2025年度日本財団「妊娠SOS相談窓口・産前産後の居場所運営の新規立上げ事業」及び「産前産後の居場所建築事業」の募集について

はじめに

日本における虐待死(心中を除く)の約5割が0歳児であり、その背景に予期しない妊娠や出産後の支援不足があることは、以前から指摘されてきました。日本財団では、妊娠葛藤を抱える女性に対し、妊娠時から必要な支援を行うことで、生まれてくる子どもの身の安全やより良い養育環境の保障に結びつくと考え、妊娠SOS相談窓口や産前産後の居場所を運営する民間団体に対する助成をかねてより行ってきました。

2024年4月から改正児童福祉法にて「妊産婦等生活援助事業」が法定化され、また「困難な問題を抱える女性への支援に関する法律」も施行される等、国の取り組みにも前進が見られます。一方で、困窮妊婦とその子どもへの支援拡充が全国で実現するにはまだ時間がかかると考えられます。

日本財団では、助成事業の成果検証を踏まえて2024年3月に発表した「妊娠 SOS 相談窓口と産前産後の居場所の全国普及に関する提言書」(外部リンク)に基づき、(1)妊娠SOS相談窓口・産前産後の居場所運営の新規立上げ、及び、(2)妊娠中から退所後の自立まで継続的に手厚い支援を行う産前産後の居場所の建築に係る助成事業を募集いたします。
なお、申請受付は10月開始予定です。

1. 対象となる団体

日本国内にて次の法人格を取得している団体:一般財団法人、一般社団法人、公益財団法人、公益社団法人、社会福祉法人、特定非営利活動法人(NPO法人)。

  • 任意団体(法人格のない団体)からの申請は受け付けておりません。
  • 一般財団法人及び一般社団法人については非営利性が徹底された法人のみ対象とします。

2. 対象となる事業

(1)妊娠SOS相談窓口・産前産後の居場所運営の新規立上げ事業

(2)産前産後の居場所建築事業(建物の新築または改修)

※本募集における定義

(1)における
妊娠SOS相談窓口
運営事業
予期せぬ妊娠をしたがどうしてよいかわからない、誰にも言えない、前向きに捉えられないといった妊娠葛藤を抱える当事者専用の匿名相談窓口を運営する事業です。
母子の生命と健康の危機を回避するとともに孤立を防ぐために、母子が必要とする支援(医療・福祉)に繋ぐこと等を行います。
(1)における
産前産後の居場所
運営事業
主に困窮妊婦(産後は母子)対象の居場所の運営を行う事業です。
居場所提供を通じ、母子の健康や生命を守るための急性期対応(緊急一時保護的な産前産後の短期支援)に加え、妊娠以外の困難も併せ持つ当事者については、生活再建に向け、より長期的で手厚い支援を、関連機関と適切に連携しながら実施します。
(2)における
産前産後の居場所
建築事業
日本における困難を抱える妊産婦支援のモデルとなるよう、産前産後の居場所運営を実施するための建物の建築を行う事業です。
当該拠点を中心に、家庭的な雰囲気を有する専用スペースでの生活を通じ、信頼関係を構築し、個々人の「困りごと」にも共に向き合い、困窮妊婦や母子の地域生活移行まで手厚い支援を行います。
  • (1)に関しては、要件を満たす場合、「妊娠SOS相談窓口のみ」、「産前産後の居場所のみ」、「妊娠SOS相談窓口を有する産前産後の居場所」いずれの事業形態も申請可とする。

<参考>妊娠SOS相談窓口・産前産後の居場所を通じた支援事業:イメージ

「妊娠SOS相談窓口による支援イメージ」としては、1.多様な相談ツールおよび充実した相談体制(相談時間・人員体制)。2.専門性の高い相談員及び専門性向上の取り組み。3.ターゲット層に届くように工夫した広報。4.相談者に寄り添う支援(粘り強い傾聴や同行支援・能動的な提案等)。 「産前産後の居場所における支援イメージ」としては、1.安心・安全な出産を迎えるための支援(心身の回復、衣食住の確保等)。2.産後母子での生活に慣れるための支援(育児家事サポート、見守り、相談等)。3.退所後の自立に向けて生活再建・安定させるための具体的な支援(就業、行政機関や地域等との連携・引継ぎ等)。 妊娠SOS相談窓口による支援では、相談対応、同行支援、急性期対応的支援を行い、産前産後の居場所における支援では、急性期対応的支援、生活再建・安定の支援、を行う。双方協力して要支援者が「地域で自立した生活へ」進められるよう支援を行っていく。
妊娠SOS相談窓口・産前産後の居場所を通じた支援事業

<参考>産前産後の居場所:イメージ

  • 家庭的な雰囲気の中、入居者の観点からは、いつでも支援者に相談できて頼れるという安心感のある空間設計。また、支援者の観点からも、入居者の様子を自然に把握することができ、産前産後の体調不良、精神不安定、育児疲れ等を察知しやすく手を差し伸べやすい空間。
  • プライバシーに配慮しつつも、地域生活移行を見据え、社会との繋がりを感じられる工夫。
画像「産前産後の居場所」イメージ写真。上段写真:居室イメージ、下段写真(左右とも)共有スペースイメージ)
  • 上記は参考につき、申請団体の事業経験を基に、より良い支援に向けた工夫を期待します。

3. 申請要件・事業要件

(1)妊娠SOS相談窓口・産前産後の居場所運営の新規立上げ事業

【申請要件】

  • 妊娠SOS相談窓口・産前産後の居場所の運営事業を新規で立上げること。
  • 自治体委託事業を受託できるよう取り組む意志があり、将来的な受託見込があること。
  • 日本財団が企画する研修及び連絡会議(年1~2回程度を予定)に参加すること。積極的な意見交換や可能な範囲での情報提供に協力すること。
  • 日本財団による事業の成果検証に協力すること。

【事業要件】

  • 利用者の意向を尊重し、権利擁護及び虐待防止を図るため、必要な措置を講ずること。
  • 地域の医療機関・行政機関・その他関係機関との連携体制を構築し活用すること。
  • 利用者の状況に応じて面談や医療機関・行政機関等への同行支援を行うこと。
  • 助産師や社会福祉士等の専門職から専門的なアドバイスが提供できること。利用者が抱える個々の課題に応じて、妊娠のみに限定せず、生活支援・社会福祉・児童福祉制度(社会的養護制度を含む)等が説明できること。
  • 支援を必要とする者については住民登録地に関わらず広く受け入れること。
  • 産前産後の居場所を運営する場合は以下の通り。
    • こども家庭庁が発出する「妊産婦等生活援助事業実施要綱」及び「妊産婦等生活援助事業ガイドライン」に基づいた事業を実施すること。
    • 居室は個室とするが、日常生活の中で自然に入居者と支援者の間で交流が生まれ、信頼関係が構築されるよう工夫された空間づくりが望ましい。居室数については地域の特性を踏まえて設定すること。
    • 産前産後の居場所を必要とする妊婦は、妊娠以外の生活上の困難も併せ持つ可能性が高い実情を踏まえ、できる限り入居者の制限を設けず、柔軟な受け入れを行うこと。
    • 急性期対応だけでなく、入居者の状況に応じ入居中から就労等自立支援を行う、退所後もアフターケアで繋がり続ける等地域生活移行に向けた支援を工夫すること。
    • 日中は専任職員が常勤し、夜間も職員による支援が可能な体制づくりを行うこと。
  • 妊娠SOS相談窓口を運営する場合は以下の通り。
    • 電話に加え、SNSやメールでの匿名相談に応じることが望ましい。
    • 妊娠SOS相談窓口のみを運営する場合も、産前産後の居場所を必要とする妊婦から相談が来る可能性があるため、居場所提供できる外部連携先の確保が望ましい。

(2)産前産後の居場所建築事業(建物の新築または改修)

【申請要件】

  • 困難を抱える妊産婦対象の居場所支援の事業経験(原則3年以上)を有すること。
  • 自治体から妊産婦等生活援助事業(もしくはそれに準ずる事業)を受託している、または、自治体委託事業を受託していないが自己財源で事業継続の見込みがあること。日本での困難を抱える妊産婦支援の先進的モデルとなるよう取り組む意志があること。
  • 日本財団が企画する研修及び連絡会議(年1~2回程度を予定)に参加すること。モデル的な取り組みに関して積極的な意見交換や可能な範囲での情報提供に協力すること。
  • 日本財団による事業の成果検証に協力すること。

【事業要件】

  • 利用者の意向を尊重し、権利擁護及び虐待防止を図るため、必要な措置を講ずること。
  • こども家庭庁が発出する「妊産婦等生活援助事業実施要綱」及び「妊産婦等生活援助事業ガイドライン」に基づいた事業を実施すること。
  • 民間賃貸住宅・公営住宅・既存福祉施設における居室の部分利用ではなく、産前産後の居場所支援専用スペースとすること(必ずしも別棟である必要はない)。居室数については地域の特性を踏まえて設定すること。
  • 居室は個室とするが、日常生活の中で、自然に入居者と支援者の間で交流が生まれ、信頼関係が構築されるよう工夫した共用スペース(例:キッチン・リビング・ダイニング、カフェ等)の設置すること。ただし、必要以上に華美であったり贅沢な造りであったりしないこと。
  • 産前産後の居場所を必要とする妊婦は、妊娠以外の生活上の困難も併せ持つ可能性が高い実情を踏まえ、できる限り入居者の制限を設けず、柔軟な受け入れを行うこと。
  • 急性期対応だけでなく、入居者の状況に応じ入居中から就労等自立支援を行う、また、退所後もアフターケアで繋がり続けるなど地域生活移行に向けた支援を工夫すること。
  • これまでに構築した医療機関・行政機関・その他関係機関との連携体制を活用すること。
  • 日中は専任職員が常勤し、夜間も職員による支援が可能な体制づくりを行うこと。
  • 自団体で妊娠SOS相談窓口を運営する場合、電話に加え、SNSやメールでの相談対応も行うことが望ましい。

4. 助成金の上限金額・事業費総額に対する助成金の補助率

原則として、助成金は事業規模に見合う適正な金額、補助率は助成対象事業費総額の80%以内とします。

  • 申請された事業の一部のみが採択される場合があります。その場合、採択された事業費総額の80%以内を助成金額とします。
  • 補助率適用例:事業費総額200万円の場合、200万円×80%=助成金額160万円(団体の自己負担額40万円)
  • (2)における建築費に関しては、地域別の坪単価等を勘案し審査を行います。

5. 対象となる経費

対象となる経費は、助成事業の実施に必要な経費とします。

  • 必ず各団体が通常使用する会計科目を使用してください。
  • 日本財団の助成金は、財務諸表上、受け入れがわかるように記載ください。

適切な例:受取助成金、受取補助金等
不適切な例:受取寄付金、協賛金、業務委託費、雑収入

経費は以下の例を参考にしてください。

(1)妊娠SOS相談窓口・産前産後の居場所運営の新規立上げ事業

  • 妊娠SOS相談窓口・産前産後の居場所運営の新規立上げに係る費用
科目(例) 内容
臨時雇用費 事業を実施するために直接必要なアルバイト等の経費
諸謝金 講師や通訳など外部の専門家に対する謝金
旅費交通費 事業を実施するために必要な出張旅費や交通費など
委託費 調査研究、情報公開のための成果物の電子化経費など事業の一部を他に委託する費用
消耗品費 事業に直接必要な機材や備品等の購入費
印刷製本費 ポスター・パンフレット等のコピー・印刷代など
通信運搬費 郵送料、宅配便代など
会議費 会場借用料、会場設営費用、委員会や各種会議での茶菓子代など
広告宣伝費 事業実施の開催告知などを、新聞・雑誌・WEB等で広告するための費用
事業管理費 事業を実施する上で必要な事務局人件費・家賃・諸経費
(本事業が団体の活動の中で占める割合に応じた金額を記載し、その根拠を明記してください。)

(2)産前産後の居場所建築事業(建物の新築または改修)

  • 産前産後の居場所の新設・改修工事に係る費用
  • 工事に係る費用および設計監理費
  • 機器・備品
  • 設計監理費については事業期間開始前に発生したものも遡及して対象とすることができます。なお、助成契約締結(辞退や不採択等)に至らない場合は、自己負担となります。
  • 設計を担当した業者を、工事の入札参加業者に指名することは避けてください。
  • 助成金の支払いは、建築費用に関しては原則工事完了・引渡し後としております。

【対象外経費について(例)】

助成事業の対象となる経費は「事業の実施に必要な経費」です。以下の費用は原則として事業費に算入できない経費となります。

  • 旅費交通費
    • 役職員や講師が出張する際のファーストクラス、スーパーシート、グリーン車などの特別料金など
  • 会議費
    • 会議費の範囲を逸脱し、社会通念上、接待交際費に当たるもの
  • 建築整備に係る費用
    • 土地の取得・造成に要する経費、旧家屋(施設)撤去費、外構植栽工事などの付帯的工事費、施設の耐震診断に係る費用など
  • その他
    • 事業期間外の業者との契約に係る支出、土地・建物などの不動産購入費用、賃貸に係る敷金、自法人の役職員に対して支払う謝金、固定資産税・法人税等

これ以外にも、事業と関連の薄い経費、事業目的に沿わない経費や根拠が不明瞭な経費等については対象外または減額とさせて頂くことがございます。

6. 事業期間

助成契約締結・事業期間開始日(2025年4月(予定))以降に開始し、2026年3月31日までに完了することを原則とします。

  • 助成契約締結・事業期間開始前に見積合せ・入札・工事業者との契約等に着手しないでください。なお、1,000万円を超える場合は入札を実施していただきます。
  • 工事の状況により事業期間内に竣工できない場合は事業期間を延長することができます。

7. 申請手続き・申請受付期間

申請方法・申請受付期間は2024年9月頃に公表します。
2024年10月募集開始(予定)です。

本申請にあたり、申請書類のほか、以下の申請添付資料を追加でご提出いただく予定です。

No. 書類名 備考
1 工事対象建物および土地の登記簿謄本 発行後3カ月以内
2 工事対象建物および土地の貸借契約書や確約書等の建物・土地の確保(5年以上)が証明できる書類
3 工事概算見積書、機器・備品の見積書または価格がわかる資料 工事概算見積書は設計者が作成したもので押印されているもの
4 設計監理費見積書 工事概算見積書に含まれている場合は不要(押印されているもの)
5 建物の図面資料

8. 結果の通知

2025年3月中旬から下旬までに採否に関わらずご申請頂いた皆さまに、結果をお知らせします。それ以前の採否のお問合せにはお答えできませんのでご了承ください。

9. 審査の視点

組織(申請団体)、事業の目的、事業内容・計画について、以下の視点に基づき総合的に判断します。

(1)組織(申請団体)について

【信頼性】

組織や活動についての情報公開を適切に行っているか、または外部機関による組織評価を受けているか
申請分野において十分な活動実績があるか

(2)事業の目的(目指す状態)について

【社会的インパクト】

取り組む社会課題が明確かつ、成果の波及効果が大きいか

【モデルの構築】

先駆的な取り組みか、またはユニークな手法により今後他のモデルとなりえるか

【革新性】

旧来のしくみを変えていくか

(3)事業内容・計画について

【計画性】

事業の目標が目的に沿って明確に設定されているか
目標を実現するための事業計画・資金計画が適正かつ合理的であるか

【連携とその効果】

多様な関係者を巻き込み、事業の社会的意義を高めるとともに効果的に実施する工夫があるか

【広報計画】

効果的な情報発信や広報の工夫がされているか

【成果測定】

計画段階で成果の測定指標を設け、今後の展開や改善に向けた成果測定に積極的に取り組むか

【継続・発展性】

助成終了後においても自主財源にて同事業を継続、発展させる具体的計画があるか

10. 助成事業の流れおよび注意事項

【助成事業の流れ(予定)】

助成の申請から審査、決定、事業実施までの流れは以下の通りです。

時期 申請団体 日本財団
~2024年9月 事業内容の検討 申請案内の公開
10月上旬~10月下旬 助成申請
11月~2025年2月 審査
(審査担当者からヒアリングや追加書類提出、また現地訪問の依頼などを差し上げる場合があります)
3月中旬~3月下旬 審査結果のお知らせ

以下採択の場合

時期 申請団体 日本財団
4月 助成契約書の締結
(クラウドサインを利用した電子契約を締結していただきます)
PDF参考:日本財団との電子契約の締結について(PDF / 734KB)
~2026年3月 助成事業の実施
進行報告書(随時)の提出
成果物の公開
事業完了時 完了報告書の提出
事業完了後 監査・事業評価の実施

【助成事業に関する注意事項】

  • 助成事業の実施にあたっては、助成契約書及び事業実施ガイドブックに沿って実施いただきます。助成契約違反等が発生した場合、助成金の交付決定を取消す可能性があります。
  • 改修の場合、原則として整備対象とする建物は、法人が所有しているものとします。
  • 事業完了後は、決められた期限までに事業完了報告書(収支計算書含む)をご提出いただきます。助成事業完了日から5年以内に監査および事業評価を随時実施します。

(参考)

  • 2025年度版では内容を一部更新する場合があります

11. 助成事業の申請に関する質問

12. 個人情報の取り扱いについて

日本財団が助成申請に際して収集した個人情報は、日本財団の個人情報保護方針に基づき、助成事業に関する事務手続き、助成金の募集案内、日本財団に関連するイベント案内、アンケートの実施、各種お知らせの目的に利用します。

お問い合わせ

日本財団 公益事業部 子ども支援チーム

  • メールアドレス:kodomokatei@ps.nippon-foundation.or.jp