岡山~小豆島を結ぶ旅客船「おりんぴあどりーむせと」世界初※1旅客船における 自動運転レベル4相当※2での商用運航開始日本財団無人運航船プロジェクトMEGURI2040

日本財団は、少子高齢化による船員不足、ヒューマンエラーによる事故の減少等を目指し、無人運航船の実現と人や物資の安定的な輸送を目指すプロジェクト「MEGURI2040」を2020年2月から推進しています。
本プロジェクトに参画する離島航路旅客船「おりんぴあどりーむせと」が2025年12月5日、国内初となる「自動運航船」として国の船舶検査に合格。一般旅客が乗船する定期船としては世界で初めて、自動運航機能(自動運転レベル4※2相当)を活用した“商用運航”を開始します。国内には400以上の有人離島があり、船員不足等で生活航路の維持が課題となる中、今回の運航開始を皮切りに船の自動化が加速することで、離島における安定的な人・モノの輸送手段の確保が期待されます。

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おりんぴあどりーむせと
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「おりんぴあどりーむせと」に搭載されている自動運航装備

2022年1月~3月に本プロジェクトの第1ステージの一環として実施された実証運航では、船舶交通量の多い「輻輳(ふくそう)海域」として選定された東京湾での運航や、長距離(北海道苫小牧から茨城県大洗までの約750km)・長時間(18時間以上)の無人運航を成功させました。第1ステージの知見を活用して進行中の第2ステージでは、より環境負荷が小さい輸送手段へ転換する「モーダルシフト」を担う一翼として、旅客船やコンテナ船、RORO船(貨物を積んだトラックやトレーラーが自走して乗り降りできる船)といった様々な船舶を商用運航させ、社会実装することを目指しています。
今回お披露目された「おりんぴあどりーむせと」は、2025年度中に商用化予定の自動運航機能搭載船舶、計4隻のうちの第1弾で、一般乗客を運ぶ旅客船としては唯一となります。残る3隻の自動運航技術の実証等、当財団では引き続き技術開発を進めながら、自動・無人運航に係るルールや法整備、社会的な理解も促しながら、2040年には内航船の50%の無人運航化を目指します。

  • 1 日本財団調べ(2025年12月時点)。一般乗客が乗船する定期旅客航路において、自動運転レベル4相当での“定常的な商用運航”を開始する事例として世界初
  • 2 完全自動運航が一部可能な技術段階。特定エリアや条件下で人の介入不要の完全自動運転のことを指す。(船舶の自動運転定義は、現在、国際海事機関[IMO]等で議論中。便宜的に自動車の定義を流用) 参考:https://www.mlit.go.jp/common/001226541.pdf(外部リンク)

関係者コメント(12月10日・記者発表)

海野 光行(日本財団 常務理事)

無人運航の社会実装に向けて最も重要なのは、実例や実績をとにかく積み重ねていくことです。今回、その第一歩を踏み出せることを大変うれしく思います。今回の挑戦や、今後の商用運航から得られた知見をもとに、船員の負荷軽減を通した物流の安定や航行の安全はもちろん、国際的なルールづくりへの貢献も進めていきます。

小嶋 光信(両備ホールディングス株式会社 代表取締役CEO兼グループCEO)

離島を結ぶフェリーが商業運航可能な自動運航船として認められたことの意義は非常に大きく、海運の新時代を示す大きな一歩です。この技術は、安全性の向上、海難事故の削減、そして船員の労働負荷軽減という価値を築きました。社会実装を進め、業界と共に未来の海上輸送を築いていきたいと考えています。

参考:「おりんぴあどりーむせと」及び実証実験・船舶検査について

同船は、国際両備フェリー(株)が運航する全長約66メートル・旅客定員数500名の離島航路船で、新岡山港(岡山市)から土庄港(香川県・小豆島)を結んでいます。MEGURI2040では、離島航路における自動化実証のための試験船として使用されてきました。船舶往来が盛んで障害物となる島や岩礁も多い瀬戸内海域において、センサーやプランナー(避航ルートを自動で計画)等のシステムが適切に動作するか等を確認するための安全性評価が進められ、2025年12月5日、国内初となる「自動運航船」として国の船舶検査に合格したものです。
船舶を航行させるためには、国が定める技術基準に適合しているかを確認する船舶検査に合格する必要があります。国土交通省では2024年6月、自動運航船に係る安全基準・検査方法などを検討する「自動運航船検討会」を設置し、2025年6月に検討結果を公表しました。「自動運航船」として航行するためには計2回の検査を受ける必要があり、1回目は一般船舶と同様に設計段階・機器搭載前・船上で実施され、合格すると「初期段階の自動運航船」(自動運航システムのすべてのタスクに人の介在が必要)として検査証書が交付。二回目の検査にクリアすると「自動運航船」として運航可能になります。おりんぴあどりーむせとは2025年7月と12月、これら2回の検査に合格しました。

参考:国土交通省「自動運航船の検査方法の概要」(外部リンク)

MEGURI2040開始の背景・これまでの経緯

自動車分野を中心に自動運転の実証実験が進められる一方、船舶については、船陸間の通信環境整備や障害物を瞬時に避けることが難しい等の技術面、開発への莫大な資金が必要等の経済面から、これまで運航の無人化を実現する自動運航船の開発はほとんど行われていませんでした。一方で日本は、ICT(情報通信技術)、AI(人工知能)や画像解析技術をはじめ、世界的に高い技術を保持していることから、これらの技術を持つ複数の民間企業が共同で技術開発を行うことで、無人運航船に係る技術開発を飛躍的に進められる可能性がありました。そこで日本財団は、無人運航船の実現に向けたプロジェクト「MEGURI2040」をスタート。第1ステージでは計6隻の実証船について、2022年1月から3月にかけて自動運航実証を実施し、2022年度から開始した第2ステージでは、「商用運航(社会実装)」を目標に掲げ、4隻の実証船において自動運転レベル4相当を目指す技術開発に加えて、国内外のルール整備や保険制度の整理、ユーザーニーズの開拓等の周辺環境整備等を併せて推進しています。

画像:MEGURI2040ロゴマーク

各フェーズ概要

第2フェーズの船舶

いずれの船舶も高度な自動運航システムに加え、第1フェーズで課題となった船舶交通量の多い海域での航行や自動離着桟、複数船舶に対する陸上からの監視・支援等の技術を向上し、社会実装の実現を目指します。

船の種類・概要 概要・目指すもの 商用運航開始時期・航路 主な開発主体
離島航路船「おりんぴあどりーむせと」写真:離島航路船「おりんぴあどりーむせと」(全長65m) 日本に400ある有人離島の航路の維持が課題となっている中、本船の自動化で船員不足を支え、離島住民にとって安定的な人・モノの輸送の確保を目指します。 2025年12月11日以降
新岡山港―土庄港(小豆島)
日本海洋科学
他4社
内航コンテナ船「みかげ」写真:内航コンテナ船「みかげ」(全長65m) 第1ステージの実証実験船でもある「みかげ」は、日本で最も普及している749総トンのコンテナ船。本船の自動化を社会実装レベルに高めることで、無人運航船の普及促進を目指します。 2025年度中
神戸―名古屋
商船三井
他3社
Ro-Ro船「第二ほくれん丸」写真:Ro-Ro船「第二ほくれん丸」(全長173.8m) 釧路から日立の往復約1,600kmの農産物を運ぶRo-Ro船。漁船過密海域と濃い霧が発生する海域を含む航路での商用運航ベースでの実証を目指します。 2025年度中
釧路―日立
川崎汽船
他3社
新造内航コンテナ船「げんぶ」写真:新造内航コンテナ船「げんぶ」(全長134.9m) 無人運航船に必要なシステムをすべて備えた新造内航コンテナ船。無人運航船として1からコンセプト開発し、高度な自律航行機能に加えて機関部の遠隔監視機能や係留時の省力化技術を搭載。無人運航船技術による船員の負担軽減の効果最大化を目指します。 2025年度中
神戸―大阪―名古屋―横浜
MTI
他15社

自動運航を支える陸上支援センター

従来船上で行ってきた業務を陸上で実施できるようにするため、機関部の遠隔監視や、運航計画の立案などを実施し複数の無人運航船を同時に支援する場所として、陸上支援センター(Fleet Operation Center, FOC)を構築しています。これにより、船員の多様な働き方の実現やより安全な運航を実現します。

名称 特徴 主な開発主体
常設型陸上支援センター画像:常設型陸上支援センター監視ブース 複数船舶の運航監視、航海機能・機関機能に関する個別支援、航海計画策定などの陸上支援機能をすべて兼ね備えている。 古野電気
BEMAC
サンフレム
移動型陸上支援センター写真:移動型陸上支援センター外観 複数船舶の同時監視等を可能にしつつ、将来的な普及を見据えて陸上支援に必要な機能をコンパクトに集約。
災害時の冗長性担保のため車両で牽引・移動可能にしている。
日本無線

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