病児に寄り添うお母さんを料理で笑顔にキープ・ママ・スマイリングの取り組み

こんにちは。「難病の子どもと家族を支えるプログラム」活動報告ページへようこそ。
国内事業開発チーム 難病の子どもと家族を支えるプログラムチームです。
今回は特定非営利活動法人キープ・ママ・スマイリングの取り組みをご紹介します。

お母さんに栄養のある食事を

病院では付き添いの親には食事は出ないため、入院している子どもが寝ている合間にコンビニのおにぎりやパンで済ませるお母さんがほとんどです。栄養の偏った野菜不足の食生活では親自身も体力や精神を保つのは難しく、体調を崩してしまう人も少なくありません。

入院中の子どもに付き添い、病院に泊まり込むお母さんに向けて食事のサポートを行う、キープ・ママ・スマイリング代表の光原ゆきさんは、自身も子どもの長い入院生活を支えた経験をもつ母親。長女は生れてすぐにNICUに搬送され、大手術を経て半年間の入院生活に。光原さんも泊まり込みで付き添いました。その3年後に生まれた次女は、入退院を繰り返した末に11か月で亡くなってしまいました。

子どもは少しでもお母さんがいないと大泣きするため片時もそばから離れられません。泣くことで病状が悪化することもあるからです。また、定期健診、巡回、医療機器の機械音で夜も落ち着ついて眠れません。そんな中、体力が必要な手術の前には子どもの体重を増やすためにおっぱいのことで頭がいっぱいになったそうです。心身共に過酷な状態が3か月続き、体調を崩して自宅で静養することになってしまった光原さん。ようやく体調が回復して病院へ看病に戻ると、子どもが脱水症状を起こしていたそう。親が見守らなければという思いが強まってしまった出来事だったといいます。

「病院のみなさんは忙しい中、十分にやってくださっていますが、なかなか手が回らない状況です。そこで子どもの容体の変化を伝えるのは親の仕事。自分のことは二の次で、すべて子どもが優先でした。そんな自分の経験を生かして、お母さんを応援し、笑顔になってもらう活動をしたいと、2014年にNPOを立ち上げました」。

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缶詰を使った簡単アレンジメニュー。「美味しい料理でホッとしてほしい」そんな思いが込められています。

心を込めた温かい手料理を届ける

NPO の活動は、2015年、東京世田谷の国立成育医療研究センターにある、病児に付き添う家族のための宿泊施設「ドナルド・マクドナルド・ハウス」で定期的に食事を無料提供する「ミールプログラム」から始まりました。大晦日にはお蕎麦とおせちを届けます。2018年からは聖路加国際病院にお弁当を無料で提供するサービスが始まりました。

ある日のミールプログラムでは、夕方までに食べたものはお菓子一個だけだったというお母さんが温かい手料理に表情を和らげ、たった5分で食事を済ませて子どもの元に戻って行きました。キープ・ママ・スマイリングの元には「季節を感じることができる栄養満点の料理に癒されました。いつもありがとうございます」といった感謝のコメントが多く寄せられ、活動の力の源になっています。

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缶詰めのメニューを監修した米澤文雄シェフによる解説とライブ・クッキング。
健康チェックシートや、缶詰の栄養やアレンジメニューを紹介するリーフレットも配布しました。

全国に届けるために、缶詰作りに挑戦!

全国にいる病児のお母さんを野菜がたっぷりの栄養ある料理で応援したいと思い、ある病院にお弁当を届けようとしたところ、衛生面の問題から断られたことがありました。そこで缶詰の開発に挑戦します。

2018年夏から「ミールdeスマイリングプロジェクト」をスタート。ミールプログラムで協力してもらっている青山の人気レストラン「The Burn」の米澤文雄シェフ監修の元、美味しさと栄養を重視して試作を重ね、大豆ミートのキーマカレー、豚肉のりんご煮、ニシンの野菜スープ煮、人参とオレンジの食べるスープの4種類の缶詰が完成しました。

2019年春に、全国5か所の子どもホスピスやケア施設で試食会を開催してお披露目をしました。米澤シェフが対話形式でライブ・クッキングを行い、簡単なアレンジで美味しくいただけるメニューを紹介し、多くの方に「美味しい!」「やさしい味でほっとする」と大好評。試食しながらの交流タイムは、入院に付き添う大変さを共感し合いながら、日々病児と向き合うお母さんを応援する時間となりました。

全国の病院にも広めようと長期入院が主体の大学病院に呼びかけ、最近では佐賀大学医学部付属病院の小児病棟での缶詰の定期的な無料配布が始まりました。配布先の病院の開拓がこれからの課題の1つです。

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試食会の後に、家庭でできるアレンジレシピをチームごとに提案。
米澤賞には缶詰がプレゼントされました。

お母さんの笑顔が子どもの元気のもと!

缶詰は無料で配布し、活動は現時点では寄付でまかなっているため、今後の活動を継続していくためにも資金の確保が急務。認知を広げて個人のサポーターの募集、チャリティグッズ、缶詰の個人への販売、非常食として缶詰を法人や自治体に販売する活動も視野に入れています。また、ゆくゆくは在宅介護をするお母さんにも配布したいという夢があります。

「付き添いのお母さんの実情を多くの人に知ってもらうことで、家族に温かい食事を提供してくれる病院が増えていけば我々の活動の必要がなくなります。それが一番の目標です」と光原さん。

お母さんが笑顔で元気でいることが、子どもの幸せ、そして健康につながります。そのためにもキープ・ママ・スマイリングではこれからも美味しい料理を提供して、一人でも多くのお母さんを応援し続けていきます。

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宇都宮にある障がい児のデイケア施設うりずんでも試食会を開催しました。みんな笑顔で「はいチーズ!」

日本財団 難病の子どもと家族を支えるプログラムでは、日本全国に難病の子どもと家族の笑顔を増やしていきます。

難病の子どもと家族を支えるプログラム

特定非営利活動法人キープ・ママ・スマイリング

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文責 ライター 玉井肇子
日本財団 公益事業部 国内事業開発チーム 中嶋弓子

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