世界初ゼロエミッション運航実証に成功【日本財団ゼロエミッション船プロジェクト】
船舶分野のカーボンニュートラル推進に期待

日本財団は、「ゼロエミッション船プロジェクト」の一環で、2024年3月26日から4月4日の期間で、北九州市小倉港で水素燃料電池を搭載した洋上風車作業船「HANARIA(ハナリア)」による、CO2排出ゼロのゼロエミッション運航の実証実験を行い、航行に成功しました。水素燃料電池を搭載した洋上風車作業船での、CO2を一切排出しないゼロエミッション運航は世界初です。また、HANARIAは、総トン数20トン以上の船舶としては、国内初の水素燃料電池船です。

日本財団は、2050年までに、日本の運輸部門のCO2排出量の5%を占める内航海運からのCO2排出量をゼロにすべく、国内におけるゼロエミッション船の技術開発への更なる機運を醸成し、次世代に豊かな海を引き継ぐための施策を進めていきます。本プロジェクトの推進は、2050年のカーボンニュートラル社会の実現に大きく貢献するものです。

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ゼロエミッションの運航を行った「HANARIA」
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洋上風力発電への現地視察にも活用予定

CO2を排出しないゼロエミッション船は、世界中で喫緊の課題であるカーボンニュートラル社会の実現を強力に推進するだけでなく、日本が世界的に高い技術レベルを有する水素技術やエンジン技術などを活かすことができる次世代の船舶です。

日本財団が推進する「ゼロエミッション船プロジェクト」は、2022年1月より、世界に先駆けて水素燃料を搭載した船舶(ゼロエミッション船)を開発してきました。3つのコンソーシアム(※複数の民間企業体)のうち、今回のHANARIAが最初の実証実験となります。

  • 日本財団調べ(2024年3月時点)。水素燃料電池を搭載した洋上風車作業船によるゼロエミッション実証例として「世界初」

「水素燃料電池・洋上風車作業船コンソーシアム」実証実験概要

概要 本コンソーシアムでは、洋上風力発電施設への人員輸送や関係者の現地視察・見学等に利用可能な旅客船「HANARIA」(全長33m、総トン数248トン)に水素燃料システムを搭載し、小倉港から白島沖洋上風力発電施設間の往復約30kmのゼロエミッション航行を実施しました。出発から到着までを水素燃料による運航で、航行中のCO2排出ゼロを実証しました。
参画団体 MOTENA-Sea(全体統括)、商船三井テクノトレード(プロジェクト事業化検討)、本瓦造船(水素燃料船の設計・建造)、関門汽船(運航)、大陽日酸(水素供給・調達)
実証航路 小倉港(砂津桟橋)~白島沖洋上風力発電~小倉港(砂津桟橋)
画像:小倉港から白鳥沖洋上風力発電施設間の往復約30km、約3時間のゼロエミッション航行経路図

事業の背景、船舶分野におけるカーボンニュートラルの取り組み

わが国の2019年度のCO2排出量のうち、運輸部門からの排出量は2億600万トン(全体の18.6%)であり、そのうち内航海運は約1,025万トン(全体の5%)となります。※1
2015年パリで開催されたCOP21(国連気候変動枠組条約締約国会議)でパリ協定を採択し、それにより、世界的に脱炭素化に向けた動きが加速しています。国際海事機関(IMO)は、2023年7月に、国際海運からの温室効果ガス(GHG)排出削減目標を「2050年頃までに排出ゼロ」としました。わが国においても、菅義偉前首相は2020年10月に、成長戦略の柱として「経済と環境の好循環」を掲げており、2050年までに温室効果ガスの排出量を実質ゼロ(2050年カーボンニュートラル社会の実現)を目指すと、所信表明演説で発表しています。
これらの流れの中、海事分野においても、内航船からのCO2排出量を2050年までにゼロにすべく政策を進めていくことが必要です。その手法の一つが「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」14分野の1つである、船舶産業の実行計画にも位置づけられたカーボンフリーな次世代燃料への転換(次世代燃料船の導入)です。

  • 1:国土交通省海事局「内航カーボンニュートラル推進に向けた検討会」(2021年)
画像:「船舶分野におけるカーボンニュートラルの取り組み」概要図。画像左側に、「日本の内航船CO2排出量」「2019年では約1,025万トン」「2050年目標では排出量0トン」の文字。画像右側に「カーボンニュートラル社会とは、温室効果ガスの排出量-森林などの吸収量=実質ゼロの社会(日本は2020年にカーボンニュートラル社会実現を宣言)」「・カーボンニュートラル実現の必須技術が、移動時にCO2を排出しない『ゼロ・エミッション』、・日本財団は、水素燃料を活用した『ゼロ・エミッション船』を開発し、カーボンニュートラル社会実現に貢献する」の文字。

今後の予定

水素専焼エンジンを搭載したゼロエミッション船の開発実証を2026年度に予定しております。

【本リリース】水素燃料電池洋上風車作業船コンソーシアム 【2026年度】水素エンジンゼロエミッション船コンソーシアム 【2026年度】水素エンジン搭載タンカーコンソーシアム
(株)MOTENA-Sea他4社 ジャパンハイドロ他11社 ヤンマーパワーテクノロジー他5社
水素燃料電池を搭載した洋上風車作業船のゼロエミッション運航実証 写真:水素燃料電池を搭載した洋上風車作業船 水素専焼エンジンを搭載した旅客船による実証運航及び水素燃料供給システムの開発実証 写真:水素専焼エンジンを搭載した旅客船 水素高速エンジンを搭載したタンカーによるゼロエミッション運航実証 写真:水素高速エンジンを搭載したタンカー
  • 船体色はイメージ

記者発表会関係者コメント(一部)

海野 光行(日本財団 常務理事)

二酸化炭素を排出しないゼロエミッション船は、2050年カーボンニュートラル社会実現の切り札となるものです。日本の高い技術力で、世界の船舶のゼロエミッション化を牽引していきたいと思います。

髙尾 和俊(㈱MOTENA-Sea 代表取締役社長)

HANARIAは、2050年カーボンニュートラル社会の実現に向け、水素エネルギーを活用したゼロエミッション船建造の先駆けとなるものです。ぜひ、多くの方に本船に乗船いただきたいと思います。

濱村 芳彦(トヨタ自動車㈱ 水素ファクトリー Chief Project Leader)

今回の取り組みでは、実証実験に留まらず商業運航にも挑戦し、また関係各者への積極的に働きかけをされた関係者の皆さまの熱意に敬意を表します。水素社会の実現とは、技術の開発だけではなく、まちづくり・社会づくりという大きな目標ですので、皆さまと共に歩みを進めて参りたいと思います。

  • トヨタ自動車は本船に搭載した水素タンクを開発協力

武内 和久(北九州市長)

先進的な実証実験が北九州市で行われたことに厚く御礼を申し上げます。北九州市は、今後も、需要と供給の両面から水素の普及に取り組み、「2050年ゼロカーボンシティ」と「企業の競争力強化」の両方の実現を目指して参ります。

日本財団ゼロエミッション船プロジェクト ~温室効果ガス排出ゼロの未来の船を開発する~

日本財団は2022年1月よりゼロエミッション船プロジェクトを実施しています。本プロジェクトは、2050年に内航分野におけるカーボンニュートラルを実現するために、世界に先駆けて水素を燃料とした船舶(ゼロエミッション船)を開発し、実証実験を行います。2026年度末までの期間に、3つのコンソーシアム(※複数の民間企業体)と共同で、実証実験を実施する予定をしています。
ゼロエミッション船の開発は、世界中で喫緊の課題であるカーボンニュートラル実現を強力に推進するだけでなく、日本が世界的に高い技術レベルを有する水素技術やエンジン技術などを活かすことができる「未来の産業」として期待がされています。

日本財団ゼロエミッション船プロジェクトのロゴ

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