第三の居場所、尾道拠点をご紹介します。

私たちが暮らす広島県尾道市は、瀬戸内海に面した人口約14万人の街です。四季を問わず、晴天の日は抜けるような青空が広がります。澄んだ空気のなか海岸沿いを歩くと、あふれる陽光で海が輝いていて、私たちを何ともいい気分にさせてくれます。
そんな海沿いの街で、西日本初となる子どもの「第三の居場所」が今年7月にオープンしました。建物内観は木を基調とした造りで、訪れた保護者やお客さんから「とってもいい木の香りがするね」と、よく感想をいただきます。屋外には家庭菜園もあり、夏場はシシトウとキュウリが山ほど採れました。今はみんなで秋に植えた白菜が、グングン成長しています。
オープンして4カ月が経ち、「居場所」に集まる子どもの数は少しずつ増えています。利用して下さる保護者の方々の思いは「宿題を見てほしい」「就職活動に専念したい」「広い場所で思いきり遊ばせたい」などさまざま。子どもたちの思いを受け止めるのはもちろんのこと、保護者の方々の思いもしっかりキャッチし、生活のサポートをしたいと考えています。
学校から帰ると、子どもたちは手洗いをしてランドセルを片付け、おやつを食べたら、さあ、宿題に挑戦です。静かに机に向かう習慣は、毎日の繰り返しの中で、子どもたちが自然と身に付けたものです。私たち大人が工夫したことは数えるほどしかありません。「そんなに一生懸命毎日勉強して、疲れないのかな…」と、余計な(?)心配までしてしまいます。

子どもたちは遊びのやり方も自分たちで考えます。毎日飽きることなく紙飛行機を作り、滞空時間記録を日々更新させているA君、窓際に椅子を並べてぬいぐるみ相手の美容院を開店したBちゃん、本物と見まがうほどの携帯ゲーム機を段ボールでこしらえたC君(おまけにゲームソフト付きで着脱が可能!)、30秒に一回お手製のなぞかけを披露するD君。なぞかけの完成度にバラつきがあるのはご愛敬です。
子どもたちの創意工夫には目を見張らされるばかりですが、もちろん、楽しいことばかりではありません。大人に比べるとちっぽけなものだろう、と思い込んでしまいがちな子どもの悩みや困りごとの途方もない大きさに、頭を抱えさせられる時もしばしばです。
夕食を一緒に食べていると、子どもたちが好き嫌いを言います。この時、私たち大人ができるのは、「どうすれば楽しく食事をしてくれるかな」とみんなで考え、毎日話し合いながら工夫していくことだけです。子どもと一緒に悩むだけ。それがいちばん難しいのかもしれませんが…。
子どもたちは、日々の生活を自分で設計するデザイン力、とでも呼ぶべき素晴らしい能力を持っています。少しカッコよく聞こえるかもしれませんし、大風呂敷を広げるようですが、これからの人生の困難に、子どもたちが自分で立ち向かっていける力を「居場所」で身に付けてくれたらいいな、というのが私たちの願いです。

第三の居場所 尾道拠点マネージャー 山田克芳

日本財団は、「生きにくさ」を抱える子どもたちに対しての支援活動を、「日本財団子どもサポートプロジェクト」として一元的に取り組んでいます。