災害学習キャンプイベントで楽しく学ぶ!一般社団法人Orange Kids' Care Lab.
災害の備えについて家族と一緒に考える
オレンジキッズケアラボ(福井県福井市、以下ケアラボ)は、「こたえていく、かなえていく。」を合言葉に、医療ケアが必要な子どもたちとその家族、誰もが安心して暮らせるまちづくりを目指している団体です。医療的ケア児の日中預かりや居宅支援を中心に、通学支援、小旅行、親の就業支援などの多様な取り組みを通して、子どもの成長を支え続けています。
医療的ケア児とその家族が、地域の中で安心して暮らしていくために欠かせないことの一つが災害対策です。災害の備えは誰にとっても難しいものですが、医療ケアが必要な場合となると、さらに考えるべきことがたくさんあります。ケアラボでは、医療的ケア児の家族が災害時に自立的に行動できるように、動画やマニュアルを作成してホームページで公開しています。
また、医療的ケア児の家族が災害時にどのような対応をすればよいかをまとめた『災害時個別対応マニュアル』も作成。この中には、緊急連絡先や備えて準備しておく物のリスト、医療機器の状態を確認する欄が用意されています。また、緊急時に家族だけでなく医療的ケア児に関わる支援者も活用できるように、一日のケアの流れなども書き込める構成になっています。このマニュアルはダウンロードして、どなたでも活用することができます。
さらに、災害の備えについて家族と一緒に考えていくために、2023年から「災害学習キャンプイベント」を開催し、参加者から好評を得ています。その第3回目となるイベントが2025年10月4日(土)・5日(日)の2日間、福井市の「森のほうかごVILLAGE」にて行われました。

今回のイベントをまとめるケアラボ事務局の宮武寛子さんは「災害学習キャンプを通して参加家族間での交流を楽しみながら情報交換し、災害の備えをチェックできるプログラムです。ご家族が不慣れな避難生活を乗り切ることができるようになることを目的としています」と語ります。
今回は6家族が参加。天候はあいにくの雨となりましたが、屋根付きで全天候対応BBQサイトに集合し、家族とスタッフが交流しながら災害学習キャンプイベントがスタートしました。
マニュアル作成と見直し、わが家のオススメ品も紹介
オリエンテーションでは、宮武さんが挨拶をしました。
「災害時にどう行動すればいいのか、何を備えておけば安心か。その内容をまとめた『わが家のマニュアル』を今日は一緒に見直したいと思います。今回、初めて作るご家族もいれば、以前、作ったけれど更新できていない方もいらっしゃいます。ご家庭の現状に合った備えを一緒に考えていきましょう」

最初の1時間は、マニュアルづくりに集中する時間です。まずは災害用に備えている物のチェックを行いました。各家族のテーブルにスタッフが付き、リストを元にヒアリングしながら、何がどれだけストックしてあるか、どこに置いてあるかなど、一つひとつ確認していきます。前回のキャンプイベントでも同様のチェックを行いましたが、そこから1年経つと、お子さんの体調の変化で不要となる備品や医療機器もあれば、新たに必要なものも出てきます。
それぞれのご家族が「これは充分あります」「しまった、あるはずだけど、どこに置いたか確認します」「充電ができているか未確認」など、リストに基づいての確認作業を行いました。
宮武さんは、「こうした備品チェックや災害マニュアルは、行政が作成したものを活用されているご家族もいらっしゃると思います。大事なのは1回作って終わりにしないこと。去年作ったマニュアルが、どこにあるかわからなくなったり、何年も見直しをせず、そのままになっていたり。今回のように見直しをする機会が毎年あれば、常に更新され、安心できる備えになります」と言います。

医療機器を使用する家庭は電源の確保も課題です。
「機器が増えると、これまでのバッテリー容量では足りなくなります。備品や機器を見直すことで、容量を増やす必要があることに気づけました」と語り、「こうした機会があるからこそ、改めて確認できます。普段はなかなか見直す時間を取れないので、とてもありがたいです」とサポートを受けながら行う見直しの有意義さを強調しました。
マニュアルの見直しに続いて、「我が家のイチオシ」紹介。防災グッズや外出時のケアなどに重宝した便利品をお互いに紹介し合いました。
ポータブルバッテリーのUSBポートに接続できるブランケット、洗って何度も使えて長持ちするペーパータオル、片手で支えてもこぼれないエチケット袋、お気に入りの非常食など、皆さんが使ってみた実感と共に紹介。「早速、使いたい!」などの声も聞かれました。
もともとキャンプが趣味という参加者は、「普段のキャンプの延長で“これ防災にも使えるな”と思うことがあります。遊びの中で便利なものが、結果的に避難生活にも役立つと気づくことが多いです」と日頃の防災意識について語ってくれました。
また、災害時に不可欠の非常電源として、電気自動車からEVバッテリーを通して電力供給をするデモンストレーションが行われ、携帯できるソーラーパネルの紹介もありました。
一通りの災害学習と情報交換が終わり、お昼の時間はBBQ。お肉や野菜を焼いて、楽しく交流しながら、災害非常食の試食も行いました。
「非常食のイメージと違う、おいしいですね」「これは備蓄しておきたい」と、味の感想が交わされました。

雨足が強まる時間帯もありましたが、「これも災害時の練習と思えばいいかも」など、会話は尽きませんでした。1日目は、5組の家族が同じ施設内のコテージに宿泊。こうした宿泊体験も災害時の避難所生活に気づきを与えてくれました。
災害学習キャンプを振り返っての気づきをシェア
2日目の午前中には、宿泊した家族が集まって、前日の振り返りが行われました。災害の備えについての考え、今回の学べたこと、イベント全般の感想などをシェアしました。

見直しの重要性を再確認したというご家族は、「1年ごとに子どもの体調や医療的ケアの内容も変わってくる。去年までは不要だった機器が新たに必要になることもあります。だから定期的な見直しは欠かせないと感じました」と話しました。
「今日、皆さんの話を聞いて、子ども目線での防災も必要だと気づきました。これまで大人の都合で用意していたけれど、子どもが本当に使いやすいものになっていなかったかもしれません。次は家族みんなで確認しようと思います」など、参加した家族間で良い影響を与え合ったことも話してくれました。
また、「私だけが知っている」「パパだけが把握している」ではなく、家族全員が共通の認識を持つことの重要性を語る声もありました。
「誰でもすぐに持って逃げられるように、持ち出し袋の場所や中身を家族で話し合っておきたいです」といった意見が多く聞かれました。
準備をして終わりではなく、実際に使ってみる
複数回参加している家族からは、避難リュックの中身を定期的に見直す大切さが語られました。
「子どもの成長とともに、必要な物が変わっていくことに改めて気づきました。前に入れていた服が、もうサイズアウトしていたり、薬が古くなっていたり、定期的に中身を見直す時間を作ろうと思います」
また、準備して終わりではなく「実際に使ってみる」ことの大切さを指摘する声もありました。
「一度、避難リュックだけを持ってキャンプに来てみようかと考えました。実際にそれだけで過ごしてみると、“これが足りなかった”“これは要らなかった”ということがよく分かると思います」
スタッフからも「毎月送っている防災チェックメールを活用し、備蓄や充電の状態を定期的に確認してほしい」との呼びかけがありました。
「単に“持っている”ではなく、“使える状態で持っている”ことが大切です」という言葉に、多くの参加者がうなずいていました。
非常食の試食については、「非常食を実際に食べてみたことで、子どもが食べられるもの・苦手なものが分かった」という声も聞かれました。
一昨年から継続して参加している家族はこう語ります。
「今回の雨の中の体験では、“傘よりカッパの方が安全で便利”という実感もありました」
また、ポータブル電源やソーラーパネルの導入を進めている家族は、
「去年、家に蓄電池を設置し、太陽光パネルも増やしました。停電が起きても最低3日間は家で過ごせるように備えています。災害のためだけでなく、普段の車移動などにも役立ちます」と、日常と防災のつながりの大切さを教えてくれました。
BBQイベントについては、「こうして家族が集まると、災害の話だけでなく、子育てや生活の情報交換もできるのがありがたいです。日常が忙しく、どうしても“見直しは後で”になってしまいがちなので、こういう機会があると、改めて点検できて助かります」
別の参加者は、「マニュアルを見直してよかった」と語ります。
「物品の場所は変わっていませんが、電源容量が以前より必要、酸素の予備を増やす必要があると気づきました。呼吸器など医療的ケアがある家庭では、わずかな備えの差が命を守ることにつながると改めて感じました」
こうした実感を共有しながら、スタッフからは「定期的な見直しを、これからも一緒に続けていきましょう」との声がかけられました。アプリやデジタルツールによる管理を検討する意見も聞かれました。
参加者から実感を込めて、「親が楽しそうに準備をしていれば、子どもも自然と関心を持つと思います。ワイワイしながら備える、そんな雰囲気がいちばん大事かもしれません」という言葉もありました。
災害学習キャンプは、防災知識を「教わる」場ではなく、「家族で考え、試し、語り合う」場として機能する有意義なイベントとなりました。
「日本財団 難病の子どもと家族を支えるプログラム」に興味をお持ちの方は、ぜひ難病児支援ページをご覧ください。
文責 ライター 林口ユキ
日本財団 公益事業部 子ども支援チーム