自分にしか出来ない支援を被災地で行う

平成30年北海道胆振東部地震は被災地に大きな被害をもたらしましたが、道内および道外からさまざまな支援団体が被災地に来て活動しています。厚真町で活動する「災害救援ネットワーク北海道」もそんな支援団体の一つです。
平成30年北海道胆振東部地震は、最大震度7を記録する大地震となりました。特に震源に近い勇払郡厚真町では広範囲に渡る土砂崩れが発生し、人的にも経済的にも大きな被害がもたらされました。

この被害を受けて、道内および道外からさまざまな支援団体が被災地に来て活動しています。厚真町で活動する「災害救援ネットワーク北海道」もそんな支援団体の一つで、被災地の住民やボランティアに向けて炊き出しを提供しています。

「今日は昼食にポトフを30食分、夕食にカレーを40食分準備しています。厚真町内3カ所にある避難所で被災者の方々が暮らしているので、その人たちに炊き出しを作っています。11月中旬から徐々に避難所から仮設住宅に被災者の移行が進んでいますが、仮設住宅に入ったばかりでは調理器具などが何もないので、炊き出しを食べにくる方も多いです」
災害救援ネットワーク北海道の代表の“やんじー”こと山口幸雄さんが炊き出しについて説明してくれました。
災害救援ネットワーク北海道は、過去にも災害が発生する度に被災地で炊き出しを提供しており、被災者の「食」を支えています。東日本大震災の際には、発災から3年間500食の炊き出しを朝昼晩3食分提供し続けて来たそうです。

9月6日に北海道胆振東部地震が発生すると、地震で多くの避難者が発生していたむかわ町から、出来ればその日のうちに炊き出しを提供して欲しいと相談され、炊き出しを始めました。
「もともと平時から災害に備えて、炊き出し訓練を自治体向けに行っており、むかわ町でも炊き出しの訓練をこれまでにやったことがありました。そのために、今回の災害では迅速に行動することが出来ました」
災害救援ネットワーク北海道の山口由里さんが発災後すぐの様子について振り返ってくれました。
地震が発生したその日に400食分の炊き出しが欲しいと言われたので、とにかく準備できるだけの材料を集めて、その日の夜に塩おにぎりを配布したそうです。避難所の近くには車中泊をしている方も多く、炊き出しを始めると一気に行列が出来上がり、炊き出しを作ってはそれがすぐ無くなり、急いで次の分を作るという作業が続いたそうです。「被災直後はみんな不安なので、まずはご飯を配って、それを食べてもらい安心してもらうことが大切です」
と山口由里さんが説明してくれました。
支援したくても出来ない人の意思を汲み取る
「被災地のために何かしたいけれども出来ないという人からよく連絡が来ます。その人たちが、水やお米、野菜などの物資を送付してくれたり、活動支援金を通して支援してくれたりしています」
代表の山口幸雄さん(やんじー)が他の支援者を巻き込む大切さについて説明してくれました。
災害救援ネットワーク北海道では炊き出しに使う野菜やお米など材料の一部を、他の支援者や知り合いから集めています。この日に作ったポトフの野菜も、知り合いに提供してくれないかと呼びかけて集めた野菜とのことでした。災害時には、被災地を支援したくても出来ない人も多いので、その人たちの力を借りることも大切なのかもしれません。

災害救援ネットワーク北海道には、炊き出しの「材料」だけでなく、「人」の支援も集まっています。この日も、あゆみ会というボランティア団体が災害救援ネットワーク北海道の応援で手伝っていました。
「長く生きてきましたが、私もこんな地震は初めて経験しました。地震でベッドから飛ばされましたよ。私たちあゆみ会は、普段は高齢者の見回り活動などをしていますが、今回は山口さんのために何かできればと思い、炊き出しのお手伝いを始めました」
あゆみ会の方が災害救援ネットワーク北海道と協力しようと思った理由について説明してくれました。
自分が今やっている支援は、他の人にはできないと思っている
災害救援ネットワークの炊き出しは、被災者だけでなくボランティアに参加しにきた方々にも振る舞われます。被災者に炊き出しを提供すると同時に、ボランティアにも炊き出しを提供することで、少しでも長く継続してボランティア活動をするための環境作りを行なっています。被災者もボランティアも同じで、とにかく被災地を少しでも復旧・復興するためにはどうすべきなのかを考えて支援を続けています。

「私は食べる人がいる限りは炊き出しを続けます。自分が今やっている支援は、他の人にはできないと思っています。同じようなことはできても、愛着や信念が違えばその中身は全く別なものになるので、他の支援団体と私たちのものは全く違うものになります。自分のやりたいことをやって被災者の人たちに貢献していきたいです」
代表の山口幸雄さん(やんじー)が被災地の支援について語ってくれました。
日本財団は助成金を通して災害救援ネットワークの活動を支援しています。支援を通して被災地の復旧・復興に少しでも貢献できればと考えています。

取材・文:井上 徹太郎(株式会社サイエンスクラフト)
写真:和田 剛