分身ロボットで、学校へ通えない子ども達に学習の機会を!鳥取県での実践遠隔ロボットを用いた教育支援
「難病の子どもと家族を支えるプログラム」活動報告ページへようこそ。
こんにちは。国内事業開発チーム 難病の子どもと家族を支えるプログラム担当の吉田です。
今回は、本プログラムで実施している遠隔教育の事業について、ご紹介します。2017年8月から、病気や障害により学校へ通えない子ども達が家や病院にいても学校と同じように学べるようにと、分身ロボットを用いて教育の機会をサポートする取り組みを鳥取県内で始めました。この事業で遠隔教育のツールとして用いているのは、パソコンやカメラではなく、分身ロボットOriHime(オリヒメ)!現在、鳥取県の養護学校2校と院内学級に通う子ども達の分身となって、計3台が活躍しています。
病気や障害により移動に制限がある子、感染のリスクを回避するため自宅で訪問教育を受けている子、また、入院などにより一時的に他の児童・生徒との関わりに制限がある子など、学校へ通えない理由は子どもによってさまざまです。慢性疾患などで長期療養が必要な子どもは全国に約25万人(「難病のこども支援全国ネットワーク」調べ)。そうした子ども達が、同世代の子ども達と同じように学ぶためにはどうしたらよいかと現場の先生や教育委員会は考えてきました。
分身ロボットOriHimeは、カメラやマイクが付いた人型ロボット。タブレット端末を操作することで、離れた場所でも手や首を動かし、周囲にいる人と会話ができます。OriHimeが学校の教室に“分身”として登校し、学校に通うことが難しい子どもがタブレット端末を操作することで、教室の様子を見たり、授業に参加したりできるのではないか、と本事業はスタートしました。
重度の心臓病を持つ小学生のAさんは、感染予防や体調を考慮して先生が自宅に訪問して授業をする訪問学習を受けています。OriHimeが来るまでのAさんの知る世界は、自宅と病院、そして体調の良い時に数回通う学校。学校は大好きですが、お友だちに会いたくても会えず、さびしい思いをすることも少なくありませんでした。しかし、OriHimeが来たことで、これまで先生のお話でしか聞けなかった学校行事や大人数での授業など、OriHimeのおかげで、「見る」「参加する」「経験する」ことができるようになりました。これまで点だった情報が線となり、Aさんにとって物事を理解する大きな一歩となりました。そして、一つひとつ知り、理解が進むことはAさんにとって「楽しい」につながり、これまで以上に学習やお友達との交流に意欲を見せてくれるようになっています。
また、治療により入院前と違う自分の姿を見られることに抵抗を持つ子どもも多い中、OriHimeが分身になってくれるおかげで、自分の姿を相手に見られることなく友だちと勉強ができることは、子どもにとって大きな安心につながるという効果もあることがわかりました。
この事業の実施団体であるつなぐプロジェクトの今川さんは、「1人でも多くの子どもの学習環境を整えられるよう、サポートしていきたい」と話しています。鳥取県での取り組みを全国に広げ、多くの子ども達に学ぶ友だちと学ぶ喜びを届けることが目標だと言います。
今後はこの取り組みをさらに広めるため、日本財団は遠隔教育支援のモデルの構築を目指し、2018年度も継続して支援をしていきます。
「日本財団 難病の子どもと家族を支えるプログラム」に興味をお持ちの方は、ぜひ難病児支援ページをご覧ください。
日本財団 ソーシャルイノベーション本部 公益事業部 国内事業開発チーム 吉田もも
日本財団は、「生きにくさ」を抱える子どもたちに対しての支援活動を、「日本財団子どもサポートプロジェクト」として一元的に取り組んでいます。