医療的ケア児の社会参画を支えるために難病の子どもと家族の支援者を増やす取り組み

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こんにちは。国内事業開発チーム 難病の子どもと家族を支えるプログラムチームです。

子どもの医療と家族を支える訪問看護師

病気や障害の有無に関わらず、子どもの健やかな成長には、社会での生活と人との関わりが不可欠です。生きるために人工呼吸器や経管栄養といった医療技術が必要な「医療的ケア児」も医療の進歩により病院を出て家庭で暮らすことができるようになっていますが、そのケアや社会生活を家族だけで支えるのは困難。母親の不安も大変なものです。そこで重要な役割を果たすのが、在宅医療を専門とする訪問看護師の存在です。

日本訪問看護財団はそんな訪問看護師を支援し、在宅ケアに関する調査研究や教育、助成事業を行っている団体。小児在宅医療の基盤強化のため、平成29年度に日本財団の支援を受けて「小児訪問看護対応研修」「医療的ケア児等コーディネーター養成研修」「医療的ケア児等支援者養成研修」という3種類の研修を実施しました。

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小児訪問看護対応研修では、赤ちゃんの模型を使った実践的な講習が実施されました

小児訪問看護の実践力向上を目指す

家庭で生活している医療的ケア児は1万7000人以上と言われていますが、日本全国に約1万の訪問看護ステーションがある中で、小児在宅看護を行なっている事業所はその約6割。これからさらに医療的ケア児の増加が考えられるため、さらに多くの事業所による対応が求められます。そこで「小児訪問看護対応研修」は、すでに小児訪問看護を行なっている看護師の実践力向上と同時に、未経験者への基礎技術習得を目的に開催されました。

「小児在宅医療の重要性を認識していながら、経験がないため不安を感じて実施に踏み出せないところが多いのが現状です。子どもの体調の変化のしやすさが時に死に直結するなど、医療者として子どもの特性を理解しているが故の怖さがあるのです」
研修会を担当した日本訪問看護財団立あすか山訪問看護ステーション所長の田中道子さんは語ります。

そこでこの研修では、特に不安に思われている呼吸の管理と救命の領域に多くの時間を当て、座学の他、救命の経験が豊富なNICUの認定看護師や小児の訪問看護実践者をファシリテーターに、赤ちゃんの模型を使った少人数の実習などを重点的に行いました。

「訪問看護師は子どもとその家族が当たり前に地域で暮らすために必要な支援なのです。研修の根底に流れるものは、『どんなに重度な障害があっても子どもとその家族が望む場所で望む人とその人らしく暮らすことを支援する。』ということなのです。」
と田中さん。現状、医療的ケア児の社会参画が問題なく行なわれているとは言い難い状況ですが、看護師の力、思いを集めて、子どもが社会に参加できる体制づくりを後押ししたいと田中さんは語ります。

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小児訪問看護対応研修でのひとコマ。「今回の研修で小児への対応に一歩近づけたのではないでしょうか」と田中さん

医療的ケア児の支援計画を立案できる専門職を育成

医療的ケア児が長く入院していた病院から退院する時、まず最初に子どもの医療ケアや家庭、社会との繋がりを支えるのが訪問看護師ですが、子どもは成長とともに社会資源との関わり等の障害福祉サービスの導入も重要となり、使える制度が変化するため、医療の専門職である看護師だけで対応することが難しくなっていきます。そこで現場から必要性が訴えられてきたのが医療的ケア児に関する医療、福祉、教育の制度を包括的に理解し、支援計画を立てるコーディネーターです。高齢者福祉でいう「ケアマネジャー」、障害児福祉の「相談支援専門員」の立場になります。

「医療的ケア児等」の理解がまだまだ広まっていないために、自宅での障害福祉サービスが十分に利用されていません。そこで、平成28年度に「医療的ケア児等コーディネーター養成研修」が開始され、相談支援専門員、訪問看護師、保健師が一定の研修を受けることで地域への医療的ケア児等の退院促進及び医療的ケア児等の状態に沿ったサービス支援計画の立案ができるよう、都道府県に育成が課せられるようになりました。ところが、まだその必要性が十分に理解されず、研修が実施されたところはほとんどありませんでした。前在宅ケアセンターひなたぼっこ統括所長の安藤眞知子さんは、コーディネーター養成研修のテキストの編集委員を務めた経緯から研修の必要性を行政に訴え開催を提案しましたが、実現することができませんでした。そこで、日本財団から助成を得て実施したのが、今回開催された「医療的ケア児等コーディネーター養成研修」です。

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研修で使われた赤ちゃんの救命に必要な道具一式。なるべく現実に近い形で研修が計画されました

多職種が同じテーブルを囲んで研修を受ける大切さ

「医療的ケア児等コーディネーター養成研修」は、在宅医療の実際と多職種連携の講義が2日間、サービス支援計画作成の演習が2日間の計4日行われました。講義の2日間はコーディネーターの資格条件以外の職種にも対象を広げて「医療的ケア児等支援者養成研修」として開講したところ、日本各地の行政担当や福祉職など、さまざまな職種の関係者が受講し、医療的ケア児の特性や必要な支援を理解し合いました。「多職種が同じ研修を受けることで、支援を1人で抱え込まずそれぞれの専門性を理解した最善の支援が行えるようになります」と安藤さん。

この研修によってコーディネーター及び支援者養成の重要性が行政にも伝わり、平成30年度は、県の委託事業として研修会の開催が決まるなど、参加した自治体ではさまざまな動きが始まっているといいます。
医療的ケア児と共に、高齢者も増加するため、今後15万人の訪問看護師が必要になるとされています(平成28年度は4万6000人)。日本訪問看護財団では、今回の研修で蒔いた小さな種が全国に広まることを期待しながら、「小児訪問看護普及体制の確立」、療育やデイケアといった「通所体制」と「相談機能」の3つを柱に、子どもたちの家庭復帰と社会参画を支えます。

写真:赤ちゃんの呼吸の管理の実習の様子
赤ちゃんの呼吸の管理の実習は、緊張しながらも、すぐに疑問が解決できるため、実り多い時間となりました

日本財団 難病の子どもと家族を支えるプログラムでは、日本全国に難病の子どもと家族の笑顔を増やしていきます。

「難病の子どもと家族を支えるプログラム」

日本訪問看護財団

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文責 ライター 田中理帆
日本財団 ソーシャルイノベーション本部 公益事業部 国内事業開発チーム 中嶋 弓子

寄付の状況 2019年6月末現在
1億712万3,598円
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