取り残された13万人、不登校の子ども支援へ新たな一手。日本財団とNPOカタリバが4自治体と実証事業開始・連携協定を締結

日本財団は、支援から取り残されている不登校児の数を減少させることを目的に、認定特定非営利活動法人カタリバ(本部:東京都中野区、代表理事:今村久美、以下カタリバ)への助成を通じて、青森県三沢市、東京都国分寺市、広島県三次市、鹿児島県大崎町の4自治体に対し、不登校の子どもを学び・支援につなぐ新たな実証事業「不登校政策ラボ」をスタートします。その一環として、10月2日(火)に日本財団ビルにて、日本財団・カタリバ、青森県三沢市、東京都国分寺市、広島県三次市、鹿児島県大崎町と連携協定を締結しました。この連携を通して、不登校支援に課題を抱える自治体をサポートし、一人でも多くの子どもたちが学び・支援につながることを目指します。

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連携協定書締結式の様子

日本財団・カタリバが自治体の不登校支援をサポート。4自治体と連携協定を締結

日本財団は、学びの多様化学校やフリースクールの支援、地域で困り感のある子どもを支える「子ども第三の居場所」づくり、不登校傾向調査等、日本各地のNPOや自治体、研究機関と連携して、さまざまな切り口から不登校支援事業を行ってきました。
カタリバでは、2015年から雲南市の委託を受け教育支援センターを運営し、2022年からは加賀市の包括的な不登校政策の提案や施策実施に取り組むなど、自治体と連携して不登校支援を行ってきました。
前述のような状況を受け、現場サポートと調査研究の両面から不登校支援に取り組んできた日本財団と、官民連携での不登校支援に取り組んできたカタリバが協働。人口規模の異なる4つの自治体と、不登校支援の施設や機関を整備するだけではなく、不登校の子どもたちをどう学びに”つなぐ”かを官民連携で実証する事業「不登校政策ラボ」をスタートします。各自治体で独自の不登校対策や、民間団体と協働する事例はありますが、複数の自治体と不登校に関わる政策を実証する枠組みは全国的にも新しい試みです。
参加自治体を募集し、応募があった自治体の中から「青森県三沢市」「東京都国分寺市」「広島県三次市」「鹿児島県大崎町」が今回の事業に参加することが決定しました。

各自治体の取り組みについて

  • 【青森県三沢市】
    福祉部門へ不登校に関わる相談が増加。教育と福祉の連携による包括的な支援を模索する。
  • 【東京都国分寺市】
    不登校の子どもたちの状況把握と接続強化に取り組む。また、フリースクールと教育委員会・学校の連携を強化する。
  • 【広島県三次市】
    地理的制約から支援機関へのアクセスが困難なケースも多い。オンライン活用や新たに開設する学びの多様化学校の整備に取り組む。
  • 【鹿児島県大崎町】
    訪問支援を担う人材の不足や、不登校児童・生徒の保護者が孤立しやすい状況が懸念されている。地域住民と連携した不登校支援の取り組み、行政・住民の垣根を越えた協働モデルの構築を試みる。

上記のような取り組みによって子どもたちを支援につなぐべく、カタリバ、日本財団と今回の事業へ参画する各自治体の三者でそれぞれ連携協定を締結し、包括的な不登校支援のサポートに取り組みます。本日10月2日(木)に日本財団ビルにて連携協定書締結式を開催しました。

連携協定の内容

協定に基づき、下記の内容について連携・協力を進めてまいります。

  1. (1)不登校児童・生徒の子どもへの教育支援施策に関すること
  2. (2)不登校児童・生徒の子どもとその保護者の相談体制、支援環境の整備に関すること
  3. (3)教育に関わる人材の活用と育成に関すること
  4. (4)その他連携が必要と認める事項

13万人超が何の支援にもつながらず。学びの受け皿は広がるも、新たに見えてきた支援の課題は「つなぐ」こと

文部科学省による2023年度の調査で不登校長期欠席の人数が約49万人(※1)と最多を更新する中、地方自治体や学校、民間団体がさまざまな支援に取り組んでいますが、不登校の子どもたちの約4割にあたる13万人超は何の相談・指導も受けていない(※1)など、すべての子どもたちが学びにつながれている状態にはありません。
文部科学省や自治体もさまざまな政策を実施しており、教育支援センターの機能強化、学びの多様化学校や校内教育支援センターの設置促進などが進んでいます。しかし、学校と家庭に溝があり支援機関の紹介が進まない、保護者は支援を受けたくても子どもがそれを望まない、学校と保護者、子どもの意見を汲み取って適切な支援方法を提案するスクールソーシャルワーカーが不足しているなど、受け入れ機関の整備だけでは子どもたちが支援につながることは難しく、子どもたちを支援に「つなぐ」ことが不登校支援の新たな課題となっています。
また、フリースクールの費用の一部助成などが始まっている自治体もありますが、経済的に困難を抱える家庭ではフリースクールに通うこと自体も難しい状況です。誰一人取り残さずに学び・支援を届けるためには、公的機関における支援につなぐサポートを充実させる必要があります。

代表コメント、メッセージ

日本財団常務理事 佐藤英夫

現在、子どもの出生数が減少する一方で、児童虐待通報や不登校は増加し、子どもの自殺や貧困など、子どもたちを取り巻く課題は深刻さを増しています。こうした状況の中、不登校支援に携わる方々と力を合わせることで、より効果的な支援策を生み出せるのではないかという想いから、本プログラムを立ち上げることになりました。不登校支援の第一人者であるカタリバと不登校問題に本気で取り組みたいと考える自治体の皆さまと共に、具体的な解決策を探求し、さらにこの取り組みを検証し、その成果を全国に広げていくことも目指していきます。

写真:佐藤英夫

認定NPO法人カタリバ代表理事 今村久美

今、不登校の子どもたちへの支援は新たな局面を迎えています。さまざまな支援が増えていく中で、どのようにして子どもたちをそれに「つなぐ」か。この課題に日本財団、各自治体のみなさんと一丸となって取り組めることをうれしく思います。「誰一人取り残さず支援・居場所・学びにつなぐ」を本当に実現していくために、ここをスタートとしながら誠心誠意力を尽くしたいと思います。

写真:今村久美

青森県三沢市市長 小檜山吉紀氏

全国と同様、本市においても不登校児童生徒が増加傾向にありますが、背景には家庭環境を含めた様々な要因が隠れていることが少なくありません。本市では、すべてのこどもの学びの保障とウェルビーイングの実現を目指し、教育と福祉の連携を強化してまいります。そして、児童生徒と保護者が抱える悩みや不安に寄り添い、地域の関係者とともに包括的で切れ目のない支援を届ける仕組みを築いてまいります。

写真:小檜山吉紀

東京都国分寺市教育委員会教育長 古屋真宏氏

近年、本市では、不登校児童・生徒数が増加傾向にあり、すべての児童・生徒とその保護者の皆さまを適切な相談・支援機関につなぎ、誰一人取り残されない学びの保障に向けた対策が重要となっています。専門的な知見とノウハウをもつ両団体とともに、不登校の児童・生徒を支えるご家族も含めた包括的で効果的な不登校支援体制の構築を期待しております。

写真:古屋真宏

広島県三次市教育委員会教育長 迫田隆範氏

令和6年3月に策定した「みよし学びの共創プラン」に基づき、すべての児童生徒にとって魅力ある学校を実現するため、豊かな自然・文化と温かいひとのつながりなどの本市の魅力を最大限に生かした「学びの多様化学校」を令和9年度に開校する予定です。本市のみならず全国の中山間地域における学校の価値を再構築し、誰一人取り残されない学びの環境づくりのモデルとなる取り組みを進める決意です。

写真:迫田隆範

鹿児島県大崎町教育委員会教育長 穗園正幸氏

学校・家庭・地域が連携し、「子どもを真ん中に置いた支援体制」が地域に根づき、不登校支援の質や広がりが深まることで、持続可能な仕組みを築いていきたいと考えております。教育支援センターに通えない児童生徒への支援や運営体制の在り方、不登校に悩んでいる保護者への支援などが課題です。さらに利用しやすい学びの場の改善やオンラインでの支援、保護者へのサポート事業などについて、伴走支援いただけたらと考えております。

写真:穗園正幸

認定特定非営利活動法人カタリバとは

画像:「認定特定非営利活動法人カタリバ」ロゴマーク

どんな環境に生まれ育った10代も、未来を自らつくりだす意欲と創造性を育める社会を目指し、2001年から活動する教育NPOです。高校への出張授業プログラムから始まり、2011年の東日本大震災以降は子どもたちに学びの場と居場所を提供するなど、社会の変化に応じてさまざまな教育活動に取り組んでいます。

団体概要

設立 2001年11月1日
代表 代表理事 今村久美
本部所在地 東京都中野区中野5丁目15番2号
事業内容 高校生へのキャリア学習・プロジェクト学習プログラム提供(全国)/被災地の放課後学校の運営(岩手県大槌町・福島県広野町)/災害緊急支援(全国)/地域に密着した教育支援(東京都文京区)/困窮世帯の子どもに対する支援(東京都足立区・全国)/外国ルーツの高校生支援(東京都)/不登校児童・生徒に対する支援(島根県雲南市・全国)/子どもの居場所立ち上げ支援(全国)

関連リンク

お問い合わせ

日本財団 公益事業部 子ども支援チーム

  • メールアドレス:100_kodomo_shien@ps.nippon-foundation.or.jp