省モデル事業応募など)、ならびに豊田市成年後見・法福連携推進協議会(本会議、身寄りのない方への支援のあり方部会、モデル事業作業チーム)の運営を行う。日本意思決定支援ネットワーク(SDM-Japan)は「ノウハウ提供」として、プロジェクトの各ワーキング・グループ運営を通じた事業実施支援(各種研修、各種支援、会議等への同席、必要に応じた助言など)、ならびに事業の評価の仕組みづくり及び効果測定(海外事例調査を含む)や、事業に関する政策的啓発(シンポジウム等)の企画・運営を行う。日本財団は「全国展開」として、先駆的実践事例の構築、先駆的事例に関する評価、意思決定支援に関する仕組みの研究、国への政策提言を行う。
障害者・認知症高齢者等の意思決定支援事業の概要図

障害者・認知症高齢者等の意思決定支援について

2006年に国連で障害者の権利に関する条約が締結され、日本は2014年に批准しました。しかし、2022年8月に、国連による日本政府に対する初回の審査が行われ、成年後見制度などにおける代理決定への懸念が示されると同時に、支援付き意思決定の仕組みを確立するよう勧告がなされました。周囲の人による決定ではなく、当事者の意思を尊重する、これまでとは別の支援の枠組みを作っていくことが重要です。

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