みんなの力で子どもを育てる。子ども第三の居場所を支える企業連携

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一流ホテルのシェフ手作りのシュークリームは、絶品!

日本財団「子ども第三の居場所」では、子どもたちの生きる力を育むための5つの機会として、「安心」「食事」「生活習慣」「学習」「体験」を提供しています。
そうした機会を届けるために欠かせないのが、個人並びに企業などのさまざまな寄付者や協力者の存在です。日本財団もしくは各拠点が進める、企業連携もその一つ。今回は、連携から生まれた3つの機会についてご紹介します。

「子ども第三の居場所が提供する5つの機会」についての説明図。「子ども第三の居場所」では、子どもたちの生き抜く力を育むため5つの機会を提供しています。 「安心」として、子どもたちが安心安全に過ごせるよう、居心地のよい環境づくりに努めています。ここに居ていいんだ」と思ってもらえるよう、まずは子どもたちのありのままを受け入れることから始めています。 「食事」として、毎日栄養バランスを考慮した温かい食事を無料で提供しています。子どもたちの健康を支えると共に、準備や片付け等も子どもたちと行うことで、食の大切さ、みんなで食事することの楽しさを伝えています。 「生活習慣」として、子どもの中には、基本的な生活習慣が身についていないケースもみられます。食事、着替え、入浴、歯磨き、挨拶等の基礎的な生活習慣を整えます。また、友達や大人との関わり方を学び、社会性を培っています。 「学習」として、学習習慣が定着するよう、毎日スタッフによる宿題指導を行なっています。分からないところまで遡った学習支援に加え、座っていられない等の課題がある子どもは情操面や発達障害の可能性も考慮して支援します。 「体験」として、旅行、キャンプ、料理、音楽・プログラミング等の教室を通して、チャレンジ精神、自己肯定感、主体性、対人コミュニケーション等、「非認知能力」を育みます。
子ども第三の居場所が提供する5つの機会

子どもたちの健康を支える「食事提供」

食事支援が必要な子どもが利用する居場所では、手作りの夕食を無料で提供しています。拠点に通うまで、保護者の帰宅が遅く一人で惣菜やカップ麺を食べたり、家庭で十分に食事を食べることができなかったりする子どもにとって、友達や大人と食べる食事は、お腹を満たすと同時に、食事マナーや調理を学ぶために欠かすことのできない場になっています。

拠点に通う子どもみんながお腹いっぱい食べられて、かつ栄養バランスの取れた食事を作るためには、食材の確保が欠かせません。限られた予算の中でやりくりするため、各拠点ではフードバンクや地域の農家さんや企業の食材寄付を受けながら、運営しているところもあります。

その中で、大きな支援となっているのが、伊藤忠テクノソリューションズ株式会社(CTC)から寄贈いただいているお米です。同社は日本財団とオフィシャルパートナーシップを締結しており、各拠点に毎月お米を届けてくれています。寄贈は2017年度から始まり、2023年度には年間3.8トンにも上りました。

更に2024年度からは、ヤマト運輸株式会社の協力でお菓子や飲料等の食料品を定期的に提供いただき、日々のおやつや食事として活用しています。「飲み物の詰め合わせに子どもたちから歓声が上がりました。活動の休憩に好きな味を選んで、うれしそうに飲んでいました」「夏にピッタリなゼリーやそうめんが届きました!さっそく“流しそうめんしたい!”との声があり今から楽しみです」「夏休みで給食がなくなることで食事の回数が減る子育て世帯へ提供します」等、食料支援があることで居場所の活動が充実しています。

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居場所に届いたそうめんで、流しそうめんを行いました

また、各地域の拠点が個別に企業と連携する事例も生まれています。

京都市南区で子ども第三の居場所「ハピネス子ども食堂」を運営するNPO法人happinessは、パークハイアット京都と連携し、2024年5月から6月にかけて、子どもへの食事提供を実施しました。
happinessは、週3回子ども食堂を開催しています。5月・6月のうち各月2回ずつの調理を、ハイアットが担当。日頃、ホテルで腕をふるうシェフや総支配人などのスタッフがボランティアで集結し、子ども向けの料理をふるまい、交流を深めました。

今回の企画は、ハイアットに勤めている人がハピネス子ども食堂を利用していたことをきっかけに、ハイアットが取り組む社会貢献活動「world of care」の一つに採用され実現。小学生から高校生まで約50名の子どもが参加し、一流ホテルの味を体験しました。「めっちゃ美味しい!」「最高」と子どもたち。いつもの居場所が、一流ホテルのレストランのような空間になる特別な1日を過ごしました。

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この日のためにシェフが考えたメニュー。子どもに人気のハンバーグ、スパゲティ、コーンスープに加え、デザートにはシュークリーム、そしてお土産にクッキーも手渡されました
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ボランティアに駆けつけたハイアットの皆さん。「子どもからの素直なフィードバックは参考になります」と、次回に向けてもやる気十分!

学ぶ意欲を育む「学習支援」

公益財団法人日本漢字能力検定協会さまからは、「漢検 過去問題集」を希望拠点に寄贈いただきました。対象級は、漢検2級〜10級(目安:高校卒業程度〜小学校1年生)で、86拠点が問題集を受け取りました。

写真左:漢検の過去問題集を手に持つ子供たち、写真右:寄贈いただいた漢検の過去問題集
みんなで漢検に挑戦する拠点も多数

問題集を受け取った拠点からは、「地域の先輩方も巻き込んで子どもといっしょに勉強します」「漢検にチャレンジします!」「子どもたちの挑戦意欲にとても役立ちます」と喜びの声が届いています。
問題集を手にしたことをきっかけに、不登校の子どもが学習に目を向けて意欲が芽生えて学校との関係が改善したり、これまで漢検を受検した事がある子どもも、「次の級も頑張りたい」と新たなステップに前向きになったりといった様子も伺えます。

漢字の習得は教科学習という意味だけでなく、言葉の獲得であり、自分自身の気持ちを表現したり、他者との円滑なコミュニケーションをとったりすることにも役立ちます。日本漢字能力検定協会の担当者からは「語彙力を育むことは、人生を豊かに生きる土台を築くことにつながると信じている」とのコメントもお寄せいただきました。

新しい出会いや学びに触れる「体験機会の提供」

季節行事や家族旅行、習い事や地域活動等への参加が限られている子どもたちにとって、居場所で行う体験活動は、チャレンジ精神や自己肯定感、課題解決力といった「非認知能力」を育む貴重な機会となります。
「子ども第三の居場所」事業では、学校外での体験・交流活動の機会が少ない子どもたちに体験機会を提供し、心身の成長に繋げています。

今年度、子ども第三の居場所を利用する関西圏の子どもたちは、阪神タイガース主催「Family with Tigers Day」に参加。5月から9月までの期間、計6回実施される本イベントに、6拠点から150名が球場を訪問しました。
試合前の練習の様子の見学や選手との交流、甲子園歴史館の見学をした後、試合を観戦しました。

参加団体の感想(一部抜粋)

「練習を見せていただき、写真も撮っていただいてそれだけでも大満足でしたが、選手に会えてサインをいただけて大興奮でした!!ファンになりました!」(保護者)

「普段入れない所に入らせて貰ったり、選手と会える機会は一生の思い出になりました!」(子ども/高校2年生)

「反抗期真っ只中の高校生も、親と話すきっかけにもなったようです。また、ずっと夢だった甲子園での阪神の応援が叶い、夢いっぱいでしたと語っていて、夢のお手伝いができて私も幸せな一日でした。このようなチャンスをいただき、ありがとうございました」(拠点スタッフ)

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「キリンの家」(大阪府泉佐野市)を利用する小学生の子どもと保護者計20名が参加。球団キャラクターとの記念撮影の時間も設けられた
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「キリンの家」の子どもたちから、阪神の前川右京選手へプレゼントを手渡した

寄付を受け付けています

上記以外にも、子ども第三の居場所へ個人・企業の皆さまから多くの寄付や寄贈をいただいております。いつも応援ありがとうございます。

年々、子どもを取り巻く状況は複雑化し、現在8.6人に一人が相対的貧困状態にあると言われています。日々の食事や入浴支援に始まり、将来の自立に向けて生き抜く力を育むためには多くの方のご協力が必要です。

しかしながら、団体独力だけでは資金も人的リソースも限られているため、支援が十分に行き届かない場合もあります。個人・企業の皆さまからのご支援があることで、居場所の活動が充実します。ぜひ、ご自分の地域の居場所を応援していただけると嬉しいです。

日本財団への寄付も、随時受け付けています。合わせてご協力をよろしくお願いします。

取材:北川由依